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嬉しいサプライズ
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スノボ旅行から帰って来て直ぐに、僕は実家へと帰省した。クリスマスに茂人さんと過ごせないのは残念だったけれど、祖母の入院する病院へお見舞いに行けたのは良かった。一年前はお見舞いも行けなかった事を思えば随分世の中も落ち着いたという所なんだろう。
病院からの帰り道、母さんが車に乗り込みながら僕の顔をマジマジと見て言った。
「楓も随分表情が柔らかくなったわね。一年前はちょっと心配な感じだったもの。」
僕は少し笑って言った。
「正直、入学して直ぐに感染症が酷かったよね?あの時は正直参ってた。知らない都会でさ、仲の良い友達もこっちの大学だったし。もう、いっそ帰ろうかって思ったくらいだ。噂では地方の子は実家でリモート受けてたってさ。僕もあのままだったら、休学とかになっちゃったかもしれない。」
すると横に座り込んだ妹が言った。
「やっぱり?私、お兄はヤバい気がしたんだよね。メッセージも全然返ってこないし。結構心配してたんだけど、バイト始めたって聞いて、もう大丈夫かなって思ったんだ。バイト先楽しかったの?」
僕は口元を緩めて言った。
「…そうだね。バイト先は凄く楽しい人たちばかりだよ。今4年生の人も多くて色々教えてもらえたし、面倒見てもらえた感じ。」
妹と母さんは申し合わせた様に笑った。僕が眉を顰めて尋ねると妹が笑いながら言った。
「お兄って、結構放っておけないタイプだよね。おっとりしてるって言うかさ。お陰でお兄の分、私が随分しっかり者になっちゃって!高校の時だって、お兄は可愛いって評判だったんだよ。知ってた?」
それから妹から高校時代の俺に関する噂を一方的に捲し立てられた。こんな時は年子で同じ高校出身だと知らなくて良いことまで知ってしまう。僕が知らなかった色々な噂を赤くなったり、青くなったりして聞いていると、母さんが楽しげに笑って言った。
「でも、楓があっちで楽しくやっているんだったら良かったわ。スノボも怪我なく行ってこれたみたいだし。」
すると妹が思い出した様に、どんな人と行ったのかとか、写真はないのかとか煩く騒ぎ出した。僕は渋々妹を黙らせたくて、四人で撮ったスマホの写真を見せた。でもそれは失敗だったみたいだ。イケメンだなんだと盛り上がるから、結局僕は家に着くまで質問攻めに合う羽目になったんだ。
しばらく妹の都会のイケメンショックは収まらず、大変だったけれど、茂人さんの話を家族にお世話になった人と紹介できるのは嬉しい気がした。
それから地元の友人に会ったり、茂人さんと毎日のメッセージを送りあったりしていたけれど、年末年始はあっという間に過ぎ去って年明けの3日になった。
昨日の夜に仰天する様なメッセージを受け取っていた僕は、正直動揺して落ち着かなかった。元々バイトがあるからと、家族に一人暮らしのマンションに戻るのが早いと文句を言われながら、今日の夜に新幹線に乗って上京する予定だった。でも僕の受け取ったメッセージにはこう書いてあった。
『明日新幹線乗るなら、車で迎えに行くよ。昼過ぎにはそっちに着くから。家まで迎えに行こうか?』
僕は朝になって、家族に先輩がついでに拾ってくれる事になったと言うと、妹と母親を中心に妙な盛り上がりを見せて、手土産を買いに行かなくちゃとか、家中が落ち着かない雰囲気になった。別に男の先輩だから、そこまで盛り上がることも無いだろうと思うのだけど、都会のイケメンパワーは凄いんだと改めて思い知らされて、少し笑ってしまった。
茂人さんには、『ついでに拾ってもらう事になった』旨をメッセージに送った。僕は家族の落ち着かなさぶりに笑いながらも正直、ドキドキしていた。
久しぶりに茂人さんに会える事もそうだし、家族に会わせる事にも。僕のためにわざわざ3時間掛けて迎えに来てくれるのも、恋人の特別扱いの様な気がして、くすぐったい気持ちになった。
「茂人さん、うちの家族にめちゃくちゃ気に入られてましたね。」
茂人さんは僕をチラッと見ながらクスッと笑って言った。
「そうなら良かった。俺、結構緊張してたよ。楓の家族に印象良くしようってシュミレーションなんかしてさ。今は恋人だって言えなくても、楓の側に俺が居ることを認識してもらって、家族が側にいなくても安心してもらえたら嬉しいから。」
僕はそう言って微笑む茂人さんの横顔をじっと見つめながら、何だか涙が出そうだった。今まで家族以外に僕のことをここまで考えてくれた人なんて多分居ないだろうって。幸せ過ぎると泣き虫になるのかな。
僕は喉につかえる塊を飲み込むと、深呼吸して言った。
「茂人さん、迎えに来てくれてありがとうございました。これから真っ直ぐ戻りますか?」
すると茂人さんは僕の方を見て、ニンマリ笑って言った。
「楓と一緒に初詣行きたいな。この近くに有名な神社あるでしょ。参拝してから、どうしようかな。…どっか泊まってく?」
僕は初詣と聞いて、一緒に行ける事に一瞬でウキウキしてしまった。でも最後に何処か泊まっていくかと聞かれて、思わず固まってしまった。でも、僕はちゃんと迎えに来てくれた茂人さんに気持ちを伝えたいと思った。
「はい。何処でも良いから、茂人さんと二人きりになりたいです。茂人さんに凄く会いたかった…!」
病院からの帰り道、母さんが車に乗り込みながら僕の顔をマジマジと見て言った。
「楓も随分表情が柔らかくなったわね。一年前はちょっと心配な感じだったもの。」
僕は少し笑って言った。
「正直、入学して直ぐに感染症が酷かったよね?あの時は正直参ってた。知らない都会でさ、仲の良い友達もこっちの大学だったし。もう、いっそ帰ろうかって思ったくらいだ。噂では地方の子は実家でリモート受けてたってさ。僕もあのままだったら、休学とかになっちゃったかもしれない。」
すると横に座り込んだ妹が言った。
「やっぱり?私、お兄はヤバい気がしたんだよね。メッセージも全然返ってこないし。結構心配してたんだけど、バイト始めたって聞いて、もう大丈夫かなって思ったんだ。バイト先楽しかったの?」
僕は口元を緩めて言った。
「…そうだね。バイト先は凄く楽しい人たちばかりだよ。今4年生の人も多くて色々教えてもらえたし、面倒見てもらえた感じ。」
妹と母さんは申し合わせた様に笑った。僕が眉を顰めて尋ねると妹が笑いながら言った。
「お兄って、結構放っておけないタイプだよね。おっとりしてるって言うかさ。お陰でお兄の分、私が随分しっかり者になっちゃって!高校の時だって、お兄は可愛いって評判だったんだよ。知ってた?」
それから妹から高校時代の俺に関する噂を一方的に捲し立てられた。こんな時は年子で同じ高校出身だと知らなくて良いことまで知ってしまう。僕が知らなかった色々な噂を赤くなったり、青くなったりして聞いていると、母さんが楽しげに笑って言った。
「でも、楓があっちで楽しくやっているんだったら良かったわ。スノボも怪我なく行ってこれたみたいだし。」
すると妹が思い出した様に、どんな人と行ったのかとか、写真はないのかとか煩く騒ぎ出した。僕は渋々妹を黙らせたくて、四人で撮ったスマホの写真を見せた。でもそれは失敗だったみたいだ。イケメンだなんだと盛り上がるから、結局僕は家に着くまで質問攻めに合う羽目になったんだ。
しばらく妹の都会のイケメンショックは収まらず、大変だったけれど、茂人さんの話を家族にお世話になった人と紹介できるのは嬉しい気がした。
それから地元の友人に会ったり、茂人さんと毎日のメッセージを送りあったりしていたけれど、年末年始はあっという間に過ぎ去って年明けの3日になった。
昨日の夜に仰天する様なメッセージを受け取っていた僕は、正直動揺して落ち着かなかった。元々バイトがあるからと、家族に一人暮らしのマンションに戻るのが早いと文句を言われながら、今日の夜に新幹線に乗って上京する予定だった。でも僕の受け取ったメッセージにはこう書いてあった。
『明日新幹線乗るなら、車で迎えに行くよ。昼過ぎにはそっちに着くから。家まで迎えに行こうか?』
僕は朝になって、家族に先輩がついでに拾ってくれる事になったと言うと、妹と母親を中心に妙な盛り上がりを見せて、手土産を買いに行かなくちゃとか、家中が落ち着かない雰囲気になった。別に男の先輩だから、そこまで盛り上がることも無いだろうと思うのだけど、都会のイケメンパワーは凄いんだと改めて思い知らされて、少し笑ってしまった。
茂人さんには、『ついでに拾ってもらう事になった』旨をメッセージに送った。僕は家族の落ち着かなさぶりに笑いながらも正直、ドキドキしていた。
久しぶりに茂人さんに会える事もそうだし、家族に会わせる事にも。僕のためにわざわざ3時間掛けて迎えに来てくれるのも、恋人の特別扱いの様な気がして、くすぐったい気持ちになった。
「茂人さん、うちの家族にめちゃくちゃ気に入られてましたね。」
茂人さんは僕をチラッと見ながらクスッと笑って言った。
「そうなら良かった。俺、結構緊張してたよ。楓の家族に印象良くしようってシュミレーションなんかしてさ。今は恋人だって言えなくても、楓の側に俺が居ることを認識してもらって、家族が側にいなくても安心してもらえたら嬉しいから。」
僕はそう言って微笑む茂人さんの横顔をじっと見つめながら、何だか涙が出そうだった。今まで家族以外に僕のことをここまで考えてくれた人なんて多分居ないだろうって。幸せ過ぎると泣き虫になるのかな。
僕は喉につかえる塊を飲み込むと、深呼吸して言った。
「茂人さん、迎えに来てくれてありがとうございました。これから真っ直ぐ戻りますか?」
すると茂人さんは僕の方を見て、ニンマリ笑って言った。
「楓と一緒に初詣行きたいな。この近くに有名な神社あるでしょ。参拝してから、どうしようかな。…どっか泊まってく?」
僕は初詣と聞いて、一緒に行ける事に一瞬でウキウキしてしまった。でも最後に何処か泊まっていくかと聞かれて、思わず固まってしまった。でも、僕はちゃんと迎えに来てくれた茂人さんに気持ちを伝えたいと思った。
「はい。何処でも良いから、茂人さんと二人きりになりたいです。茂人さんに凄く会いたかった…!」
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