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親友が恋人に変わる時

怒りと気づき

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俺はショックを通り越して煮えたぎるような怒りを感じていた。目の前でうそぶくどこの誰かもしれない男。ここで踵を返して立ち去るには俺のプライドは高すぎた。

「お前がどう思おうが関係ない。さっさと出て行ってくれ。少なくとも俺と蓮は話があるからな。お前の言い草など、俺には関係ない。さぁ、お帰りください。もっとも、俺たちの間に出張った代償は払ってもらうがな。」


俺が自分でも聞いた事のない冷え冷えする声音で言ったせいか、目の前の男は俺と蓮を交互に見た。そして青褪めた顔をして立ち上がると、そそくさと部屋を出て行った。

遠くでマンションのドアがバタンと閉まる音が聞こえると、俺は改めて蓮に向き直った。俺は蓮が言葉を発するのを待った。けれど、蓮は口をモゴモゴさせるばかりで、何も言わなかった。


俺はため息をつくと寝室から出て行った。玄関へと向かいながら、俺はなんとも言えない違和感を感じていた。何だ?何かがおかしい。

俺はハッとすると蓮の横たわるベッドへと戻った。蓮の目からこぼれ落ちる涙が頬を濡らしていたけれど、それより俺は蓮に駆け寄ると手を握った。

果たして、そこに力は入っていなかった。俺の違和感は明らかに力の入らない手足の体勢にあった。俺は蓮の目を見つめながら尋ねた。


「蓮、クスリか?盛られたのか?」

すると蓮はゆっくりと瞼を閉じて、またゆっくりと開けた。

俺は舌打ちすると、スマホで彗に電話した。

「俺だ。今、蓮が薬を盛られたみたいなんだ。ああ、手足が脱力してるみたいだ。後、口も痺れてるっぽい。…多分媚薬系だ。ああ、分かった。ここは蓮のマンションだ。ああ、そう。…悪いな。よろしく。」

電話を切った俺は、蓮の顔の涙を指で拭って言った。


「…今からうちの兄貴がドクター寄越してくれるから。早とちりして悪かった…。俺カッとなってあいつの事追い出しちゃったけど、正解だったな。

俺恥ずかしながら、蓮が他の奴といちゃついてるって思ったら、どうしようもなかった。目の前が真っ暗になっちゃってさ…。俺、自分で考えてる以上にお前のこと好きみたいだ。

あー、俺っていつもこんなんだよな。だから泣くなって。しょうがねーな。」

俺は蓮の瞳からこぼれ落ちる熱い涙を、唇でそっと受け止めたんだ。

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