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三好家の末っ子

幼稚園のお友達

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野村さんの子分の橋本さんに連れられて、いつものように聖リリー幼稚園へと歩いて向かう。橋本さんは僕たち子供の送り迎えとかのお世話専門のお手伝いさんだ。年齢はよく分からないけど、野村さんよりずっと若い。

「理玖さま、今日は帰ったら一緒にスポーツクラブへ行きましょうね。楽しみにしてますね。」

そう言ってにっこり微笑んだ。僕は微笑み返すと、手を振って幼稚園の下駄箱へ向かった。


「りくくん、おはよう。」

僕に一番に声を掛けてきたのは、仲良しの悠太郎くんだ。悠太郎くんは僕より背が大きくて、いつも僕のお世話をしてくれるミニ野村さんみたいな男の子だ。野村さんよりずうっと若くてカッコいいけどね。

「ゆうたろうくん、おはよ。今日も相変わらずカッコいいね。」

座って靴を履き替えながら、悠太郎くんを見上げて言うと、悠太郎くんはみるみる顔を赤くして黙ってしまった。毎朝同じようなことを言ってるのに、毎回赤くなるのが面白い。僕は立ち上がると、待っててくれた悠太郎くんの手を握って歩き出した。


「今日僕ね、スポーツクラブへ行くんだ。ゆうたろうくんも行かない?きっとゆうたろうくんがいた方が僕、楽しい気がする。…ダメかな?」

悠太郎くんはコクコク頷いて言った。

「僕、ママに頼んでみる。たぶん大丈夫だと思うけど…。でも今日って、りくくんはスポーツクラブの日じゃないでしょ?」

僕はちょっと俯いてから、内緒話をするように悠太郎くんの耳に手を寄せてささやいた。


「実はね、僕、時々夜に怖い夢を見るんだ。そんな時は沢山身体を動かしたらぐっすり朝まで眠れるよって、けいにーにが教えてくれたの。」

悠太郎くんは相変わらず赤い顔をしながらも、納得する様に頷いて言った。

「そうなんだ。…僕も最近眠れない時があるから、丁度いいかも。」

僕は悠太郎くんも眠れない仲間なんだと喜んで、僕の仲良しお友達ランキングでの順位を上げたんだ。その時僕は、ふと気になって悠太郎くんに尋ねた。


「ゆうたろうくんはどうして眠れないの?」

すると悠太郎くんは僕と繋いだ手をじっと見つめて、やっぱり顔を赤くして言った。

「今日は眠れると思うけど…。僕にもよく分からないんだけどね。他の人に大好きなものを取られちゃったりして、寂しかったり、悔しい時に眠れない気がするんだ。」

僕は悠太郎くんの言った事をちょっと考えて、頷きながら言った。

「うん。僕もそれは眠れなくなりそうだよ。」

そう言って二人で顔を見合わせて笑い合ったんだ。





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