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僕のバース

越えられないもの

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「びっくりしたよ。いきなり僕を副リーダーに指名するんだから。」

下駄箱で僕がミコトにボヤいてると、悠太郎が走ってやって来た。悠太郎は僕の冴えない顔を見ると、何かあったのかと聞いて来た。ミコトが笑いを堪えて報告すると、悠太郎は怖い顔をして僕を見た。

「その吉良って奴と面識あるのか、理玖。」

僕は肩をすくめて言った。


「あるわけないじゃん。だからびっくりしちゃって。確かに吉良ってやつはいかにも出来そうな外部生だったけどね?僕みたいな、頼りない奴を指名するとか、見る目ないよね。」

ミコトは堪えきれない様に噴き出すと、僕の肩に腕を回して言った。

「ふふ、自分で言うなって。理玖は頼り甲斐があるとは言えないけど、出来ない奴じゃないからな。成績も良いし。」

僕はミコトと悠太郎をジト目で見て言った。


「成績トップクラスのお前達に言われても嬉しくないけどね。どうせ僕は50番に入るのが限界だよ。そう言えば、悠太郎のクラスリーダーは誰なの?知ってる人?」

悠太郎は僕たちを気まずそうに見て言った。

「あー、俺?」

尊の弾ける笑いが辺りに響き渡った。その時、前の方で何かガヤガヤと騒ついているのが目に入った。高校生が門の所で誰か待っているらしい。女の子たちがきゃあきゃあと妙に盛り上がっている。


よっぽど男前が居るのかも。僕たちが興味を惹かれて覗き込んだら、遠目に涼兄が居た。そして、その隣には…あっくんが。僕は急にドキドキと胸が締め付けられた。

尊と悠太郎が肩をすくめて、僕を生徒たちの群れからひっぱりだして門の方まで連れ出してくれた。

僕は涼兄の隣に立っているあっくんから目を離せなかった。時々手紙はもらっていたけれど、チラッと顔を合わせて挨拶するくらいでちゃんと話をしたのはあのフェンス越しに会った三年以来だった。


あっくんはすっかり大人びていた。それはそうだ。高校二年生だもの。僕が頑張って成長しても、あっくんとの年齢差は決して縮まらないんだ。

僕はその残酷な現実に打ちのめされてしまった。僕はまだ、たかだか中学一年の、全然大人っぽくもなくて、あっくんとは不釣り合いの子供だった。少し青褪めただろう僕に、あっくんは心配そうな顔で僕を見つめた。

そして後ろ手にしていた手を前に出すと、僕に大きな花束を差し出して言った。

「中学部入学おめでとう、理玖。理玖と話がしたいんだけど、ちょっと時間あるかな。」


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