カワウソの僕、異世界を無双する

秘密の発覚

外出禁止令

「ガブリエル、まだ出掛けちゃダメ？」

僕がボードゲームの駒を動かしつつも、目を合わせない様にしながら問い掛けると、ガブリエルは頷いて言った。

「ダメ。ジュニは心配ばかりかけるから。」

ガブリエルがこう言うのも仕方がない。結局ルークの手配であのギルドの男は騎士団に捕まったけれど、僕が危ない目にあったのは間違い無いのだから。僕はため息をついてボードゲームでガブリエルを追い詰めると、ガブリエルに言った。


「せっかくアルフレッド様が命の恩人にと用意してくれた部屋に、ガブリエルを招待したかったんだけどね？」

ガブリエルがハッとした様に顔を上げた。そして眉を顰めて言った。

「…ジュニの秘密基地？アルフレッド様が用意してくれたの？」

僕はニヤリと笑ってガブリエルに頷いた。

「そうなんだ。僕が自立するための貯金をしようと、ギルドに仕事の事を聞きに行ったのを知られてね。独立用の部屋を用意してくれたんだ。僕はほら、アルフレッド様の命の恩人だからね？でも、まだその部屋に行ったことが無いんだけど…。ガブリエルと遊びに行ったらきっと楽しいだろうなぁ。」


ガブリエルの葛藤が目に見える様で、僕はもう一押しだとガブリエルに頼み込んだ。

「僕は伯爵家にずっと居るつもりだよ？でも、ジュシアとして居られるのはこの部屋だけだろう？ガブリエルと一緒に街歩きしたら、きっと凄く楽しいだろうね？」

ガブリエルはまだ迷っている様子だったけれど、ため息をつくと降参とばかりにボードに駒を投げ捨てて言った。

「僕はジュシアにゲームも勝てないし、頼み事にも勝てないみたい。いいよ、一緒に行ってあげる。」



それから僕たちは、ガブリエルの初等学院への入学準備のための社会経験と買い物と称して、まんまと外出許可をゲットした。勿論見習い執事のケニーと、護衛としてのケインも一緒だけどね。

「ご機嫌だね、ガブリエル。」

馬車の中で着替えながら、僕は明らかにウキウキしているガブリエルに声を掛けた。ガブリエルはにっこり微笑むと、相変わらず赤い顔をして窓の外を見ているケニーに言った。


「ケニー、僕の買い物はもう済ましてくれてるんでしょ？ふふ、じゃあ今日はめいいっぱいジュシアと色々な事出来るね！」

するとケニーが困り顔でガブリエルに言った。

「ガブリエル様、あまり羽目を外さないで下さいね？ジュシアさんもお願いですから、問題を起こさないで下さい。ああ、何だかお腹が痛くなってきました…。」

少しケニーに同情を覚えたものの、せっかくの外出のチャンスを無駄にする僕では無い。いざ行かん、僕の秘密基地に！