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助教授の告白

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俺は高山助教授に言いたいことは全部言った。たぶん。うまく伝えられたかは分からなかったけれど、これで先生が分かってくれると良いんだけど。

俺は高山先生を尊敬してる。圧倒的な知識や教え方、研究への真摯な態度。そして誰にでも同じ丁寧な物腰。だからこんなに素敵な人が、間違った気持ちに囚われて欲しくはなかった。


先生は呆然と俺を見つめていたけれど、俺がソファから立ち上がるとハッとして俺の手を掴んだ。

「…私は、黒崎くんからそう見えてるのか…?」

俺の腕を掴む先生の大きな手を見下ろして、俺は言った。

「…そうですね。多分他の人は気づいてないと思います。俺も先生の眼差しが自分の母親と一緒じゃなかったら気づかなかったかな?先生は感情を見せないから…。」

高山先生は僕を掴んでいる自分の手を見つめて、息を吐き出すとそっと手を離した。そして両手で顔を覆うと、しばらく部屋は沈黙が支配した。


「まだ、時間はある。私の話を聞いてくれるとありがたいんだが。」

そう言って困ったような顔で俺を見上げる高山先生を放っておくことも出来ずに、俺はもう一度ソファーに座った。

「恥ずかしい事だが、今、黒崎くんに指摘されるまで私はこんな簡単な事にも気づいていなかった。黒崎くんの言う通りだと思う。黒崎くんには言ってなかったが、雪豹の白山時也は私の伯父のパートナーなんだ。

私の父は双子でね、早くに血族結婚をして私が生まれた。だから伯父が白山さんを私達親子に紹介してくれた時、私は10歳だった。10歳の私から見ても白山さんはとても魅力的なお兄さんだった。当時彼は22、3歳だったろう。


でも、私が衝撃を受けたのは、あの厳しくも感情をあらわにしない取っ付きにくい伯父が見せた、白山さんへの絶対的な愛情だった。私は子供心に伯父をここまで変えた、その何ものにも代え難い愛というものに憧れを持った。

その時は、それは成長と共に自分にも訪れるものだと思っていたんだ。

しかし、時が経つほどに、それは自分には経験できないものだと分かってきた。白山さんのような人は世の中に居ないのだから。私が大人になって彼らとあまり会わないようにしたのも、今考えると伯父の側で幸せそうに微笑む白山さんを見たく無かったからかもしれないね。


でも、勘違いしないで欲しいのだけど、君は白山さんとはまるで違うよ。醸し出すオーラは似ているけれど、フェロモンも、君の素っ気ないところも。白山さんが太陽のように眩しい存在だとすれば、君は夜の闇に浮かぶ魅惑的な月だ。」

そう言って俺を真っ直ぐ見つめる高山助教授の眼差しに囚われて、俺は背中がゾクゾクと何かが走り抜けていくのを感じた。やばい、俺ロックオンされてる⁉︎
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