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幼馴染再び

ファーストキス

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柔らかなものを唇に感じて、僕は目を見開いた。え?目の前には同じように縁なし眼鏡の奥から、目を見開いたキヨくんが僕を見つめていた。

僕は慌てて顔を引き剥がすと、恐ろしく盛り上がっている観衆を前にどうして良いか分からず、思わず抱き上げられたキヨくんの肩に顔を埋めてしまった。

何か三浦君が言っていたけれど、もう僕は早く舞台から引っ込みたくてしょうがなかった。それから直ぐに歓声と共に僕たちが移動する気配がして、耳元でキヨくんの声がした。


「…玲、もう裏に引っ込んだから。」

僕がハッとして顔を上げると、キヨくんが僕を覗き込んでいて、僕は顔の近さにまたびっくりしてあわあわとキヨくんの腕の中から飛び降りた。

ニヤニヤした三浦君が、そんな僕たちの肩に手を回して弾むような声で言った。

「もう、最高の出来なんだけど。これで優勝しなかったら、もう何も信じられないよ!橘、よく頑張ったな。まぁ口にチュウは想定外だけど、大丈夫だろ?」


そう言って三浦君が僕を覗き込んだから、僕は慌てて大丈夫だって答えるしかなかった。全然大丈夫じゃなかったけど。三浦君は僕の顔を見て、あちゃーという顔をしてキヨくんに言った。

「橘かなりショックだったみたい。顔真っ赤だ。委員長面倒見てやって。俺さっきからトイレ行きたくて!結果までには戻るから待ってて!」


残された僕たちは主催者に言われて、舞台の裏口に続く廊下に作った仮設待機場所へと誘導された。周囲の女装コンテストの参加者は僕たちのあれこれを見ていなかったみたいで、特に何か言われるような事は無かった。

ホッとした僕がキヨくんを見上げると、キヨくんはこっちと言いながら僕の腕を掴んで待機場所の一番奥へ歩いて行った。皆を背中にして、僕を見下ろしたキヨくんはボソリと呟いた。


「…大丈夫?」

僕はハッとして、キヨくんを見つめて言った。

「ごめん!僕が目をつぶってたから。本当は三浦君にほっぺたにしてって言われてたんだけど。僕が悪いから!」

するとキヨくんは、眼鏡を指先で押し上げて視線をずらすと、僕の耳元に唇を寄せて囁いた。

「…別に嫌じゃなかった。玲可愛いし。でも、玲、初めてだったかなって。」


そう言って僕の顔を見たキヨくんは、意地悪そうな顔をして笑った。僕はキヨくんの余裕っぷりに少しイラついて、口を尖らせて思わず憎まれ口を叩いた。

「どうせ僕はキヨくんと違って、初めてでしたよ。」

するとキヨくんは急に僕を真剣な顔で見つめて言った。

「俺も初めて。俺のファーストキス、玲だ。」
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