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お兄様と夜のお話

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楽しかったけれど気疲れした社交界デビューが無事終わって、ほっとした僕はゆっくりと湯舟で身体を伸ばしていた。

さっきまでセブが身体を洗ってくれていたけれど、最近は湯舟でのんびりする時間は放っておいてくれる様になった。

ま、僕もいつまでも湯舟で溺れる様なチビじゃないからね。



今夜はお兄様がほんとに久しぶりにお屋敷でゆっくり過ごす日だから、セブにお兄様とゆっくり過ごしたいって懇願したんだ。

そしたらお兄様と二人で真顔でコソコソ話してた。

何か前も見た事があるな、あれ。デジャブだ。



お風呂前にセブは顰めっ面しながら、明日の朝7時までにはお部屋に戻る様にって条件付きで許可を出してくれたんだ。

やったね。しかしセブってお兄様よりも権力あるんじゃない?凄いね。



湯舟でお兄様とのアレコレを思い起こしてたら何だかのぼせてきちゃって、さっき慌てて出たところ。

いつものようにツンとする様な爽やかで甘い青い果実の香油をセブが身体に塗ってくれて、今はお兄様の膝の上。

お兄様は僕の首筋の香りを嗅ぐのが大好きだから、いっつも抱き込まれてる気がする。


僕はくすぐったさに耐えながら、今日の社交界デビューの時の学院生に何を話しかけられたかとか、お兄様に聞かれたことに答えていた。

お兄様は時々(あいつら…。)とかあんまり聞いたことのない声色でぶつぶつ言ってたけれど、僕は夢中で今日の事を話してたからハッキリとは聞こえなかった。


お兄様に手渡されたミント水をごくごくと飲み終わった僕は、急に甘い声になったお兄様のお顔を見上げて胸がドクンと波打つのを感じてた。

だってお兄様の美しいアメジスト色の瞳が、何だかいつもよりきらめいていてとっても綺麗だ。

そしてちょっぴりだけど視線の強さに怖い感じもする…。

「…お兄様?」



僕はゆっくりとお兄様のベッドに仰向けに寝かされた。

お兄様はベッドに腰掛けてこっちを向きながら、指先でゆっくり僕の身体を撫で始めた。

僕は期待と胸のドキドキになすすべもなく、じっとお兄様の優しいお顔を見つめていた。


「リオン、今夜の閨のレッスンはもうちょっと先に進んでみようと思うんだ。

ひとつ聞きたいのだけど、リオンは夢精はしたかい?」


僕はお兄様の口から急に夢精なんて言葉が出てきたので、恥ずかしくなって顔を手で覆ってしまった。


お兄様は屈んで、僕の指先にゆっくりと口付けると一本づつ僕の指を引き剥がしていった。

多分涙目になっていた僕の頭を撫でながら、お兄様は安心させるようにニコリと僕に微笑みかけた。
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