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貴族学院
昨夜の衝撃
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昨夜は結局エドワードと並んで横になりながら、ポツリポツリと浮かぶ疑問に答えて貰った。気がつけば眠ってしまったけれど、衝撃的な話だったせいか目覚めてもぼんやりとして頭が重い。
しかも目覚めたらエドワードは隣に居なかった。最近は特にエドワードは朝まで隣に居る事はほとんど無かった。僕は添い寝習慣ももう終わりにしないといけないのかもしれないと寂しく思った。
エドワードはマシュー様とのお兄様契約を変な意味じゃなく嬉しそうに話してくれた。僕は性教育の手解きの方に衝撃が走ってしまったけれど、どちらかというとそれよりは空気の読める貴族令息としてのハウツーを教えてもらう事の方が大事みたいだった。
それでもはっきりとは言わなかったけれど、エドワードがマシュー様から例の手解きを受けたのは間違いなさそうだった。具体的に何をするのかとかは絶対に口を割らなかったけれど、多分僕の見当違いの質問に余裕めいた答えを言っていたから既に教育はなされたのだろう。
ひとつ衝撃だったのは、令嬢もまたお姉様契約を結ぶという事だった。寮生活が無い彼女たちは僕たちとは少し趣きが違うのかもしれないけれど…。エドワードもその点はよく分からないと言っていた。
そんなこんなで僕は受け止めきれないこの話に、どうしてここまで衝撃を受けるのか自分でも驚いていた。僕は最近はすっかりサミュエルとの融合が進んで、自分が17歳の記憶持ちだという事もあまり意識に浮かばなくなっていた。
だからこの衝撃は自分の17歳の心が驚いているのに他ならなかったんだ。一方、この世界の貴族生活に馴染めば馴染むほど、お兄様契約のような事もあるがままに受け止め始めている自分もいるんだ。
僕は鏡の中の自分を見つめながら思った。あの遠駆けの時にエイデン様が口づけたのは、僕とお兄様契約を結べるかどうか試したのかもしれないって。きっと僕はエイデン様のお試しに合格したんだ。
アル兄様のところにも申し込みが沢山来ているとエドワードも言っていた。基本一人だけと契約を交わすというのなら、それを決めるのにあの口づけはうってつけの相性判断だったに違いない。
僕はエイデン様が決して僕のことを好きだとか、そういう事じゃなく口づけした事実に酷くガッカリしてしまったし、胸が痛い気もした。僕は鏡の中の自分にぼつりと呟いた。
「サミュエル、勘違いするな。エイデン様はお前の事を好きなわけじゃない。ただ、可愛い後輩として選んでくれようとしただけだ。」
自分に放ったその言葉は、鏡の中の僕の顔を歪ませた。ああ、あの時感じたドキドキと嬉しくも温かな気持ちは、脆くもパラパラと足元へ崩れ落ちてしまった。僕にはそれをもう一度拾い上げる勇気は無かった。
しかも目覚めたらエドワードは隣に居なかった。最近は特にエドワードは朝まで隣に居る事はほとんど無かった。僕は添い寝習慣ももう終わりにしないといけないのかもしれないと寂しく思った。
エドワードはマシュー様とのお兄様契約を変な意味じゃなく嬉しそうに話してくれた。僕は性教育の手解きの方に衝撃が走ってしまったけれど、どちらかというとそれよりは空気の読める貴族令息としてのハウツーを教えてもらう事の方が大事みたいだった。
それでもはっきりとは言わなかったけれど、エドワードがマシュー様から例の手解きを受けたのは間違いなさそうだった。具体的に何をするのかとかは絶対に口を割らなかったけれど、多分僕の見当違いの質問に余裕めいた答えを言っていたから既に教育はなされたのだろう。
ひとつ衝撃だったのは、令嬢もまたお姉様契約を結ぶという事だった。寮生活が無い彼女たちは僕たちとは少し趣きが違うのかもしれないけれど…。エドワードもその点はよく分からないと言っていた。
そんなこんなで僕は受け止めきれないこの話に、どうしてここまで衝撃を受けるのか自分でも驚いていた。僕は最近はすっかりサミュエルとの融合が進んで、自分が17歳の記憶持ちだという事もあまり意識に浮かばなくなっていた。
だからこの衝撃は自分の17歳の心が驚いているのに他ならなかったんだ。一方、この世界の貴族生活に馴染めば馴染むほど、お兄様契約のような事もあるがままに受け止め始めている自分もいるんだ。
僕は鏡の中の自分を見つめながら思った。あの遠駆けの時にエイデン様が口づけたのは、僕とお兄様契約を結べるかどうか試したのかもしれないって。きっと僕はエイデン様のお試しに合格したんだ。
アル兄様のところにも申し込みが沢山来ているとエドワードも言っていた。基本一人だけと契約を交わすというのなら、それを決めるのにあの口づけはうってつけの相性判断だったに違いない。
僕はエイデン様が決して僕のことを好きだとか、そういう事じゃなく口づけした事実に酷くガッカリしてしまったし、胸が痛い気もした。僕は鏡の中の自分にぼつりと呟いた。
「サミュエル、勘違いするな。エイデン様はお前の事を好きなわけじゃない。ただ、可愛い後輩として選んでくれようとしただけだ。」
自分に放ったその言葉は、鏡の中の僕の顔を歪ませた。ああ、あの時感じたドキドキと嬉しくも温かな気持ちは、脆くもパラパラと足元へ崩れ落ちてしまった。僕にはそれをもう一度拾い上げる勇気は無かった。
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