上 下
116 / 122
僕らの未来?

あっくんに招かれて

しおりを挟む
「あ、ここだよ。」

あっくんがそう言って、大きな美しい高層ビルを指差した。今日はあっくんが自分の仕事場を見せたいと、僕を連れてきてくれたんだ。

身体にピッタリした、オーダーメイドのスーツを着こなしているあっくんはいつ見てもカッコいい。僕もこんな場所で場違いになるのは嫌だったから、幾つか持ってるスーツの地味なものを着て来た。


「…理玖のそんな姿も良いね。やっぱり連れてくるんじゃなかったかなぁ。可愛い綺麗過ぎて、注目されちゃいそうだ。いいかい?理玖。俺の側から離れちゃダメだからね?」

あっくんの心配事がまるで父親のそれで、僕は思わずクスクス笑った。ビルの入り口を入ってすぐに外来受付があって、あっくんは僕をそこに連れて行った。


受付には僕から見ても、誰からも好感を持たれそうな見目麗しい男女が座っていて、あっくんを見ると手元からネックホルダー付きの仮社員証を差し出した。

「東さん、こちらご用意しておきました。どうぞ。」

あっくんはそれを受け取ると、僕の首に掛けてにっこり笑った。それから備え付けのモバイルに何か打ち込むと受付が完了したみたいだ。


僕に注目している受付の二人に、あっくんは言った。

「彼が三好くんです。これからも出入りすると思うから、色々戸惑っていたら教えてあげて下さい。さぁ理玖行こうか。」

僕は二人に会釈すると、慌ててあっくんの後をついて行った。あっくんは僕を見下ろして言った。

「あの二人は優秀だから色々言わないと思うけど、理玖は可愛くてどうしても目立っちゃうな。さっきもじっと見られてただろう?はぁ。これから社員が話しかけて来ても、理玖は答えなくて良いから。ね?」


僕はあっくんがちょっとピリピリしてる気がして、あっくんに尋ねた。

「あっくん、今日僕をここに連れてきたのって、理由聞いてないけど…。」

あっくんは微笑むと言った。

「理玖が進路迷ってるって言っただろ?これも選択肢のひとつに入れて欲しくて。学部選択の材料になるかと思って連れて来たんだ。」


僕はあっくんが何を言いたいのかはっきりしないなと思いつつ、物珍しげに周囲を見回しながらあっくんの後を着いて行った。あっくんの東グループは傘下に多くの会社を従えているけれど、統括の本部があっくんの仕事場だ。

急にさっきまでのオフィスらしい場所から、落ち着いたホテルの様な上位社員の個別オフィスが立ち並ぶ廊下に切り替わった。

あっくんはそのひとつの重厚なドアの前に立つと、天井までの大きな扉を開きながら僕を招き入れた。

「ようこそ、私のオフィスへ。」



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成) エロなし。騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? いいねありがとうございます!励みになります。

誰よりも愛してるあなたのために

R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。  ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。 前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。 だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。 「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」   それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!  すれ違いBLです。 ハッピーエンド保証! 初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。 (誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります) 11月9日~毎日21時更新。ストックが溜まったら毎日2話更新していきたいと思います。 ※…このマークは少しでもエッチなシーンがあるときにつけます。 自衛お願いします。

末っ子オメガは近親相姦で妊娠してしまいました

ラフレシア
BL
 末っ子オメガは孕んでしまう!

動物アレルギーのSS級治療師は、竜神と恋をする

拍羅
BL
SS級治療師、ルカ。それが今世の俺だ。 前世では、野犬に噛まれたことで狂犬病に感染し、死んでしまった。次に目が覚めると、異世界に転生していた。しかも、森に住んでるのは獣人で人間は俺1人?!しかも、俺は動物アレルギー持ち… でも、彼らの怪我を治療出来る力を持つのは治癒魔法が使える自分だけ… 優しい彼が、唯一触れられる竜神に溺愛されて生活するお話。

闇を照らす愛

モカ
BL
いつも満たされていなかった。僕の中身は空っぽだ。 与えられていないから、与えることもできなくて。結局いつまで経っても満たされないまま。 どれほど渇望しても手に入らないから、手に入れることを諦めた。 抜け殻のままでも生きていけてしまう。…こんな意味のない人生は、早く終わらないかなぁ。

Ωの皇妃

永峯 祥司
BL
転生者の男は皇后となる運命を背負った。しかし、その運命は「転移者」の少女によって狂い始める──一度狂った歯車は、もう止められない。

夢見がちオメガ姫の理想のアルファ王子

葉薊【ハアザミ】
BL
四方木 聖(よもぎ ひじり)はちょっぴり夢見がちな乙女男子。 幼少の頃は父母のような理想の家庭を築くのが夢だったが、自分が理想のオメガから程遠いと知って断念する。 一方で、かつてはオメガだと信じて疑わなかった幼馴染の嘉瀬 冬治(かせ とうじ)は聖理想のアルファへと成長を遂げていた。 やがて冬治への恋心を自覚する聖だが、理想のオメガからは程遠い自分ではふさわしくないという思い込みに苛まれる。 ※ちょっぴりサブカプあり。全てアルファ×オメガです。

成り行き番の溺愛生活

アオ
BL
タイトルそのままです 成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です 始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください オメガバースで独自の設定があるかもです 27歳×16歳のカップルです この小説の世界では法律上大丈夫です  オメガバの世界だからね それでもよければ読んでくださるとうれしいです

処理中です...