53 / 68
動き出す僕たち
密室で
しおりを挟む
僕にキスしたくなると言う翔ちゃんに、僕は分かりやすく動揺していた。翔ちゃんは僕の事が好きなのか、肝心な事は何一つ聞けていない。翔ちゃんはつい先日まで彼女が居たんだ。それは僕を混乱させる。
僕はそれ以上の情報をくれない翔ちゃん思い切って尋ねる事にした。僕の事が好きなのかって。僕が口を開こうとすると、翔ちゃんも同時に話し出した。
「「…あの…!」」
ピリついた空気が霧散して、翔ちゃんはクスッと笑って手を伸ばして僕の手を握った。膝立ちの翔ちゃんがまるでお姫様に懇願する王子の様なポーズに思えて、僕はこれから何が起きるのかと息を殺した。翔ちゃんは僕を真っ直ぐに見上げてゆっくりと話し出した。
「…侑、俺は侑が好きだ。可愛い幼馴染として昔から大好きだった。だけど、あの俺の友達が小学生の侑にキスしようとした時、俺は怒りで煮えたぎった。当然だろう?大事な幼馴染に不埒な事をした奴を許せるわけがない。
同時にその怒りが全然別の感情を連れてきたのにも気づいて、俺は自分が大嫌いになったんだ。俺はあいつと同じ様な邪な感情を侑に持っているのに気づいてしまった。侑を誰にも触れさせたくないって…。
それは中学生だった俺には衝撃的過ぎて受け止めきれなかった。だから侑に近づかない様に、この気持ちに蓋をして逃げ回っていた。‥だけど今の侑を目の前にしたら、俺の努力なんて吹き飛んでしまった。
降参だ。俺は侑が好きだ。誰にも触れさせたくないって、俺の中に渦巻く感情で苦しくて堪らないんだ。」
翔ちゃんのその切実に訴えて来る告白は僕を驚かせたし、同時に舞い上がらせた。心臓はバカみたいに拍動していたし、何だか信じられなかった。
でも目の前の翔ちゃんは、少し赤らんだ顔で見た事のない表情で僕を見つめていた。そこに見え隠れするのは不安?僕は握られた翔ちゃんの手を見つめて呟いた。
「翔ちゃん、手が痛いよ。」
ハッとして握った手を緩めた翔ちゃんは、だけど僕の手を離そうとはしなかった。翔ちゃんと見つめ合った僕は、指先をスルリと翔ちゃんの指の間に差し込んで跪くと、翔ちゃんの顔に自分の顔を寄せた。それからそっと自分の唇を押し当てた。
僕の唇の下で強張っていたのは一瞬で、直ぐに柔らかく応える翔ちゃんの唇は甘かった。あの花火大会の時の甘かったけれど訳の分からないキスと違って、探り合う様な、でもお互いに許されたキスは僕をすっかり夢中にさせた。
僕をグッと引き寄せた翔ちゃんの腕の中でもたれかかる様に抱きしめられて、僕の口の中の柔らかな場所をなぞる翔ちゃんの舌に夢中になった。自分の甘える様な切れ切れの吐息が耳に響いて、僕は引き剥がされた翔ちゃんのギラついた顔を見上げた。
「参った。こんな事するべきじゃ無いって分かってるのに止められない。腕の中の侑がそんな赤らんだ顔で俺を見つめたら…。」
そう呟くと、もう一度僕に唇を寄せた。僕は翔ちゃんの逞しい身体に抱きつきながら、胸いっぱいの歓びに心震わせていた。翔ちゃんと僕の気持ちが一緒だったと、この奇跡の様な両思いに有頂天になっていたんだ。
今までで感じたことの無い感覚に襲われて、僕は身体が震えてしまった。それに気づいた翔ちゃんが僕の唇を吸って離れると、僕を覗き込んで囁いた。
「悪い。急にこんなの驚いただろ?侑は、…侑の気持ちをはっきり教えてくれ。」
僕は翔ちゃんが僕を抱きしめたその力強さが、僕を好きな気持ちの様な気がして思わず微笑んで言った。
「僕、ずっと昔から翔ちゃんが好きだよ。気づいたら幼馴染以上の気持ちだったけど、その頃には翔ちゃんは僕と顔を合わせる事を避けているみたいだった。だから僕はあの事で翔ちゃんは自分を許さないんだって、僕の方をもう見てくれるチャンスは無くなったって思った。だから翔ちゃんにこの気持ちを伝える事は諦めたんだよ。
だから、今は凄く嬉しくて堪らない。僕の好きが翔ちゃんと一緒なんでしょ?翔ちゃん、好き。大好き。」
僕の告白は、翔ちゃんの口の中に溶け出した。絡め合う舌はゾクゾクするくらい気持ち良くて、口の中のぬるりとした粘膜をなぞられて、甘い味が僕を微笑ませた。ああ、最高に気持ち良い。もっと…。もっと欲しいよ、翔ちゃん。
「翔ちゃん、もっと、ずっとして…?」
僕はそれ以上の情報をくれない翔ちゃん思い切って尋ねる事にした。僕の事が好きなのかって。僕が口を開こうとすると、翔ちゃんも同時に話し出した。
「「…あの…!」」
ピリついた空気が霧散して、翔ちゃんはクスッと笑って手を伸ばして僕の手を握った。膝立ちの翔ちゃんがまるでお姫様に懇願する王子の様なポーズに思えて、僕はこれから何が起きるのかと息を殺した。翔ちゃんは僕を真っ直ぐに見上げてゆっくりと話し出した。
「…侑、俺は侑が好きだ。可愛い幼馴染として昔から大好きだった。だけど、あの俺の友達が小学生の侑にキスしようとした時、俺は怒りで煮えたぎった。当然だろう?大事な幼馴染に不埒な事をした奴を許せるわけがない。
同時にその怒りが全然別の感情を連れてきたのにも気づいて、俺は自分が大嫌いになったんだ。俺はあいつと同じ様な邪な感情を侑に持っているのに気づいてしまった。侑を誰にも触れさせたくないって…。
それは中学生だった俺には衝撃的過ぎて受け止めきれなかった。だから侑に近づかない様に、この気持ちに蓋をして逃げ回っていた。‥だけど今の侑を目の前にしたら、俺の努力なんて吹き飛んでしまった。
降参だ。俺は侑が好きだ。誰にも触れさせたくないって、俺の中に渦巻く感情で苦しくて堪らないんだ。」
翔ちゃんのその切実に訴えて来る告白は僕を驚かせたし、同時に舞い上がらせた。心臓はバカみたいに拍動していたし、何だか信じられなかった。
でも目の前の翔ちゃんは、少し赤らんだ顔で見た事のない表情で僕を見つめていた。そこに見え隠れするのは不安?僕は握られた翔ちゃんの手を見つめて呟いた。
「翔ちゃん、手が痛いよ。」
ハッとして握った手を緩めた翔ちゃんは、だけど僕の手を離そうとはしなかった。翔ちゃんと見つめ合った僕は、指先をスルリと翔ちゃんの指の間に差し込んで跪くと、翔ちゃんの顔に自分の顔を寄せた。それからそっと自分の唇を押し当てた。
僕の唇の下で強張っていたのは一瞬で、直ぐに柔らかく応える翔ちゃんの唇は甘かった。あの花火大会の時の甘かったけれど訳の分からないキスと違って、探り合う様な、でもお互いに許されたキスは僕をすっかり夢中にさせた。
僕をグッと引き寄せた翔ちゃんの腕の中でもたれかかる様に抱きしめられて、僕の口の中の柔らかな場所をなぞる翔ちゃんの舌に夢中になった。自分の甘える様な切れ切れの吐息が耳に響いて、僕は引き剥がされた翔ちゃんのギラついた顔を見上げた。
「参った。こんな事するべきじゃ無いって分かってるのに止められない。腕の中の侑がそんな赤らんだ顔で俺を見つめたら…。」
そう呟くと、もう一度僕に唇を寄せた。僕は翔ちゃんの逞しい身体に抱きつきながら、胸いっぱいの歓びに心震わせていた。翔ちゃんと僕の気持ちが一緒だったと、この奇跡の様な両思いに有頂天になっていたんだ。
今までで感じたことの無い感覚に襲われて、僕は身体が震えてしまった。それに気づいた翔ちゃんが僕の唇を吸って離れると、僕を覗き込んで囁いた。
「悪い。急にこんなの驚いただろ?侑は、…侑の気持ちをはっきり教えてくれ。」
僕は翔ちゃんが僕を抱きしめたその力強さが、僕を好きな気持ちの様な気がして思わず微笑んで言った。
「僕、ずっと昔から翔ちゃんが好きだよ。気づいたら幼馴染以上の気持ちだったけど、その頃には翔ちゃんは僕と顔を合わせる事を避けているみたいだった。だから僕はあの事で翔ちゃんは自分を許さないんだって、僕の方をもう見てくれるチャンスは無くなったって思った。だから翔ちゃんにこの気持ちを伝える事は諦めたんだよ。
だから、今は凄く嬉しくて堪らない。僕の好きが翔ちゃんと一緒なんでしょ?翔ちゃん、好き。大好き。」
僕の告白は、翔ちゃんの口の中に溶け出した。絡め合う舌はゾクゾクするくらい気持ち良くて、口の中のぬるりとした粘膜をなぞられて、甘い味が僕を微笑ませた。ああ、最高に気持ち良い。もっと…。もっと欲しいよ、翔ちゃん。
「翔ちゃん、もっと、ずっとして…?」
10
お気に入りに追加
313
あなたにおすすめの小説
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
どうせ全部、知ってるくせに。
楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】
親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。
飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。
※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。
【完結】遍く、歪んだ花たちに。
古都まとい
BL
職場の部下 和泉周(いずみしゅう)は、はっきり言って根暗でオタクっぽい。目にかかる長い前髪に、覇気のない視線を隠す黒縁眼鏡。仕事ぶりは可もなく不可もなく。そう、凡人の中の凡人である。
和泉の直属の上司である村谷(むらや)はある日、ひょんなことから繁華街のホストクラブへと連れて行かれてしまう。そこで出会ったNo.1ホスト天音(あまね)には、どこか和泉の面影があって――。
「先輩、僕のこと何も知っちゃいないくせに」
No.1ホスト部下×堅物上司の現代BL。
好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
キンモクセイは夏の記憶とともに
広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。
小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。
田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。
そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。
純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。
しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。
「俺になんてもったいない!」
素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。
性描写のある話は【※】をつけていきます。
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる