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バースの難しさ

篤哉side壱太の揶揄い

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「篤哉、婚約おめでとう。お前とうとう本懐を成就したのか?」

おれに肩を組んでニヤつきながらこんな事を言うのは、やっぱりの壱太だ。壱太は隙あらば、俺が理玖に手出しできないのを揶揄いのネタにしてくる。

「お前、涼介のいる所でそんな事絶対言うなよ?ぶっ飛ばされるぞ、マジで。」


蓮が呆れた顔で壱太に言った。蓮はともかく、確かに壱太に色々言われてもしょうがない面はあるんだ。俺は中1の時に、理玖の側にいたら手を出してしまいそうで怖くなった。

理玖はまだ全然幼いのに、俺から見たら妙な色気があって理玖の顔を見ればドキドキと心臓が煩くなった。そんな自分が怖くて、俺は逃げるように理玖と顔を合わせないようにしたんだ。手紙は書いたけれど、実際に会うのは怖かった。


理玖の事を考えないようにするために、節操なくデートに行ったし、中学2年ぐらいから高校1年の頃は簡単に身体の関係を持った。アルファの男に、あるいは東グループの後継ぎに媚び売ってくる生徒は多かった。

その頃一緒に遊び回ってたのは壱太だった。たまに涼介や蓮もいたけれど、何となく涼介に俺のだらしない状況を知られたくなくてもっぱら二人でコソコソ遊んでたんだ。


その状況を知ってる壱太にしてみれば、高2で一切の遊びから足を洗った俺に驚いたんだろう。俺も自分の変わりように我ながら呆れるけれど、理玖が他の奴とデートしたと聞いたあの時のゾッとするような恐怖は、二度と経験したくなかった。

その夜に、涼介に頼んで理玖の寝顔を見に行った時も、俺の本当に欲しいものはこんな近くにあったんだと認めてしまえば、もう二度と好きでもない相手と遊びたいなどと思うはずもなかった。


実際、今でも理玖と手を繋ぐだけで俺はドキドキと心臓が速くなってしまう。キスする時の理玖の甘いうっとりするような匂いは俺を直ぐに興奮させて、もし理玖がヒートを起こしたらきっと俺は抑制剤が効かないんじゃないかと訝しんでいる。

今回のトラブルで予定してた婚約が早まったのは、俺にしてみたら嬉しいだけだけど、理玖はどう思っているんだろうか。嬉しそうにしていたけれど、理玖は俺に運命を感じてくれているのだろうか。

一度理玖に聞いてみたいけれど、なんて答えるのか考えるとちょっと怖い気がする。


「こいつ直ぐ理玖くんのことで頭がいっぱいになっちゃうみたいだな。はぁ、俺もそろそろ恋人が欲しくなって来たよ。」

そう呆れたように言ったけれど、同時に壱太は羨ましそうに俺を見つめた。






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