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王都へ

狙われたシン

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「ケブラ、では今この国で噂になっている従騎士が、先の戦の白魔法の使える少年騎士なのだな?」

私は目の前のマントを羽織った御仁に頷いた。

砦近くの戦での敗北の後、少年騎士や、白魔法については全く詳細が分からなかった。
分かったのは砦に潜ませていた情報屋とことごとく連絡を取れなくなったと言うことだけだった。


しかしここに来て王都にいる情報屋から耳寄りな話を聞いた。
王都に戻ったフォーカス筆頭参謀の従騎士の噂だった。

その従騎士はこの世界のものではない見かけをしており、弓の使い手だという。
私はカチャカチャと鍵がハマった時の様な閃きを感じた。少年騎士、弓隊、この世界にない魔法。

案の定、調べれば調べるほど、その従騎士が当たりとしか思えなくなった。
砦に戻ってからより、気が緩んでいるこの王都の方が事を行うのは簡単だろう。

我ら、夜の国ライデンの密偵たちは今夜この宿に集まっていた。


「しかしながら殿下、今更ですが敵国に殿下が潜入するのは少し危ないのではございませんか?」

私は眉を顰めて、マントで顔が隠れているフォックス第二王子に話しかけた。

フォックス殿下はマントのフードを下ろすと、その赤く見えるトパーズ色の瞳をギラつかせて言った。

「砦に行くよりこちらで方をつける方が早いと思ったのだ。白の魔法は魔を祓うそうだな。それでは中々こちらの腕効きも実力を出しきれまい。私の魔法は特殊だからな、その従騎士に対処出来よう。」

私は殿下の前に膝まづいて言った。

「御意。では今日従騎士を連れて参ります。こちらでお待ちになっていてください。行くぞ!」


私達はこの国の人間として潜入していたので、計画を実行する事にした。

従騎士は今日フォーカス筆頭参謀とは別行動で、訓練場へ向かう事が分かっていた。そこに訓練場の変更と称して別の場所へ連れ出す算段だ。そのためにこの国の騎士や兵士の装備を身につけていた。



「シン殿、私は黒騎士団、第三弓隊の者です。今日の訓練場所が変更になりましたのでお連れします。」

美しい芦毛の馬に乗った従騎士は、真っ黒な瞳を見開くと息を呑んで、立ち塞がった私達から縫う様に踵を返すと迷う事なくあっという間に走り出した。

私達は一瞬呆気に取られたものの、直ぐに追いかけた。このままいくと騎士団の訓練場に逃げ込まれると思った私は、黒魔法を唱えると従騎士に向かって短剣を投げた。

すると一瞬痺れる様な真っ白なバチバチという光が目の前で弾けたと思うと短剣が地面に落ちた。

殿下の言う通りに我らの魔法では効き目がないのかも知れない。この好機を逃したら次のチャンスはいつになるか分からない。私は力づくで従騎士を捕らえようと、馬に鞭を入れて従騎士に追い縋った。





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