上 下
103 / 124
思わぬ出来事

馬車の中

しおりを挟む
僕たちは馬車で揺られていた。正直限界だった…お尻が。はぁ。


僕の馬車には、キースとニ年のマキシムとカーク先輩、三年のロナルド先輩が乗っていた。この五人が僕の実習グループだ。

マキシムとカーク先輩は従兄弟同士らしくて、そう言われてみるとよく似ていた。

仲が良いのか悪いのか言いたいことを言い合っているので、僕はおかしくって何度も笑いを堪える事が出来なかった。

ロナルド先輩はアーサーのような穏やかなまとめ役という感じで、僕は直ぐに懐いてしまった。


「ロナルド先輩はフィザード伯爵領ですよね?あそこは高地も近いので鉱物も沢山取れるのではありませんか?」

ロナルド先輩は僕を興味深そうに眺めるとニッコリ笑って言った。

「リオン君は麗しいだけじゃなくて、博識なんだね。

僕の地元は確かに鉱物が良く採れるんだ。最近は鉄という鉱物が出るようになったので、領地も期待しているのさ。」

「そうなんですね?鉄だと剣や武具に使うと特に硬いので非常に優れたものになりますね。」

僕がそう言うと先輩は目を見開いて僕を見た。


「リオン君、君は鉄の剣を知っているのかい?まだほとんど知っているひとがいないのだけれど。」

「そうなんですか?僕、なぜ知っていたんだろう。誰かに聞いたんだろうか?」

キースは僕の顔を見ると呆れたように言った。


「リオンの得意なやつですよ。

リオンは時々皆が当然知ってるはずという感じで、突拍子もない事言い出す事が昔からあるんです、ロナルド先輩。

でも本人は全く自覚がなく言うもんだから、周囲を混乱させるんです。」


「…そうなのか。リオン君には遠見というより、先見の力があるのかもしれない。」

馬車の中はロナルド先輩の言葉を聞き漏らさない様に静まり返った。


「皆は聞いたことはないかい?前回、先見の力を持つ者が現れたのは200年前だった。

その者は、多くの新しい知恵をこの世にもたらしたんだ。それによりこの世界は大きく発展した。

ただし、その者に関しての情報は他国に情報が漏れるのを嫌った施政者により、秘密裏にされた。

僕はこの話を御伽噺と受け止めていたんだけど、僕の領地の先祖がその事に関わっていたらしい。

隠された地下倉庫に古い日記が残されていたんだ。」


マキシム先輩が尋ねた。

「ロナルド先輩はその日記を読んだんですか?」

「ああ、実は前回帰省した時に地下倉庫を発見した兄に見せてもらったんだ。

その先見の賢者は他所から来たわけでもないし、生まれも育ちもこの国の貴族のひとりだった。

だが、成長するにつれ多くの他の者にない智慧を周囲に授け始めて先見の賢者と呼ばれる様になったんだ。

ただ、その事が知れ渡る前に施政者により守護され、隠蔽された。

だから多くの人に、その先見の力を知られる事はなかった様だ。」

ロナルド先輩は薄い茶色の瞳を鋭く煌めかせ、僕を見つめた。









しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成) エロなし。騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? いいねありがとうございます!励みになります。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

俺は北国の王子の失脚を狙う悪の側近に転生したらしいが、寒いのは苦手なのでトンズラします

椿谷あずる
BL
ここはとある北の国。綺麗な金髪碧眼のイケメン王子様の側近に転生した俺は、どうやら彼を失脚させようと陰謀を張り巡らせていたらしい……。いやいや一切興味がないし!寒いところ嫌いだし!よし、やめよう! こうして俺は逃亡することに決めた。

エロゲ世界のモブに転生したオレの一生のお願い!

たまむし
BL
大学受験に失敗して引きこもりニートになっていた湯島秋央は、二階の自室から転落して死んだ……はずが、直前までプレイしていたR18ゲームの世界に転移してしまった! せっかくの異世界なのに、アキオは主人公のイケメン騎士でもヒロインでもなく、ゲーム序盤で退場するモブになっていて、いきなり投獄されてしまう。 失意の中、アキオは自分の身体から大事なもの(ち●ちん)がなくなっていることに気付く。 「オレは大事なものを取り戻して、エロゲの世界で女の子とエッチなことをする!」 アキオは固い決意を胸に、獄中で知り合った男と協力して牢を抜け出し、冒険の旅に出る。 でも、なぜかお色気イベントは全部男相手に発生するし、モブのはずが世界の命運を変えるアイテムを手にしてしまう。 ちん●んと世界、男と女、どっちを選ぶ? どうする、アキオ!? 完結済み番外編、連載中続編があります。「ファタリタ物語」でタグ検索していただければ出てきますので、そちらもどうぞ! ※同一内容をムーンライトノベルズにも投稿しています※ pixivリクエストボックスでイメージイラストを依頼して描いていただきました。 https://www.pixiv.net/artworks/105819552

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

ヒロイン不在の異世界ハーレム

藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。 神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。 飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。 ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?

悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】

瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。 そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた! ……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。 ウィル様のおまけにて完結致しました。 長い間お付き合い頂きありがとうございました!

処理中です...