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ユメ

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「あんた、頭に白いのが一杯あるわね。 カビが生えてるんじゃないの?」

「うわっ! コイツ頭にカビが生えてるっ! エンガチョッ!」

「きったないわね~! 寄らないでっ!」

「カビが寄ってくるんじゃねぇ!」

「いたっ!」

「カビがいたがってるんじゃねぇ! 近寄るなっ!」

「いたいっ!」

(だったら、殴りに来ないでよっ!)

___________


「殴られたら! 殴り返してこいっ! 泣いて帰ってくるなっ!」

「ゴメンなさい! ゴメンなさい!」

(やだっ! もう辞めてよっ! 痛いっ!)

同級生に殴られて、泣いて帰ってきたのが気に食わないらしく親父に殴られる。

___________


「あんたって子はっ! 少しは丸山さんの淳二君を見習いなさいっ! どんどん成績が上がっていっているのに!」

「ゴメンなさい! ゴメンなさい!」

(算数苦手なのに・・・国語は僕の方が上なのに・・・。なんで、淳二君と比べるのさ・・・。)


___________


「クッ!」

「少し叩かれたくらいで、大げさに痛がってんじゃねえよ!」

「うぐっ!」

「津川菌とカビっ! 菌同士でちょうどいいなっ!」

「うっ・・・。」

「大丈夫・・・じゃないね・・・。ゴメンね・・・。」

「・・・気にしないで。」

(クソッ! 群れなきゃ何も出来ない癖にっ!)

___________

「転校生の、廣垣ひろがき 尚子なおこさんと、桂子けいこさんだ。 みんな仲良くするように。」

(双子の姉妹かぁ。 可愛いなぁ。 妹の桂子けいこさん・・・・。)

___________

「あなた、虐められてるの?」

「そうだよ。 だから廣垣さんも、僕に関わらない方が良いよ。 君も苛めの的にされるから。」

___________

「お母さんっ! お兄ちゃんが怪我してる!」

「絆創膏でも貼っておけば置けば治るから。」

「お父さんっ!お兄ちゃんが!

「子供同士の喧嘩に、親が口出しするのものじゃないから。」

ひとみ。心配すんな。 大丈夫だから。」

___________

「へぇ、カビの妹か。 妹にもカビが生えてるのか? あははは。」

「カビの妹も、カビって事か!」

「カビ! カビ! カビ!」

「カビじゃないもん! お兄ちゃんも私も、カビなんて生えてない!」

「妹カビが、生意気いってるんじゃねえぇよ!」

「きゃっ!」

「おまえらあああああ! 瞳になにやってんだああああああっ!」

___________

「・・・と言う事情で。 息子さんが、相手方の、お子さんに怪我をさせてしまったので。 ご両親からの苦情が来ておりまして。」

「誠に申し訳ございません。 今後、このような事が無いように、キチンと言い聞かせておきますので。

相手側の方にも、後から、お詫びに伺わらせていただきます。」

「お兄ちゃんは! 私を庇って!」

「瞳は黙ってなさいっ!」

「お兄ちゃんは悪くないっ!」

___________

「反省するまで、そこに入ってろっ!」

「お父さん! お兄ちゃんは私を庇って・・・」

「お前は黙ってなさい! いいか! 反省したと思うまで、物置から出すんじゃないぞっ!」

___________

「普段は、殴られたら殴り返せって言ってるくせに・・・・。」

________

「腹減ったなぁ~・・・。 喉も乾いたし・・・・。 暑い・・・。」

_____

(もう・・・・出して・・・・)

__

(ごめん・・・)


 * * * * * *


「イクル。 イクル。」

身体を揺さぶられながら、名前を呼ぶ声が聞こえて目を開ける。

「う・・ん・・・? レイラ?」

「大丈夫か? うなされていたぞ。」

「あ・・・あぁ。 ちょっと夢を見てただけだ。 大丈夫だ。 すまんな。」

「何がだ?」

うるさかったんだろ?」

「あほか。」

「てっ。」

軽く頭を小突かれた。

「仲間を心配するのは当然だろう。」

「そりゃ、どうも。 で、何で俺のテントにレイラさんが居るの?」

「夜這いをして、既成事実を作ろうかと思ってな。」

口角を上げてニヤリと笑うレイラ。

「それ、割と洒落に為ってないんだけど!? レイラに組み敷かれたら、手も足も出ないからね俺!?」

「冗談だ。1割はな。」

「9割は本気!?」

「シャルも喜ぶぞ。」

「っく! そこで娘を引き合いに出すのはズルいだろう。」

「だが事実だ。」

「はぁあああ・・・・。 まったく、レイラと言い。ファルナと言い。 こんなオッサンの何処が良いのやら・・・・。」

「優しい所。 周りに気を使えるところ。 誰かの為に怒れるところ。 子供を大事に思ってくれるところ。 1人の女性を思ってくれるところ。」

「まて、まて、まて、まて! 何だそれは!?」

「お前の良い所だ。 何だったら、もっと言ってやろうか?」

「辞めてくれ・・・。 恥ずかしくて悶え死にそうだわ・・・。」

「貴族としては、子を沢山 残さないといけない事から考えると。私は貴族としては失格なのだろうがな。

だが、1女性としては。 やはり、好きに為った男性には、自分だけを見つめていて欲しいものだ。

それが、お前の美徳でも在るんだから、恥ずかしがらずに誇っても良いと私は思うぞ。」

「・・・・・・。」

「で。 何をうなされていた。」

「言っただろう。 夢を見てただけだって。」

「話せない内容なのか?」

「俺の、子供の頃の夢だよ。」

「それは興味が在るな。」

「物好きだねぇ。」

「なに。 話すだけでも、結構 気が楽になる時も有るものだぞ。」

「はは、確かにな。」

「夜明けまでには、まだ少し時間が有る。 話せ。」

「おーけー。 俺の昔話の愚痴でも聞いてくれ。」
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