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受験生
僕の進路
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「キヨくん!受かったよ!」
僕は一番に結果をキヨくんに報告した。大和大学の社会学部の指定校を取れた僕は、早々に受験戦線から降りる事になった。放課後、その事実とちょっとしたお祝いを、ファミレスでする事になった。
二人でファミレスに入るのは初めてだった。そもそも友人たちとファーストフードへは行くけれど、ファミレスはあまり利用しない。女子高生が多くて居心地が悪いからだ。
今日はお祝いも兼ねていたので、目の前のデラックスパフェを目的に来たんだ。僕が思わずニンマリしていると、キヨくんは呆れた顔でアイスコーヒーを飲んで言った。
「俺も甘いものは嫌いじゃないけど、だからってそれ?」
僕は口元が緩むのを止められなくて、バナナにチョコレートソースを絡めて口に放り込んだ。美味しいっ。
「ファミレスじゃないと、これは無いでしょ?一応進学先の目処が立ったから、お祝い。ふふ。」
僕がそう言うと、キヨくんは手元のイチゴミルフィーユをフォークで切ると器用に口元へ運んだ。キヨくんが、僕に付き合って甘いものを食べてくれているのが、キヨくんの優しさの気がして、少しくすぐったい気持ちになる。
それにしても放課後の時間というのもあって、周囲は女子高生や女の人たちばかりで、数人のサラリーマンや、僕たち二人、向こうの席に大学生らしき男女のグループと、男性客が本当に少ない。
自然、カッコいい眼鏡男子のキヨくんは注目の的で、チラチラ、ヒソヒソと僕たちのテーブルを盗み見られていて、パフェが食べたかったとは言え、この時間は失敗だったかと落ち着かなかった。
「B組の神崎が玲と同じ所狙ってたみたいだ。多分玲の方が評定が良かったんだろう。こればっかりは評定ポイントだけだからな。良かったな。おめでとう。」
僕はにっこり笑って言った。
「大和大の社会学部は横手線に有るんだよ。ちょっと家から通うのは大変かも。」
そう言ってパフェから目を上げて、チラッとキヨくんを見つめると、キヨくんは少しフリーズして言った。
「…俺も横手線にある国立狙うつもりだから。絶対合格する。」
僕はふふと笑って、メロンをパクリと食べた。僕たちは沢山言葉は要らなかった。僕は親を説得できる大学を選んだ。後はキヨくんだ。
空っぽのケーキ皿にフォークをカチリと置いて、キヨくんは大きくため息を吐いた。
「あー、マジで絶対合格しないと!玲だけ一人暮らしになったら、心配過ぎる。大学で知り合う奴に漬け込まれそうで。」
僕のまだ始まっても居ない未来を心配しているキヨくんが可笑しくて、僕はクスクス笑って言った。
「僕も、取り消しにならないように、品行方正で過ごさないとね?これから面接やら、多分、推薦用のテストもあるだろうし。僕も頑張るから、キヨくんも頑張って。僕が出来ることは手伝うから。」
するとキヨくんは少し悪い顔をして、僕に顔を寄せて小さな声で言った。
「じゃあ、合格祝いは二人で温泉旅行。…ご褒美くれるんだろ?」
僕はこんな場所で、そんな仄めかしを受けて、本当にドキドキして顔が熱くなって堪らなかった。もう、勘弁して!
僕は一番に結果をキヨくんに報告した。大和大学の社会学部の指定校を取れた僕は、早々に受験戦線から降りる事になった。放課後、その事実とちょっとしたお祝いを、ファミレスでする事になった。
二人でファミレスに入るのは初めてだった。そもそも友人たちとファーストフードへは行くけれど、ファミレスはあまり利用しない。女子高生が多くて居心地が悪いからだ。
今日はお祝いも兼ねていたので、目の前のデラックスパフェを目的に来たんだ。僕が思わずニンマリしていると、キヨくんは呆れた顔でアイスコーヒーを飲んで言った。
「俺も甘いものは嫌いじゃないけど、だからってそれ?」
僕は口元が緩むのを止められなくて、バナナにチョコレートソースを絡めて口に放り込んだ。美味しいっ。
「ファミレスじゃないと、これは無いでしょ?一応進学先の目処が立ったから、お祝い。ふふ。」
僕がそう言うと、キヨくんは手元のイチゴミルフィーユをフォークで切ると器用に口元へ運んだ。キヨくんが、僕に付き合って甘いものを食べてくれているのが、キヨくんの優しさの気がして、少しくすぐったい気持ちになる。
それにしても放課後の時間というのもあって、周囲は女子高生や女の人たちばかりで、数人のサラリーマンや、僕たち二人、向こうの席に大学生らしき男女のグループと、男性客が本当に少ない。
自然、カッコいい眼鏡男子のキヨくんは注目の的で、チラチラ、ヒソヒソと僕たちのテーブルを盗み見られていて、パフェが食べたかったとは言え、この時間は失敗だったかと落ち着かなかった。
「B組の神崎が玲と同じ所狙ってたみたいだ。多分玲の方が評定が良かったんだろう。こればっかりは評定ポイントだけだからな。良かったな。おめでとう。」
僕はにっこり笑って言った。
「大和大の社会学部は横手線に有るんだよ。ちょっと家から通うのは大変かも。」
そう言ってパフェから目を上げて、チラッとキヨくんを見つめると、キヨくんは少しフリーズして言った。
「…俺も横手線にある国立狙うつもりだから。絶対合格する。」
僕はふふと笑って、メロンをパクリと食べた。僕たちは沢山言葉は要らなかった。僕は親を説得できる大学を選んだ。後はキヨくんだ。
空っぽのケーキ皿にフォークをカチリと置いて、キヨくんは大きくため息を吐いた。
「あー、マジで絶対合格しないと!玲だけ一人暮らしになったら、心配過ぎる。大学で知り合う奴に漬け込まれそうで。」
僕のまだ始まっても居ない未来を心配しているキヨくんが可笑しくて、僕はクスクス笑って言った。
「僕も、取り消しにならないように、品行方正で過ごさないとね?これから面接やら、多分、推薦用のテストもあるだろうし。僕も頑張るから、キヨくんも頑張って。僕が出来ることは手伝うから。」
するとキヨくんは少し悪い顔をして、僕に顔を寄せて小さな声で言った。
「じゃあ、合格祝いは二人で温泉旅行。…ご褒美くれるんだろ?」
僕はこんな場所で、そんな仄めかしを受けて、本当にドキドキして顔が熱くなって堪らなかった。もう、勘弁して!
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