カワウソの僕、異世界を無双する

新しい僕

司祭長と食事

さっきまで色めかしい空気が漂っていた僕たちが案内されて連れて行かれたのは、いかにも歴史のありそうな趣のある大きなホールだった。そこに素朴な大きなテーブルが幾つか整然と並べられていて、召使いが司祭たちへお昼の食事を運んでいた。

僕たちはホールの奥まった大テーブルへ案内された。そこだけは紫のテーブルクロスが飾られていて、なるほど品格が感じられた。質素ながら、質の良い食器に盛られた食事は、味付けはシンプルなのに奥行きのある味がした。

僕がその事を指摘すると、司祭長が喜んでその秘密を教えてくれた。


「これらの食材は領民が自分たちで作ったり、狩ったりした一番の物を神様へと供えてくれたものです。それを神から捧げいただいた私たち神の下僕が、敢えて素材の味を引き立たせるような料理で頂いているのですよ。

この味がお分かりになるとは、さすがジュシア様は神様の使いでらっしゃいますね。」

そう言って微笑んだ。僕はふと思いついた事を尋ねてみた。

「あの、僕は聖水の滝壺で気づいたらそこに居たのですが、あの聖水はどう言う効果があるのでしょうか。」

僕は定期的におっさんが聖水を汲みに行っていたのを知っていたし、かと言って街中で聖水を売っている人も見たことが無かった。ということはあの聖水は何処か特定の場所で使用されていると言う事だ。それはここが一番ありそうな気がした。


すると司祭長が微笑んで言った。

「あの聖水はここでポーションを作るのに使用しているのです。」

ポーション？何だか聞いた様な言葉だ。僕が眉を顰めていると、ルークが僕に言った。

「ジュシアはポーションを知らないのかな。まぁよっぽど酷い怪我や病気にならない限りお世話にはならないからね。この国のポーションは質がいいから、他の国も欲しがっているくらいだ。それもひとえにあの聖水のおかげだと言う話なんだよ。」


僕はまるでゲームに出てくるような話だと思いながら、なるほどと頷きながら言った。

「じゃあもしかして神々しい僕が作るのを手伝ったら、もっと薬効が上がったりしますかね？」

そうふざけて言うと、司祭長も、一言も発しない副司祭長も、なぜかルークも目を見開いて僕を見つめた。え？冗談なのに。僕が光ってるからって、作ったこともないポーションが作れるわけないし。え？試しに作る？え？まじで…。わー、何か雰囲気に流されるよー！