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僕がキス魔ですか

不穏な空気

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斎藤はそう言うと、ぼんやりしていた僕の足を払い僕はドゥっと畳に倒れた。
そして唖然とする僕に背を向けると助け起こしもせずに遠ざかって行った。


「大丈夫か。ほら、手を出せ。」

僕がぼんやり斎藤の背中を見送っていると、和也が手を差し出してきた。
僕が和也の手を掴むとぐいっと引っ張られて、僕は和也に抱き止められていた。


「…あいつ、何?」

「ああ、斎藤か?お前は知らないだろうけど、斎藤の副会長好きは一部では有名な話なんだ。
相手にされてるかどうかは知らないけどな。
前に言ったろ?面倒なやつも居るって。斎藤はその手の奴なんだ。」


僕は和也を見上げて言った。

「え?じゃあ、和也は斎藤と関係した事あるって事?」

和也はそっぽを向くとモゴモゴ言った。

「…そんな昔の事言われてもどうしようもないけど。まぁ面倒な奴なのは…そうだったから。
それとも、俺のそうゆうの気になるわけ?」

ん?急に和也から甘い雰囲気が漂い出てきた気がする…。
あれ?何で僕和也の腕の中に居るんだ⁉︎

「全然!気にならない!」

僕は和也を押し退けると、次の乱取り相手を探しに行った。


乱取りが終わると、先生は簡単に勝ち抜き戦を行うと言い出した。
僕らは興奮と不安で顔を見合わせて、ザワザワと騒いでいた。

僕はさっきまでの乱取りで、そこそこいけるんじゃないかと自信を持っていた。
持ち前の俊敏さと運動神経、多少の護衛術の嗜みが活きてるように思えた。


「やる気満々だな?ケンケン。」

いつの間にか隣にタクミがいた。
こいつはほんとに気づくと近くにいる。結構大柄だし、存在感あるのに行動が密やかというか。
忍び寄ってくる猫科の大型獣という感じで、油断できないよ。


「まーね、タクミに潰されない様に頑張らないと。」

「おまっ、それは言うなよ。バスケの時は不可抗力だっての。」

「ふふ。ジョーダンだよ。いや、マジで柔道はいける気がするんだよね。」

僕は心持ち高ぶった気分でタクミを横目で見て言った。


「…うぐっ、はぁ。ケンケンのその顔やばいから。本人が無自覚ってほんとタチ悪いよ。
お前を腕の中に押し込んで、むちゃくちゃにキスしたくなるっての。」

タクミは顔を赤らめて僕をギラギラした目で見つめながら、両手をワキワキさせた。


「ヒィ!やばいって!タクミ怖すぎ!誰かタスケテっ!」

僕が半分冗談、半分本気でタクミに掴まれた腕を振り回してると、急に拘束が取れた。

「…何やってんの。タクミがやると冗談にならないから。
ほら、漆原はこっち来て並んで。」

そう言うと、僕の手を掴んで佐藤が歩き出した。


「ケンケン後で寝技しような~。」

タクミの戯言に送られながら、僕は黙って佐藤に引かれていった。



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