26 / 59
親密さとは
秘密は簡単に
しおりを挟む
「私は美那のコスプレ見たことあるけどね。」
なぜか得意そうな顔で言う征一に、尚弥はちょっと訝しげな表情だ。
「…何で兄貴が美那のコスプレ姿見たことあるわけ?」
征一がニヤリと笑って、私の側に近づくと手を引いてソファに座らせた。テーブルにはお持たせの和菓子と緑茶が人数分セットされていた。そつなく支度してくれたのかと少し見直した私は、征一に微笑んでお礼を言った。
少し足を引きづりながらソファに戻って来た尚弥は、征一に口を尖らせて言った。
「お茶ありがと。っていうか、さっきの話。美那、俺にもコスプレの写真見せてちょうだいよ。ね?」
そんな可愛こぶりっ子してもダメなんだから。私はぐらつく意志を立て直すと、さっきから気になっていたことを指摘する事にした。
「コホン。あの、さっきからお二人とも私のこと美那って呼び捨てにしてるんですけど。私たちって、そんな呼び捨てするほどの関係じゃないですよね?」
私はこのままだと、なし崩しに自分のテリトリーに侵略されそうだと、杭を打ち込んだつもりだったのだけど…。これが悪手だったとは、空気が変わったことで気がついた。
征一がみたらし団子をひとつ齧り取りながら、口元についたタレを指先で撫で取った。…何だか仕草がエロいんですけど。
「…そうかな?私と美那は呼び捨てにしあってもいい、親密な知り合いじゃなかったかな?」
そう言ってこれ見よがせに、もう一度指の腹で自分の唇を撫でるものだから、私はハッと親密なキスをしてしまったあの時のことをまざまざと思い浮かべた。私が口籠もっていると、尚弥が眉を顰めて征一を見つめて言った。
「何だよ、兄貴。まさか兄貴がそこまで手が早いなんて思わなかったんだけど。…それをいうなら、俺も親密な知り合いでしょ?」
私は橘兄弟が、私とのキスの詳細まで言い合い始めるんじゃないかと青ざめて、慌てて言った。
「あ、あの!私お付き合いしてる方が居るんです!だから、呼び捨てとか困るんです!」
すると橘兄弟が二人して私の方を真っ直ぐに見つめた。征一がボソッと言った。
「もしかして、あのマッチョと付き合い始めたとか言うのか?」
私はなぜ知ってるんだろうと思いながらもコクコクと頷くと、ごく最近付き合い始めたと弁明した。ああ、なぜ私はこの兄弟に、こんな釈明する羽目になってるんだろう…。でも、それから二人に執拗な誘導尋問を受けて、私はうっかり彼氏(仮)である事を、この二人に話してしまっていた。
征一と尚弥はお互いに見つめ合ったが、征一が言った。
「じゃあ、私も彼氏(仮)になる。まだ美那がマッチョの事を好きかどうか決め兼ねてるんだろうから、俺たちと条件は一緒だろう?」
「もちろん、俺も立候補するよ。美波とハッキリさせてからね。それまで本命彼氏決定するの待っててくれない?ね?」
なぜか得意そうな顔で言う征一に、尚弥はちょっと訝しげな表情だ。
「…何で兄貴が美那のコスプレ姿見たことあるわけ?」
征一がニヤリと笑って、私の側に近づくと手を引いてソファに座らせた。テーブルにはお持たせの和菓子と緑茶が人数分セットされていた。そつなく支度してくれたのかと少し見直した私は、征一に微笑んでお礼を言った。
少し足を引きづりながらソファに戻って来た尚弥は、征一に口を尖らせて言った。
「お茶ありがと。っていうか、さっきの話。美那、俺にもコスプレの写真見せてちょうだいよ。ね?」
そんな可愛こぶりっ子してもダメなんだから。私はぐらつく意志を立て直すと、さっきから気になっていたことを指摘する事にした。
「コホン。あの、さっきからお二人とも私のこと美那って呼び捨てにしてるんですけど。私たちって、そんな呼び捨てするほどの関係じゃないですよね?」
私はこのままだと、なし崩しに自分のテリトリーに侵略されそうだと、杭を打ち込んだつもりだったのだけど…。これが悪手だったとは、空気が変わったことで気がついた。
征一がみたらし団子をひとつ齧り取りながら、口元についたタレを指先で撫で取った。…何だか仕草がエロいんですけど。
「…そうかな?私と美那は呼び捨てにしあってもいい、親密な知り合いじゃなかったかな?」
そう言ってこれ見よがせに、もう一度指の腹で自分の唇を撫でるものだから、私はハッと親密なキスをしてしまったあの時のことをまざまざと思い浮かべた。私が口籠もっていると、尚弥が眉を顰めて征一を見つめて言った。
「何だよ、兄貴。まさか兄貴がそこまで手が早いなんて思わなかったんだけど。…それをいうなら、俺も親密な知り合いでしょ?」
私は橘兄弟が、私とのキスの詳細まで言い合い始めるんじゃないかと青ざめて、慌てて言った。
「あ、あの!私お付き合いしてる方が居るんです!だから、呼び捨てとか困るんです!」
すると橘兄弟が二人して私の方を真っ直ぐに見つめた。征一がボソッと言った。
「もしかして、あのマッチョと付き合い始めたとか言うのか?」
私はなぜ知ってるんだろうと思いながらもコクコクと頷くと、ごく最近付き合い始めたと弁明した。ああ、なぜ私はこの兄弟に、こんな釈明する羽目になってるんだろう…。でも、それから二人に執拗な誘導尋問を受けて、私はうっかり彼氏(仮)である事を、この二人に話してしまっていた。
征一と尚弥はお互いに見つめ合ったが、征一が言った。
「じゃあ、私も彼氏(仮)になる。まだ美那がマッチョの事を好きかどうか決め兼ねてるんだろうから、俺たちと条件は一緒だろう?」
「もちろん、俺も立候補するよ。美波とハッキリさせてからね。それまで本命彼氏決定するの待っててくれない?ね?」
0
お気に入りに追加
156
あなたにおすすめの小説
【完結】身売りした妖精姫は氷血公爵に溺愛される
鈴木かなえ
恋愛
第17回恋愛小説大賞にエントリーしています。
レティシア・マークスは、『妖精姫』と呼ばれる社交界随一の美少女だが、実際は亡くなった前妻の子として家族からは虐げられていて、過去に起きたある出来事により男嫌いになってしまっていた。
社交界デビューしたレティシアは、家族から逃げるために条件にあう男を必死で探していた。
そんな時に目についたのが、女嫌いで有名な『氷血公爵』ことテオドール・エデルマン公爵だった。
レティシアは、自分自身と生まれた時から一緒にいるメイドと護衛を救うため、テオドールに決死の覚悟で取引をもちかける。
R18シーンがある場合、サブタイトルに※がつけてあります。
ムーンライトで公開してあるものを、少しずつ改稿しながら投稿していきます。
【R18】ひとりで異世界は寂しかったのでペット(男)を飼い始めました
桜 ちひろ
恋愛
最近流行りの異世界転生。まさか自分がそうなるなんて…
小説やアニメで見ていた転生後はある小説の世界に飛び込んで主人公を凌駕するほどのチート級の力があったり、特殊能力が!と思っていたが、小説やアニメでもみたことがない世界。そして仮に覚えていないだけでそういう世界だったとしても「モブ中のモブ」で間違いないだろう。
この世界ではさほど珍しくない「治癒魔法」が使えるだけで、特別な魔法や魔力はなかった。
そして小さな治療院で働く普通の女性だ。
ただ普通ではなかったのは「性欲」
前世もなかなか強すぎる性欲のせいで苦労したのに転生してまで同じことに悩まされることになるとは…
その強すぎる性欲のせいでこちらの世界でも25歳という年齢にもかかわらず独身。彼氏なし。
こちらの世界では16歳〜20歳で結婚するのが普通なので婚活はかなり難航している。
もう諦めてペットに癒されながら独身でいることを決意した私はペットショップで小動物を飼うはずが、自分より大きな動物…「人間のオス」を飼うことになってしまった。
特に躾はせずに番犬代わりになればいいと思っていたが、この「人間のオス」が私の全てを満たしてくれる最高のペットだったのだ。
後宮浄魔伝~視える皇帝と浄魔の妃~
二位関りをん
キャラ文芸
桃玉は10歳の時に両親を失い、おじ夫妻の元で育った。桃玉にはあやかしを癒やし、浄化する能力があったが、あやかしが視えないので能力に気がついていなかった。
しかし桃玉が20歳になった時、村で人間があやかしに殺される事件が起き、桃玉は事件を治める為の生贄に選ばれてしまった。そんな生贄に捧げられる桃玉を救ったのは若き皇帝・龍環。
桃玉にはあやかしを祓う力があり、更に龍環は自身にはあやかしが視える能力があると伝える。
「俺と組んで後宮に蔓延る悪しきあやかしを浄化してほしいんだ」
こうして2人はある契約を結び、九嬪の1つである昭容の位で後宮入りした桃玉は龍環と共にあやかし祓いに取り組む日が始まったのだった。
もしも○○だったら~らぶえっちシリーズ
中村 心響
恋愛
もしもシリーズと題しまして、オリジナル作品の二次創作。ファンサービスで書いた"もしも、あのキャラとこのキャラがこうだったら~"など、本編では有り得ない夢の妄想短編ストーリーの総集編となっております。
※ 作品
「男装バレてイケメンに~」
「灼熱の砂丘」
「イケメンはずんどうぽっちゃり…」
こちらの作品を先にお読みください。
各、作品のファン様へ。
こちらの作品は、ノリと悪ふざけで作者が書き散らした、らぶえっちだらけの物語りとなっております。
故に、本作品のイメージが崩れた!とか。
あのキャラにこんなことさせないで!とか。
その他諸々の苦情は一切受け付けておりません。(。ᵕᴗᵕ。)
王太子様には優秀な妹の方がお似合いですから、いつまでも私にこだわる必要なんてありませんよ?
木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるラルリアは、優秀な妹に比べて平凡な人間であった。
これといって秀でた点がない彼女は、いつも妹と比較されて、時には罵倒されていたのである。
しかしそんなラルリアはある時、王太子の婚約者に選ばれた。
それに誰よりも驚いたのは、彼女自身である。仮に公爵家と王家の婚約がなされるとしても、その対象となるのは妹だと思っていたからだ。
事実として、社交界ではその婚約は非難されていた。
妹の方を王家に嫁がせる方が有益であると、有力者達は考えていたのだ。
故にラルリアも、婚約者である王太子アドルヴに婚約を変更するように進言した。しかし彼は、頑なにラルリアとの婚約を望んでいた。どうやらこの婚約自体、彼が提案したものであるようなのだ。
よくある婚約破棄なので
おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。
その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。
言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。
「よくある婚約破棄なので」
・すれ違う二人をめぐる短い話
・前編は各自の証言になります
・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド
・全25話完結
【完結】訳あり追放令嬢と暇騎士の不本意な結婚
丸山 あい
ファンタジー
「私と結婚してほしい」リュディガーらしい真っ直ぐな飾り気のない求婚に、訳ありのキルシェは胸が締め付けられるほど苦しさを覚えた。
「貴方は、父の恐ろしさを知らないのよ……」
令嬢キルシェは利発さが災いし、父に疎まれ虐げられてきた半生だった。そんな彼女が厳しい父に反対されることもなく希望であった帝都の大学に在籍することができたのは、父にとって体の良い追放処置にもなったから。
そんなある日、暇をもらい学を修めている龍騎士リュディガーの指南役になり、ふたりはゆっくりと心を通わせ合っていく。自分の人生には無縁と思われていた恋や愛__遂には想い合う人から求婚までされたものの、彼の前から多くを語らないままキルシェは消えた。
彼女は、不慮の事故で命を落としてしまったのだ。
しかし、ふたりの物語はそこで終わりにはならなかった__。
相思相愛からの失意。からの__制約が多く全てを明かせない訳ありの追放令嬢と、志を抱いた愚直な騎士が紡ぐ恋物語。
※本編は完結となりますが、端折った話は数話の短いお話として公開していきます。
※他サイト様にも連載中
※「【完結】わするるもの 〜龍の騎士団と片翼族と神子令嬢〜」と同じ世界観で、より前の時代の話ですが、こちらだけでもお楽しみいただける構成になっています。
今さら、私に構わないでください
ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。
彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。
愛し合う二人の前では私は悪役。
幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。
しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……?
タイトル変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる