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親密さとは

秘密は簡単に

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 「私は美那のコスプレ見たことあるけどね。」

 なぜか得意そうな顔で言う征一に、尚弥はちょっと訝しげな表情だ。

「…何で兄貴が美那のコスプレ姿見たことあるわけ?」

 征一がニヤリと笑って、私の側に近づくと手を引いてソファに座らせた。テーブルにはお持たせの和菓子と緑茶が人数分セットされていた。そつなく支度してくれたのかと少し見直した私は、征一に微笑んでお礼を言った。


 少し足を引きづりながらソファに戻って来た尚弥は、征一に口を尖らせて言った。

「お茶ありがと。っていうか、さっきの話。美那、俺にもコスプレの写真見せてちょうだいよ。ね?」

 そんな可愛こぶりっ子してもダメなんだから。私はぐらつく意志を立て直すと、さっきから気になっていたことを指摘する事にした。

「コホン。あの、さっきからお二人とも私のこと美那って呼び捨てにしてるんですけど。私たちって、そんな呼び捨てするほどの関係じゃないですよね?」

 私はこのままだと、なし崩しに自分のテリトリーに侵略されそうだと、杭を打ち込んだつもりだったのだけど…。これが悪手だったとは、空気が変わったことで気がついた。


 征一がみたらし団子をひとつ齧り取りながら、口元についたタレを指先で撫で取った。…何だか仕草がエロいんですけど。

「…そうかな?私と美那は呼び捨てにしあってもいい、親密な知り合いじゃなかったかな?」

 そう言ってこれ見よがせに、もう一度指の腹で自分の唇を撫でるものだから、私はハッと親密なキスをしてしまったあの時のことをまざまざと思い浮かべた。私が口籠もっていると、尚弥が眉を顰めて征一を見つめて言った。


 「何だよ、兄貴。まさか兄貴がそこまで手が早いなんて思わなかったんだけど。…それをいうなら、俺も親密な知り合いでしょ?」

 私は橘兄弟が、私とのキスの詳細まで言い合い始めるんじゃないかと青ざめて、慌てて言った。

「あ、あの!私お付き合いしてる方が居るんです!だから、呼び捨てとか困るんです!」

 すると橘兄弟が二人して私の方を真っ直ぐに見つめた。征一がボソッと言った。

「もしかして、あのマッチョと付き合い始めたとか言うのか?」


 私はなぜ知ってるんだろうと思いながらもコクコクと頷くと、ごく最近付き合い始めたと弁明した。ああ、なぜ私はこの兄弟に、こんな釈明する羽目になってるんだろう…。でも、それから二人に執拗な誘導尋問を受けて、私はうっかり彼氏(仮)である事を、この二人に話してしまっていた。

 征一と尚弥はお互いに見つめ合ったが、征一が言った。

「じゃあ、私も彼氏(仮)になる。まだ美那がマッチョの事を好きかどうか決め兼ねてるんだろうから、俺たちと条件は一緒だろう?」

「もちろん、俺も立候補するよ。美波とハッキリさせてからね。それまで本命彼氏決定するの待っててくれない?ね?」






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