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竜の森
森へ行きましょう
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軋む身体を思い切り伸ばしながら、高台から目の前に広がるマイナスイオンを思いっきり吸い込んだ。ここは王都から3刻、約1時間輪車で向かった大きな森だ。何でも王族の直轄地らしく、関係者以外立ち入る事は出来ないらしい。
伯爵曰くは貴重な資源や植物の宝庫らしい。物凄く悪い顔で言ってたから、多分こっそり入ったことがあるんだろう。僕は後ろにドヤドヤと降りてきた御一行様の視線を感じながら、隣に立っていた伯爵にこっそり尋ねた。
「伯爵、何だか大事になってますよ?大丈夫でしょうか。」
伯爵はチラリと後ろに視線を投げかけると、眉をひそめてささやいた。
「今更逃げるわけにもいくまい。ここは派手にロクシーを登場させるしかないだろうな。ロクシーとマモルの深い繋がりは、きっとマモルを助けてくれるだろうからな…。」
僕は腕の中で僕に甘える、一見小さなトカゲのペットにしか見えないロクシーを撫でると、淡い琥珀色の宝石のような瞳を覗き込んだ。
「ロクシー、この森を自由にお散歩しておいで。もちろん君の本当の姿になっても良いんだよ。とっても広いからね。僕が呼んだら帰ってきてくれると嬉しいけど。大丈夫そう?」
ロクシーは声変わりして、最近聴き慣れてきたハスキーボイスでギュイとひと鳴きすると、僕の頬をペロンと舐めた。
「皆さん、僕のロクシーは今から本来の姿に戻って森にお散歩へ行きます。ロクシー、用意は良いかい?」
僕が後ろを振り返ってそう言うと、ロクシーは僕の腕の中から降りて地面に降り立った。そして崖のようになっている高台の端までトコトコと歩いて行くと、皆の方をチラッと見た。
こういう所が本当に人間臭いんだよね、ロクシーって。僕がそう思いながら見守っていると、ロクシーは僕の方を向いてギュイとひと鳴きするとググッと身体を拡げた。
本当に拡げるという言い方がピッタリだった。小さなトカゲの中から金色めいた膜のような翼をグッと左右に開いた。そして身体も、まるで縫いぐるみの中身が背中から出て来る様にみるみる大きくなっていった。
僕も伯爵も、その時初めて最近のロクシーが温室を壊さないように、あれでも遠慮したサイズにコントロールしていたと気づいたんだ。目の前のロクシーは美しい若い竜になっていた。身の丈は3メートルほど有るだろうか。
あの庭園に降り立った竜に比べたら半分に満たないけれど、ロクシーはいつの間にか美しい竜に成長していたんだ。ロクシーはギューイとお腹に響く声でひと吠えすると、一気に崖の下の森目掛けて滑降して行った。
御一行様も誰も言葉なく黙ってロクシーの美しい飛翔を見つめていた。しばらく気ままに美しい経路を取りながら飛んでいたけれど、ふっと森の中へと潜ってロクシーの姿は見えなくなってしまった。
伯爵曰くは貴重な資源や植物の宝庫らしい。物凄く悪い顔で言ってたから、多分こっそり入ったことがあるんだろう。僕は後ろにドヤドヤと降りてきた御一行様の視線を感じながら、隣に立っていた伯爵にこっそり尋ねた。
「伯爵、何だか大事になってますよ?大丈夫でしょうか。」
伯爵はチラリと後ろに視線を投げかけると、眉をひそめてささやいた。
「今更逃げるわけにもいくまい。ここは派手にロクシーを登場させるしかないだろうな。ロクシーとマモルの深い繋がりは、きっとマモルを助けてくれるだろうからな…。」
僕は腕の中で僕に甘える、一見小さなトカゲのペットにしか見えないロクシーを撫でると、淡い琥珀色の宝石のような瞳を覗き込んだ。
「ロクシー、この森を自由にお散歩しておいで。もちろん君の本当の姿になっても良いんだよ。とっても広いからね。僕が呼んだら帰ってきてくれると嬉しいけど。大丈夫そう?」
ロクシーは声変わりして、最近聴き慣れてきたハスキーボイスでギュイとひと鳴きすると、僕の頬をペロンと舐めた。
「皆さん、僕のロクシーは今から本来の姿に戻って森にお散歩へ行きます。ロクシー、用意は良いかい?」
僕が後ろを振り返ってそう言うと、ロクシーは僕の腕の中から降りて地面に降り立った。そして崖のようになっている高台の端までトコトコと歩いて行くと、皆の方をチラッと見た。
こういう所が本当に人間臭いんだよね、ロクシーって。僕がそう思いながら見守っていると、ロクシーは僕の方を向いてギュイとひと鳴きするとググッと身体を拡げた。
本当に拡げるという言い方がピッタリだった。小さなトカゲの中から金色めいた膜のような翼をグッと左右に開いた。そして身体も、まるで縫いぐるみの中身が背中から出て来る様にみるみる大きくなっていった。
僕も伯爵も、その時初めて最近のロクシーが温室を壊さないように、あれでも遠慮したサイズにコントロールしていたと気づいたんだ。目の前のロクシーは美しい若い竜になっていた。身の丈は3メートルほど有るだろうか。
あの庭園に降り立った竜に比べたら半分に満たないけれど、ロクシーはいつの間にか美しい竜に成長していたんだ。ロクシーはギューイとお腹に響く声でひと吠えすると、一気に崖の下の森目掛けて滑降して行った。
御一行様も誰も言葉なく黙ってロクシーの美しい飛翔を見つめていた。しばらく気ままに美しい経路を取りながら飛んでいたけれど、ふっと森の中へと潜ってロクシーの姿は見えなくなってしまった。
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