上 下
29 / 69
シーソータイム

動揺

しおりを挟む
「涼介、こっち。」

そう言って俺を手招きするのは蓮だ。あの海の告白以来、ひと月経つが特に俺たちの関係に変化はなかった。というか、蓮が俺のタイミングを辛抱強く待っているのかもしれない。

俺は、元々蓮のことが嫌いじゃない。多分好きだ。昔、こいつがどう男を抱くのかと興味を覚えた事もあるくらいだ。正直その点は今でも興味はあった。


でも葵に散々な振られ方をした後だったおかげで、俺は親友である蓮とちゃんとした関係を築く事に二の足を踏んでたんだ。もし蓮との関係が葵と同じように崩壊したら、同時に俺は親友も失ってしまう。

今の俺にはそんなリスクを取るほど、タフな精神状態ではなかったんだ。だから蓮には悪いと思いながら俺はハッキリとした返事をしていなかった。


一方蓮は辛抱強く待っているとはいえ、以前よりは明らかに俺に対しての感情を隠すことがなくなった気がする。それが俺にはくすぐったく感じるし、だんだん絡めとられて行くのがちょっとゾクゾクして俺の性癖を刺激するんだ。

俺は一昨日来たばかりの、蓮のマンション駐輪場にバイクから降りた。半年前から一人暮らしを始めた蓮は、俺をちょくちょく部屋に誘った。


葵と別れる前から、俺はすっかり自分の家の様に蓮のマンションに入り浸っていた。二人きりの時もあったし、壱太や篤哉が一緒の時もあった。

だから告られた後に行かないという選択肢は無かったんだ。でも、そう言えば葵と別れてからあいつらが一緒にここに来てない事に、今気づいてしまった。


俺はテレビの前のソファに座って、蓮から微炭酸を受け取りながら蓮の顔をじっと見つめた。蓮は俺の視線を片眉を上げて受け止めるとニヤッと笑った。

「…何か聞きたいことがあるみたいだな、涼介。」

俺は一瞬ためらったけれど、こんな事ははっきり聞いた方が良いと思って尋ねた。

「あのさ、葵と別れてから、あいつら一緒にここに来ないのって…。」


蓮は肩をすくめて言った。

「俺は別に、涼介と二人にしろって言ったわけじゃないぞ。あいつらが勝手に気を利かせてるみたいだな。…涼介が先輩と付き合った時に、俺が涼介を好きだって事があいつらにバレたんだ。

…篤哉は薄々気づいてたみたいだけど、壱太はひどく驚いてた。まぁ、俺も必死でかくしてたからな…。」

そう言って額を掻く蓮の腕を、俺は思わず引っ張り込んだ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

2回目チート人生、まじですか

ゆめ
ファンタジー
☆☆☆☆☆ ある普通の田舎に住んでいる一之瀬 蒼涼はある日異世界に勇者として召喚された!!!しかもクラスで! わっは!!!テンプレ!!!! じゃない!!!!なんで〝また!?〟 実は蒼涼は前世にも1回勇者として全く同じ世界へと召喚されていたのだ。 その時はしっかり魔王退治? しましたよ!! でもね 辛かった!!チートあったけどいろんな意味で辛かった!大変だったんだぞ!! ということで2回目のチート人生。 勇者じゃなく自由に生きます?

尻犯しします

雫@更新休みます
BL
尻お貸しします。お尻に特化したお店を始めました。アルバイトの面接から仕込み、お客さんとのセックスを書いていきたいと思います。基本的に色々なキャラが出てきます。

バイクごと異世界に転移したので美人店主と宅配弁当屋はじめました

福山陽士
ファンタジー
弁当屋でバイトをしていた大鳳正義《おおほうまさよし》は、突然宅配バイクごと異世界に転移してしまった。 現代日本とは何もかも違う世界に途方に暮れていた、その時。 「君、どうしたの?」 親切な女性、カルディナに助けてもらう。 カルディナは立地が悪すぎて今にも潰れそうになっている、定食屋の店主だった。 正義は助けてもらったお礼に「宅配をすればどう?」と提案。 カルディナの親友、魔法使いのララーベリントと共に店の再建に励むこととなったのだった。 『温かい料理を運ぶ』という概念がない世界で、みんなに美味しい料理を届けていく話。 ※のんびり進行です

家の猫がポーションとってきた。

熊ごろう
ファンタジー
テーブルに置かれた小さな瓶、それにソファーでくつろぐ飼い猫のクロ。それらを前にして俺は頭を抱えていた。 ある日どこからかクロが咥えて持ってきた瓶……その正体がポーションだったのだ。 瓶の処理はさておいて、俺は瓶の出所を探るため出掛けたクロの跡を追うが……ついた先は自宅の庭にある納屋だった。 やったね、自宅のお庭にダンジョン出来たよ!? どういうことなの。 始めはクロと一緒にダラダラとダンジョンに潜っていた俺だが、ある事を切っ掛けに本気でダンジョンの攻略を決意することに……。

売り専始めようとしたらセフレに「絶対別れないからぁ!」って泣きつかれて困惑する話

上総啓
BL
セフレに恋してしまった受けが捨てられないようテクを磨くべく売り専を始めようとしたら、件のセフレがめちゃくちゃ泣き縋ってきて困惑する話。 ※受けの人生がナチュラル不憫(でも受け自身はめちゃくちゃポジティブ) ※全三話の短編です

お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから

結城芙由奈 
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】 私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。 その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。 ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない 自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。 そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが―― ※ 他サイトでも投稿中   途中まで鬱展開続きます(注意)

料理人がいく!

八神
ファンタジー
ある世界に天才料理人がいた。 ↓ 神にその腕を認められる。 ↓ なんやかんや異世界に飛ばされた。 ↓ ソコはレベルやステータスがあり、HPやMPが見える世界。 ↓ ソコの食材を使った料理を極めんとする事10年。 ↓ 主人公の住んでる山が戦場になる。 ↓ 物語が始まった。

サレ妻の冒険〜偽プロフで潜入したアプリでマッチしたのが初恋の先輩だった件〜

ピンク式部
恋愛
今年30歳になるナツ。夫ユウトとの甘い新婚生活はどこへやら、今では互いの気持ちがすれ違う毎日。慎重で内気な性格もあり友達も少なく、帰りの遅い夫を待つ寂しい日々を過ごしている。 そんなある日、ユウトのジャケットのポケットからラブホテルのレシートを見つけたナツは、ユウトを問い詰める。風俗で使用しただけと言い訳するユウトに対して、ユウトのマッチングアプリ利用を疑うナツ。疑惑は膨れあがり、ナツは自分自身がマッチングアプリに潜入して動かぬ証拠をつきつけようと決意する。 しかしはじめて体験するマッチングアプリの世界は魅惑的。そこで偶然にもマッチしたのは、中学時代の初恋の先輩、タカシだった…。 R18の章に※を指定しています。

処理中です...