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人間のままでいられますか?

王子の指名

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「だからな、第二王子がハルマを従者にしたいと仰せなのだ。もちろん騎士団でハルマは必要な人材であると、こちらも説明はしたのだが…、そうは言っても王族の要望を断ることは出来ないだろう?

第二王子は好奇心旺盛な方だ。きっとハルマの世界の話が知りたいのではないか?最悪、所属は騎士団で、一時的に籍を移すと言う方法を取ることも考えたが…。


ハルマはあと一回馬に変幻するだろう?その時に騎士団所属だと、魔物狩りやら、まぁ、戦闘は無さそうだが、普通に考えて危険に身を晒す可能性がある。

私たちも、ハルマには安全な場所でその時を待っていて欲しい気持ちもあるんだ。ウィルにも先程相談したが、同じ気持ちだった。…ハルマはどう考える?」


そう言って困ったように僕に説明してくれたのは副指揮官だった。いつものように騎士団事務方で作業をしていると、副指揮官がやってきて話があると言うので着いて行ったんだ。

指揮官の執務室の応接で話をされたのがこれだった。指揮官は急遽王宮に呼び出しを受けたという事で不在だった。僕は目の前の紅茶の湯気を見つめながら、黙っていた。


副指揮官の言うこともよく分かる。僕のためを思って言ってくれていることも。でも、第二王子の従者になってしまったら、この官舎でウィルと過ごす事は出来なくなる。

それは僕にとって辛いことだと思った。僕は俯いた顔を上げて言った。

「騎士団にとって、第二王子の要請を受け入れられないと断る事が難しい事は重々承知ですが、僕はここを離れたくありません。僕が確実に人間に戻れるかどうか分からないですし、この短い期間、正直ウィルの側を離れたくないんです。


ですから、第二王子の従者にはなれません。けれど、時々助っ人として王子のところへ色々お話をしに行く事は出来ます。実際、黒騎士団で勾留中も、書類の仕分けに改良の余地があるなぁと思っていましたから。

そんな意味では僕の知識を、王子にお役に立ててもらいたいと言う気持ちはあるんです。本当に申し訳ないのですが、副指揮官から第二王子にその様に申し伝えて頂けませんか?

あの聡い王子ならば、絶対に分かってくれると思うんです。」


僕はダメ元でそう言うと、副指揮官は大きくため息をついて頭を掻いて言った。

「何となくそう言うんじゃないかと思っていたんだ。まぁ殿下には言うだけ言ってみよう。すっかり冷めてしまったが、その紅茶は王都の名品だぞ。味わって飲めよ?」

そう言って困った顔で微笑んだんだ。
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