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公私混同は禁止

悶え

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 うわーっ!どーして私はまた橘征一とキスとかしちゃってんの!私は枕に顔をうずめて、ジタバタとするしか無かった。気がつけば私は例のごとく征一にガッツリ口づけられていて、自分からは拒絶もしてないと言う体たらく…。

 アワアワと挨拶もそこそこに、マンションに逃げ帰ったのだけど。別れ際に征一が会社での対応は考えておくって言ってくれたから、それに期待するしかないけど…。これ以上私の日常が難しくなるのは限界だわ。


 悶えていたらすっかり遅くなってしまったけれど、私はコスプレ仲間との打ち合わせチャットに顔を出すって言ってあったのを思い出した。慌ててログインしたら、すっかり盛り上がっていて、やっぱり私が一緒に誰か連れていかない訳にいかない状況になっていた。

 私は歯磨きしながら、衣装を取りに行ったり、試着も必要だとスケジュールを組み立てた。やっぱりここ2、3日で相手のスケジュールを押さえないといけないかも…。


 私のコスプレ、イザッキゲームの小悪魔セシリーと対になるミハエル司祭は、体格が良くて金髪碧眼のイケメンキャラクターだ。カツラと衣装は借りるとして、メイクやコンタクトは私がするのかな…。で、誰に?

 一番そのままで雰囲気が似てるのは橘兄弟かも…。でも野村さんがコスプレしたら、ちょっと違う扉開いちゃう感じになりそう…。見たい!

 でも野村さんは私がコスプレしてるの知らないから、急にこんなお願いしたら引かれるかな…。でもこれ以上橘兄弟に深入りするのは良くない気がするし…。


 散々迷った私は、次の日翼に相談することにした。しばらく考え込んでいた翼は急に悪い顔をして言った。

「野村さんに頼もうよ!野村さんにも仮彼氏から昇格するためのチャンスをあげなくっちゃ、フェアじゃないもの。橘弟にも参戦してもらいたいところだけど、今回は野村さんで!」

 私は妙に盛り上がってる翼を訝しく思いながら、まぁ野村さんのスケジュール次第だけどと翼を落ち着かせて、連絡を取ることにした。


 結局その日、野村さんと仕事終わりに食事をする事にして、色々打ち合わせることになった。

 コスプレの件には随分驚いていたけど、元々ノリの良い野村さんらしく二つ返事で了承してくれた。詳しくは会った時に話すのだけど、私は野村さんの良い返事にウキウキしてきて、会うのがとっても楽しみになっていた。これが自分の首を絞める一歩になるなんて、本当考えが浅かったんだけど…。



 野村さんこと裕樹さんを目の前に、私はやり過ぎてしまったのかと気まずい思いに囚われた。目の前の裕樹さんは玄関先で顔を赤くして、呆然と私のコスプレ姿を見つめていた。

「あ、あの、このセシリーと一緒にコスプレイベントに参加するのに着た方が分かりやすいかと思って。…驚いちゃいましたか?すみません、普段コスプレしない人には見慣れないですよね…?」


 今日は先週夜に会って打ち合わせした通り、試着調整をするために裕樹さんに我が家に来てもらったのだ。打ち合わせの時に、私のコスプレも事前に見ておきたいと裕樹さんに言われた事を間に受けてしまった。やっぱりやり過ぎだっただろうか。

 裕樹さんは慌てたように手を振って、私から目を逸らして言った。

「いや、ごめん!可愛すぎてびっくりしただけ!俺、話聞いてから色々ネットでイザッキゲームを調べたんだよ。美那ちゃんのセシリーが想像よりずっと可愛くて…。やばい。俺、なんか直視出来ないんだけど!」


 そう言って目元に片手を覆って、赤らんだ裕樹さんはちょっとかわいいと思った。私はクスッと笑うとミハエル司祭の衣装を広げて見せた。

「さぁ!裕樹さんはこっち着てみてください!私凄く楽しみにしてたんですよ?」

 裕樹さんは私を少し眩しそうに見つめて頷いた。私は裕樹さんに衣装を身につける時の注意をいくつかすると、美波の部屋で着替えてもらった。


 美波はすっかり旅行の彼氏の家に入り浸っていて、身の回りのものを持っていってしまった。がらんとした部屋にはベッドと季節のものがクローゼットにあるだけだ。

 折半している部屋代はいざという時に戻って来れるようにと払ってくれている。どうも彼氏がお金持ちでそのお金を出してくれてるみたいなんだけど、詳しいことはよく分からない。

 私も一人でこの部屋代を払うのは少し厳しいので助かるけど。もし美波が出るなら、引っ越すことも考えないといけないかもしれない。私は写真を撮る三脚をリビングに用意しながらそんな事を考えていた。


 美波の部屋の扉が開くと、上背と筋肉の感じがそのまんまのミハエル司祭が立っていた。裕樹さんらしい、ちょっと優しげなミハエル司祭はこれはこれでキュンとする。私は口に両手を押し当てて叫ばないように気をつけた。

「…いいです!凄いピッタリですよね?多少の調整したらもっと完成度上がるし、メイクとカツラで多分注目浴びるくらい仕上がり最高になりそう~!」

 私はすっかりコスプレファンの目線で、舐めるように裕樹さんを撫で回した。










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