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親友が恋人に変わる時

迷いの代償

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橘先輩に、俺が蓮に弱っているところに付け込まれたのではないかと言われて、俺は黙り込んだ。俺と蓮の関係は一言では難しい。俺たちは恋人になる前に親友だったのだから。

俺はため息をついて言った。

「普通の恋人同士ならそうかもしれませんね。でも、俺たちはそれ以前に親友というカテゴリーで小さい頃から付き合ってきているんです。でもそれは俺には迷いの一つでもあって…。

親友と恋人両方を両立するのって難しいですね。」


すると橘先輩は言った。

「そっか、お前たちは強い絆がそもそもあるんだな。そんな相手に心の柔らかな部分を曝け出すのは恥ずかしいだろ?俺だったらキツイな。恋人ってのは、ある意味恥ずかしい部分を見せ合う事だからな。

いやいや、そんな目で見るなよ。別にエロい事言ったわけじゃないぜ?まぁ三好も、そんな風に迷ってたら、葵みたいに一回別れる様な事になるんじゃないのか?


お前は案外鈍感だから、手遅れにならない様に大事な人ならちゃんと捕まえておけよ?あ、お試し彼氏なら、俺いくらでも相手するからな?」

そう言ってケラケラと笑った。それから俺たちは最近のオススメの映画だとか、取り止めもない事をくっちゃべって、俺は先輩のマンションを出た。


蓮と自分の事を客観的に聞いてもらった事で、何だかスッキリした気持ちで蓮のマンションへ向かった。玄関のチャイムを押すと、扉の向こうで人の気配がした。

俺は蓮がドアを開けてくれるのを待った。しかしいくら待ってもドアは一向に開く気配が無く、仕方なく合鍵でドアを開けた。目の前の玄関には、見慣れない靴があった。


俺は何だか息をするのも苦しい感じがして、ゆっくりと歩みを進めた。リビングには見慣れないリュックが放り出されていて、俺は何だか自分の方がこの家への侵入者の様な気がした。

ベッドルームから聞こえる話し声は、何を言っているのかは聞こえなかったけれど、俺は目の前が真っ暗になる様な冷たい汗がどっと背中を伝うのを感じた。


それでも、俺はひと目見るまでは信じられずに、すっかり自分の部屋であるベッドルームのドアを開け放った。そこには、何処かで見たような顔の男が蓮に覆いかぶさっていた。

上半身裸のその男は、蓮のTシャツを今まさに脱がせようとしていて、俺は馬鹿みたいに目の前の光景の前に呆然と突っ立っていたんだ。

ああ、俺が少し迷いを感じたからと言って、なぜこんな罰を与えられるのだろうか。
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