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行きたい学部

祥一朗に聞く

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「それで、その高山助教授の研究室へ誘われたって話は事前に話した様に、ざっくりと今、秋良から聞いた通りなんだが。黒崎さん、君はどう思う?」

 そう言って、祥一朗は俺の手を握りながら姉貴の方を向いて尋ねた。エクストラルームの、このホテルの一室は打ち合わせが出来るようなサービススペースがあって、俺たちは今そこで顔を突き合わせてるんだ。今日は日曜日で、午後一時に集まった俺たちは、鱗川グループ系列のこのホテルで密談してる。まぁ、密談は言い過ぎかも。でも雰囲気はそんな感じ。


 姉貴は今日も隙のないワンピース姿で、キリッとしてる。いかにも賢そうな姉貴の隣には、抜け目のない眼差しの大人っぽい男が一人座っていた。姉貴の手を握ってるから、やっぱりマーキングの関係なのかもな。何か兄弟のそんな感じはちょっと恥ずかしい気がするけど、結構みんな当たり前の顔をしてるから、俺だけがやっぱり感じ方が違うんだろう。

「さっきも話したけど、ここに居る木崎は応明大の生命科学学部の院生なの。高山助教授とは研究室が違うけれど、少なくとも助教授のことはよく知ってるわ。今回、雪弥が高山先生に誘われたって聞いて、驚いていたのよね?」


 木崎と呼ばれた男は、姉貴を一瞬蕩けるような甘い眼差しで見つめた後、俺たちの方を向いて言った。

「昨日、美玲に話を聞いた時は、ちょっと高山先生らしくない行動だなと思ったんだ。でも今、美玲の弟くんを目の前にしたら、先生の行動も有るかもしれないと思ったよ。

 先生の研究は知ってるんだよね?フェロモンとオーラの研究だ。今は実際何のテーマで研究してるのかは秘密にされてるから知る由もないんだが、雪弥くんのオーラを見たら研究に参加してほしいと研究者なら思うかもしれない。私もその研究をしてたら、美玲を通して頼んでたと思う。」

 秋良は顎に手を当てて考え込みながら言った。


「そっか、じゃあ率直に研究のために雪弥を誘っただけなのかな?」

 俺はもしかして研究室へ行っても良いって言われるのかなと、ちょっとウキウキして祥一朗の顔を見た。祥一朗は少し困ったように俺の顔を見てから、やっぱり難しい顔をして、木崎さんに尋ねた。

「研究の方は、まぁ雪弥の必要性はありそうだから分かるとして、私が気になっているのは、いきなり何も言わずにフェロモンを雪弥にぶつけて来た事です。さっきから話を聞いていると、高山助教授はかなり真っ当な人間に思えます。だから余計にいきなり断りも無くマナーのない事をするとは思えないんです。そこはどう思いますか?」


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