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激闘 編

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「俺の名前は、生来いくる。 小鳥遊たかなし 生来いくる

君たちの流儀風に呼ぶのなら、生来いくる小鳥遊たかなし

先に言っておくけど。 俺に敵対の意志はない。

信じる信じないは、そちらの自由だがね。」

二人の女性は、警戒しつつも、お互いの視線を交わす。

「姉さん・・・。」

小さな声で、リンデがリーゼに言う。

「多分、大丈夫・・・。 彼に殺す気があるのなら、とうに私たちは殺されている。」

「あぁ~。 安心しろ。とは言わない。 なんせ、俺自身も、君たちが、敵か味方かわからないんだ。

が。 敵対しないなら。こちらからは攻撃はしない。それだけは約束しよう。

出来たら、どうして、こうなっているのか説明をしてくれると有り難い。」

「判りました。 どのみち、このままでは状況は変わらないので。

私たちの事情を御話し致します。」

そう言って、リーゼが語りだす。

「私たちは、ラスフォニア王国では精霊の巫女と呼ばれています。」

そう言って、生來いくるの顔を見るリーゼ。

生來いくるは、特に何も言わずにリーゼを見ている。

「精霊の巫女とは、精霊と言葉を交わし。精霊の要望を聞き。

それを王に伝える事で精霊の望むものを叶える代わりに、人の要望を精霊に叶えて貰う事を生業なりわいとしています。

ですが、1月ほど前です。 精霊たちが騒ぎ始めたかと思うと。

精霊の王が、何者かによって封印されてしまいました。」

そう言って、リンデが両腕で大事そうに抱えている灰色の球を見る。

「そして、封印された精霊王を返す条件に。 私と姉に、一つの条件を言ってきました。」

リンデが、封印された精霊王の球を抱きしめながら言う。

「ある者と戦い。気を引いてほしいと。

気を引くだけで良い。 後は自分がやるからと。」

そう言って、封印された精霊王の球を見るリンデ。

「私たちとしては、精霊王様が無事に帰って来るならと承諾いたしました。

誠に申し訳ございません。 まさか、他の地の精霊を殺してしまうとなどと。」

そう言って、リーゼが頭を深く下げる。

それを見て、リンデも頭を下げる。

そう。リーゼも、リンデも、思い違いをしていた。

次元の亀裂から出てきた瞬間に対峙して、すぐに相手が精霊だとは理解していた。

その事から、悪くて封印。 良くて精霊王を引き合いに出しての交渉だろうと。

だが。まさか。 精霊を殺してしまうなどと思いもよらなかった。

今、リンデの腕の中にある精霊王の球も。 封印ではなく、殺す事ができたのだ。 あの少年は。

「安心しろ。 精霊は死んでも存在自体は消滅しない。

まぁ、次の大精霊が産まれるのに、多少の時間は掛かるけどね。」

(まぁ。その多少の時間ってのが、数百年単位だけど。)

生來いくるの言葉に、微妙な笑みを向けるリーゼとリンデ。

「それで、君たちはどうする? 言っておくけど。 元の世界に帰りたいとかは無理だ。

俺も、次元を渡って他の世界ほしに行く次元移動はできるけど。 行った事も無い次元の世界ほしには渡る事は出来ない。

君たちにも、次元を渡って、元の世界に帰えれるとも思えないのだけど。」

「はい。その事で、悩んでいました。

てっきり、連れて来られたので。 要件が終われば、帰られると思っていたのですが。

置き去りにされてしまいました。」

シュン、と言う感じの表情で地面を見るリーゼ。

「ふうぅ。」

生來いくるは、大きなため息をつくと。

「提案がるんだが。」

生來いくるの言葉に、二人の視線が生來いくるに向けられる。

「この世界ほしで、骨を埋める気は無いか?」

「それは、この世界で、私たちに生きて行けと?」

「そう言う意味だ。 君たちが、この国の法に背かない限りは、普通の人としての生は送れるように手配してもらおう。

勿論。君たちが、元の世界ほしに帰るれるようには努力すけど。

その可能性は、ゼロに近いと思ってくれ。」

「姉さん。」

「リンデ。」

「姉さん。 承諾しましょう。 少なくとも、このままの状況よりは多少はマシだと思う。」

「そうね。 どのみち、このままじゃ。 良くて自分の身体を売っての娼婦。 それか犯罪者か奴隷。 最悪、野垂れて死ぬかのどれかだし。」

二人とも、理解しているようだ。

宛てもコネもない上に、自分たちの常識も通じるかどうかも怪しい場所で生きて行くのは至難の業だと。

「転移するのに、身体に触れるが構わないか?」

生來いくるの言葉に二人とも頷いて返す。
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