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ターゲットは僕?

リチャードside伯爵の独白

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伯爵の独白は止まらなかった。

「しかし髪から覗く黒くて丸い耳もあります。私は不思議に思ってその黒い耳を触りました。それは触れると簡単に外れてしまいました。特殊な作りのその耳は、偽物でした。

その日の午後に、私はマモルを部屋に呼んで話を聞く事にしました。私はマモルが人間ではないのかと尋ねたところ、マモルは動揺して、緊張の糸が切れた様子で泣き出しました。


マモルの話は驚くべきものでした。マモルは人間だけが住む世界から、この獣人の世界に突然飛ばされてきたという事でした。マモル自身もどうして良いか分からなかったようです。

マモルはご存知のようにとても賢い。状況が分かるまで、私達と同じ振る舞いをしようと考えたのです。たまたま持っていた偽物の耳を使ってね。


人間の世界では私たちの様な耳をつけて楽しむ習慣があるらしいです。おかしなものです。でもその事がマモルを人間だと発覚させるのを防いだのです。

文献に書かれていた、人間は獣人を魅了するという記述をも証明しました。ウェリントン伯爵の子息は冷淡で有名だったのに、すっかりマモルの庇護者のようでした。

もちろん殿下方も心当たりがある事でしょう。私が獣人の世界で戸惑っているマモルを庇護した訳も、同じでしょうね。


パンダ族というのは、実際マモルの世界にいる生き物らしいです。特徴を聞くと、まさにマモルの様に可愛らしい、獣性の弱い生き物の様でした。

竜が現れたのも、ヌルトンがマモルを襲ったのも、もしかしたらこの世界に現れた人間であるマモルのせいかもしれません。が、ハッキリとしたことはわかりません。」

私達は、伯爵の話に度肝を抜かれた。一方で、今までの事、この世界の事、獣人の事をあまり知らないマモルの行動が全て腑に落ちたのだった。


王はため息をつくと、伯爵に尋ねた。

「ここまで上手く、マモルを獣人として偽装してまで学園に入れたと言うに、今更秘密を開示するのには何か理由があるのではないか?」

伯爵は王を見つめると頷いた。


「実はアーサー卿の事です。ご存じの様に、アーサー卿は伝承の研究者です。今回の竜の出現で研究が進んだ事に、非常に喜んでいました。が、最近のアーサー卿はマモル自身にその研究の矛先を変えた様なのです。

私もアーサー卿以外ならば、ここまで心配はしないでしょうけれど、アーサー卿の狂信的研究がマモル自身に向かったとしたら…、彼ならばマモルを実験対象としてモルモットの様に扱いかねません。


竜は無理でも、非力なマモルなら何をするのも可能でしょうからね。…実際、一昨日マモルから、アーサー卿が怖い、不安を感じると手紙まで届いたのです。

私はアーサー卿の妙な犠牲になる前に、いざとなったら、王に人間であるマモルを保護していただきたいのです。人間であるマモルはこの世界に無い知識を持っていて、それはきっと王国の役に立つでしょう。


王がマモルを保護する理由に十分なると思います。…私はマモルの後見ですが、侯爵家の前では弱い。勝手なお願いですが、これはこの世界の父としての私からの願いなのです。」

そう言って、伯爵は王に頭を下げたのだった。
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