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サミュとサミュエル
お家乗っ取り
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四方を高い生垣で囲まれた庭で、僕はジョージが薪割りしている姿をのんびり見つめていた。ジョージは推定年齢60歳を越えているが、まだまだ十分力強い。
結局あれから、僕がマリアとジョージから聞いた話を繋ぎ合わせると、どうも僕は世間から隠された、本物のケルビーノ伯爵家の跡継ぎらしい。というか、僕は自分が17歳だと思っていたんだけれど、6歳だった。まじ小ちゃい。手足も痩せていてガリガリだ。
僕が3歳の時に、正統なケルビーノ伯爵であった両親が亡くなって、父方の従兄弟のゲッダム男爵に後見という名のお家乗っ取りにあっている。
でも貴族でも何でもない中身の僕は、家名とか別にどうでも良くて、自分の好きに生きても良いんじゃないかなと思ってる。僕の身代わりの偽物のサミュエルも居るっぽいし。
ベッドサイドで男爵が言っていた、10歳の貴族界デビューまでは生かしておくってことは、それ以降は処分されるかもしれない。殺されるか、誰かにこっそり売り渡されるとか…。そっちの方がお家乗っ取りより僕には深刻な問題だ。
僕はそれまでに何とかしてここから抜け出そうと考えていた。見かけは子供でも、中身は17歳なんだ。…ん?これって…。
とにかく社会に出ても何とかなるだろう。しかし、あのダミ声の男爵は、僕をまんまと逃してくれるだろうか。マリアとジョージにも迷惑を掛けたくないし…。
でも逃げ出す前に、僕にはやるべき目先の事があったんだ。この身体の持ち主のサミュエルは、はっきり言って何にも出来ない。まぁ、3歳からあえて何も出来ないように育てられたようだからしょうがないけれど、6歳なのに体力も無いし、文字も読めないし、書けない。
これではここから逃げ出したとしても、碌なことにならないんじゃないかな?僕は何とかしてこの問題の解決を図ろうと思った。まずは貴族と普通の住民との違いを探ることにした。しかし状況が分からなさ過ぎない?
「ねぇ、ジョージ。僕はここから出たことがないでしょ?街の人は、皆ジョージみたいな髪型なの?」
僕は艶のない長めの髪を、後ろで結えているジョージを見つめて尋ねた。ジョージは眉を上げて少し考え込んでいたけれど、頷いて言った。
「そうさね、サミュエルお坊ちゃん。大人は皆、わしのような髪型ですよ。もっとも男爵の様に貴族の方々はあまり結ばないで、巻いて下ろしていたりしますね。」
僕は箱の上に座って足をぶらつかせながら、予想通りの答えを得て、緊張を隠してもう一つ尋ねた。
「そっか。…じゃあ、短い髪の子供はいないの?」
僕は自分の肩下まで伸びた、銀色の柔らかな巻き毛を引っ張って尋ねた。
ジョージはにっこり笑って僕を優しく見つめて言った。
「街の子供は皆短い髪ですね。サミュエルお坊ちゃんの様に美しい髪の子供はあまり居ませんから。お坊ちゃんは本当に亡き伯爵夫人にそっくりですよ。」
結局あれから、僕がマリアとジョージから聞いた話を繋ぎ合わせると、どうも僕は世間から隠された、本物のケルビーノ伯爵家の跡継ぎらしい。というか、僕は自分が17歳だと思っていたんだけれど、6歳だった。まじ小ちゃい。手足も痩せていてガリガリだ。
僕が3歳の時に、正統なケルビーノ伯爵であった両親が亡くなって、父方の従兄弟のゲッダム男爵に後見という名のお家乗っ取りにあっている。
でも貴族でも何でもない中身の僕は、家名とか別にどうでも良くて、自分の好きに生きても良いんじゃないかなと思ってる。僕の身代わりの偽物のサミュエルも居るっぽいし。
ベッドサイドで男爵が言っていた、10歳の貴族界デビューまでは生かしておくってことは、それ以降は処分されるかもしれない。殺されるか、誰かにこっそり売り渡されるとか…。そっちの方がお家乗っ取りより僕には深刻な問題だ。
僕はそれまでに何とかしてここから抜け出そうと考えていた。見かけは子供でも、中身は17歳なんだ。…ん?これって…。
とにかく社会に出ても何とかなるだろう。しかし、あのダミ声の男爵は、僕をまんまと逃してくれるだろうか。マリアとジョージにも迷惑を掛けたくないし…。
でも逃げ出す前に、僕にはやるべき目先の事があったんだ。この身体の持ち主のサミュエルは、はっきり言って何にも出来ない。まぁ、3歳からあえて何も出来ないように育てられたようだからしょうがないけれど、6歳なのに体力も無いし、文字も読めないし、書けない。
これではここから逃げ出したとしても、碌なことにならないんじゃないかな?僕は何とかしてこの問題の解決を図ろうと思った。まずは貴族と普通の住民との違いを探ることにした。しかし状況が分からなさ過ぎない?
「ねぇ、ジョージ。僕はここから出たことがないでしょ?街の人は、皆ジョージみたいな髪型なの?」
僕は艶のない長めの髪を、後ろで結えているジョージを見つめて尋ねた。ジョージは眉を上げて少し考え込んでいたけれど、頷いて言った。
「そうさね、サミュエルお坊ちゃん。大人は皆、わしのような髪型ですよ。もっとも男爵の様に貴族の方々はあまり結ばないで、巻いて下ろしていたりしますね。」
僕は箱の上に座って足をぶらつかせながら、予想通りの答えを得て、緊張を隠してもう一つ尋ねた。
「そっか。…じゃあ、短い髪の子供はいないの?」
僕は自分の肩下まで伸びた、銀色の柔らかな巻き毛を引っ張って尋ねた。
ジョージはにっこり笑って僕を優しく見つめて言った。
「街の子供は皆短い髪ですね。サミュエルお坊ちゃんの様に美しい髪の子供はあまり居ませんから。お坊ちゃんは本当に亡き伯爵夫人にそっくりですよ。」
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