上 下
109 / 124
思わぬ出来事

僕が賢者?

しおりを挟む
僕は簡易ベッドの上で寝返りを打っていた。

他に起きてそうな学生はいない。ユアがあんな昂る様な口づけをするから眠れなくなった…。

僕は暗闇で目を開けながら、先見の賢者について考えてみた。


僕が自分の中の違和感に気づいたのは…、そうだ、子供の頃だ。

気づいたら周囲の事をすっかり忘れていて、屋敷中が大騒ぎになったっけ。懐かしいなぁ。

目覚めて、自分が何者かよく分からなくて不安でお兄様に一緒に眠ってもらったんだった。

ふふふ、そんな時から僕はお兄様が大好きだったんだな。

今考えてみると、その頃のお兄様だって今の僕より幼いんだ。ちょっと信じられないな。

お兄様はどんな時も僕にとっては道標なんだから。

あぁ、ついついお兄様の事ばかり思い出しちゃうな。


そうだ、その頃焼き菓子が物足りなくて、僕の知ってるお菓子を料理長に作ってもらったっけ。

そうか、その僕の知ってるってのが先見なのかも。だってみんな知らなかった…。

まぁお菓子くらいじゃ世界は変わんないよね?


あとは…馬車のユニーを見てびっくりしたよね。何で角生えてるのって。あれは今も違和感があるな。慣れたけど。

あとは…子供の頃の算術。家庭教師も僕のこと天才って褒めてくれてた。あれも見ただけでほとんど楽勝だったから関係あるのかな?

数術研究室で考えてる領地運営の数的捉え方のいくつかも、僕の頭の中にふわふわと漂っていたものだよね?

こうすればいいとか閃くというより、知ってる事を引っ張り出すって感覚。


僕はどこからその知識を得たんだろう。そう考えるとちょっと不気味だな。僕って凄い怪しくない?

どうしよう。皆んなに捨てられたら。…お兄様とユアは捨てないよね?僕、信じてるからね。


結局少し悲しくなってしまったまま、僕は眠りについた。



「リオン、リオン起きろ。朝だぞ?」

「んっ。なに…。」

「ああぁ、またそんな無駄な色気振りまいて!起きろ!」

キースの怒鳴り声で起きるのは気分悪いな…。

「キース、大きな声じゃなくて、優しく口づけで起こしてくれたら僕も良い気分になるのに。

ほんとデリカシーがないんだから…。」


「俺はユアじゃねぇ!全く、どこでもユア基準で求めるなって。俺は心配だよ。」

「キースは僕のこと随分心配してくれてるんだね?」

キースは僕を憮然とした表情で見ながら囁いた。

「しょうがないだろ?リオンは俺たちの大事な宝物だったんだ。今となっちゃ、腐れ縁でしょうがなくだけどな。」

僕はちょっと赤らんだキースの顔を見ながら思ったんだ。


キースってば。これがほんとのツンデレだよね?お母様?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成) エロなし。騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? いいねありがとうございます!励みになります。

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

【完】僕の弟と僕の護衛騎士は、赤い糸で繋がっている

たまとら
BL
赤い糸が見えるキリルは、自分には糸が無いのでやさぐれ気味です

大好きなBLゲームの世界に転生したので、最推しの隣に居座り続けます。 〜名も無き君への献身〜

7ズ
BL
 異世界BLゲーム『救済のマリアージュ』。通称:Qマリには、普通のBLゲームには無い闇堕ちルートと言うものが存在していた。  攻略対象の為に手を汚す事さえ厭わない主人公闇堕ちルートは、闇の腐女子の心を掴み、大ヒットした。  そして、そのゲームにハートを打ち抜かれた光の腐女子の中にも闇堕ちルートに最推しを持つ者が居た。  しかし、大規模なファンコミュニティであっても彼女の推しについて好意的に話す者は居ない。  彼女の推しは、攻略対象の養父。ろくでなしで飲んだくれ。表ルートでは事故で命を落とし、闇堕ちルートで主人公によって殺されてしまう。  どのルートでも死の運命が確約されている名も無きキャラクターへ異常な執着と愛情をたった一人で注いでいる孤独な彼女。  ある日、眠りから目覚めたら、彼女はQマリの世界へ幼い少年の姿で転生してしまった。  異常な執着と愛情を現実へと持ち出した彼女は、最推しである養父の設定に秘められた真実を知る事となった。  果たして彼女は、死の運命から彼を救い出す事が出来るのか──? ーーーーーーーーーーーー 狂気的なまでに一途な男(in腐女子)×名無しの訳あり飲兵衛  

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

処理中です...