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カップルの定義

後輩の鈴木君

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「橘先輩、お話があるんですけど、ちょっと良いですか。」


僕の目の前で顔を赤らめているのは、確か文化祭の時に、僕にチョコバナナを食べさせてくれた後輩じゃないだろうか。今日は塾が無いので自習室で勉強した後、一人寂しく帰る時に声を掛けられたんだ。キヨくんは塾の模試があるからと、今日は一緒じゃなかった。

部活帰りらしい後輩は、話があると声を掛けてきた。僕はキヨくんに、知らない人と二人だけになっちゃダメだと言われていた。けれど、全然知らない人でも無いし、思い詰めた表情の後輩を放ってもおけず、案外人の多い、近くの広場でなら話を聞けるかと連れ出した。


運動部らしい後輩は、横に並ぶとキヨくん並みに背が高くて威圧感もあるけれど、恥ずかしげな表情は何だか大型犬を思わせた。

「橘先輩。俺、文化祭のあの時から、橘先輩のこと忘れられなくなっちゃって…。好きです!男から告られてキモいって思われるかもしれませんけど!俺も男にこんな気持ちになったのなんて初めてで…。自分の気持ち押し付けるの狡いって分かってるんですけど、もう我慢できなくて…。」

そう、突然熱い眼差しで僕に告って来た。僕はびっくりして目を丸くしたけれど、苦しげな後輩の言葉に、何だかそうじゃないって感じてしまった。


「あ、あの。鈴木くん…だったよね?」

僕に名前を呼ばれた人懐っこい感じの彼はハッと顔を上げて嬉しそうに笑った。

「あ、ハイ!俺名前も言わないで。テンパってますね。俺、きっかけはチョコバナナの時からですけど、自販機で奢って貰った時から先輩の空気感に癒されてたって言うか。凄いタイプなんです。先輩なら、何か男とかどうでも良い気がして。」

僕は首を傾げて、鈴木くんに尋ねた。


「鈴木君は、元々女の子が好きなの?」

僕の質問が意外だったのか、鈴木くんはポカンとしていたけど、恥ずかしそうに頷いて答えた。

「はい。中学でも彼女がいたし、高校一年の時も女子高の子と付き合ってました。でも、橘先輩って、性別を超えてるって言うか。気持ち悪いですよね…。」

僕はクスッと笑って言った。


「鈴木君の分類でいくと、僕も気持ち悪い部類に入るのかな。…僕好きな人がいるんだけど、その、男だから。」

思わず言ってしまってから、僕はハッとして口を押さえた。ここまで言うつもりはなかったのに。恐る恐る、隣花壇の縁に並んで座っている鈴木君の顔を見上げると、驚いた顔で僕を見つめる鈴木君が居た。

「それって、本当ですか?橘先輩、男が好きなんすか?」






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