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ヴィレスクの地へ
丘の上のピクニック
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「すっかりサミュエルに懐いたな。イリスのやつ、俺のことなんて眼中に無いんだから。」
侯爵家のだだっ広い庭、いや、敷地を気持ちの良い風が吹き抜ける丘の上、広げた敷物に胡座をかいたエドワードは、焼き菓子を頬張りながらぼやいた。
遊び疲れたイリスが僕の腿の上に頭を乗せながら、すやすやとお昼寝している。柔らかな優しい茶色の髪を撫でながら僕は言った。
「ふふ、エドワードはこんなに可愛い弟がいて羨ましいよ。僕はずっとひとりぼっちで育ったから、兄弟ってちょっと憧れるな。」
エドワードは遠くに見えるお城を眺めながら言った。
「サミュエルは俺たちの大事な従兄弟だ。それに一緒に住んでるんだから、それってもう、兄弟と変わらないだろう?サミュエルは俺の可愛い弟なんだよ。」
そう、ぶっきらぼうに言うエドワードの横顔を見つめながら、僕は何だか感動していた。僕は精神年齢は17歳だったから、状況はよく理解していた。
けれども、身体に精神年齢がじわじわと引っ張られているせいなのか、この世界で独りぼっちだと言う現実が、時々強烈な寂しさを連れてきていたんだ。
そんな僕に、エドワードのぶっきらぼうでも優しい言葉は胸に響いた。僕はエドワードの手を握ると、こちらを向いたエドワードの、美しい琥珀色にきらめく瞳を覗き込んで言った。
「エドワード、ありがとう。僕、エドワードが大好きだ。ふふ。」
そう言ってにっこり微笑むと、エドワードは一瞬固まったけれど、次の瞬間僕の頬に口づけた。
僕はキョトンとして、そっぽを向いたエドワードになぜ今チュウをしたのか尋ねるとエドワードは言った。
「サミュエルが可愛い顔するからだろう?俺は可愛い猫にはチュウするんだ。」
え?僕、猫じゃないけど。人間だけど。僕はまったく訳が分からないなと肩をすくめて、腿の上で身動きするイリスを見下ろした。ぼんやりと目を開けていたイリスは、侯爵似の海色の瞳を輝かせて、へにゃっと笑って僕に言った。
「サミュエル、ぼくにもチュウして?」
そう言って、僕を見上げて手を伸ばした。僕はクスクス笑いながらイリスを抱き起こすと、膝の上に抱えてイリスの顔中にチュチュと口づけたんだ。
くすぐったがってキャッキャと明るい笑い声をあげるイリスの可愛さに、僕が弾けるように笑っていると、隣で僕たちの様子を見ていたエドワードが肩をすくめて立ち上がって言った。
「そろそろ父上と兄上が到着する頃だ。城に戻ろう。」
侯爵家のだだっ広い庭、いや、敷地を気持ちの良い風が吹き抜ける丘の上、広げた敷物に胡座をかいたエドワードは、焼き菓子を頬張りながらぼやいた。
遊び疲れたイリスが僕の腿の上に頭を乗せながら、すやすやとお昼寝している。柔らかな優しい茶色の髪を撫でながら僕は言った。
「ふふ、エドワードはこんなに可愛い弟がいて羨ましいよ。僕はずっとひとりぼっちで育ったから、兄弟ってちょっと憧れるな。」
エドワードは遠くに見えるお城を眺めながら言った。
「サミュエルは俺たちの大事な従兄弟だ。それに一緒に住んでるんだから、それってもう、兄弟と変わらないだろう?サミュエルは俺の可愛い弟なんだよ。」
そう、ぶっきらぼうに言うエドワードの横顔を見つめながら、僕は何だか感動していた。僕は精神年齢は17歳だったから、状況はよく理解していた。
けれども、身体に精神年齢がじわじわと引っ張られているせいなのか、この世界で独りぼっちだと言う現実が、時々強烈な寂しさを連れてきていたんだ。
そんな僕に、エドワードのぶっきらぼうでも優しい言葉は胸に響いた。僕はエドワードの手を握ると、こちらを向いたエドワードの、美しい琥珀色にきらめく瞳を覗き込んで言った。
「エドワード、ありがとう。僕、エドワードが大好きだ。ふふ。」
そう言ってにっこり微笑むと、エドワードは一瞬固まったけれど、次の瞬間僕の頬に口づけた。
僕はキョトンとして、そっぽを向いたエドワードになぜ今チュウをしたのか尋ねるとエドワードは言った。
「サミュエルが可愛い顔するからだろう?俺は可愛い猫にはチュウするんだ。」
え?僕、猫じゃないけど。人間だけど。僕はまったく訳が分からないなと肩をすくめて、腿の上で身動きするイリスを見下ろした。ぼんやりと目を開けていたイリスは、侯爵似の海色の瞳を輝かせて、へにゃっと笑って僕に言った。
「サミュエル、ぼくにもチュウして?」
そう言って、僕を見上げて手を伸ばした。僕はクスクス笑いながらイリスを抱き起こすと、膝の上に抱えてイリスの顔中にチュチュと口づけたんだ。
くすぐったがってキャッキャと明るい笑い声をあげるイリスの可愛さに、僕が弾けるように笑っていると、隣で僕たちの様子を見ていたエドワードが肩をすくめて立ち上がって言った。
「そろそろ父上と兄上が到着する頃だ。城に戻ろう。」
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