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と、ある勇者の一日

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「じゃな、彰人あきと!」

「うん。また明日ね。」

友達と別れて、家の玄関から中に入って、自分の部屋に向かう。

制服を脱いで、パーカーを着て、ジーパンを履いた。

帰宅部で、いつも通りに帰宅して、PCの電源を入れて、今夢中に為って居るMMORPGのULTIMATEアルティメットSKILLスキルONLINEオンラインをプレイする為に気合を入れる。

今日はULTIMATEアルティメットSKILLスキルONLINEオンラインのメンテナンスも兼ねた、アップデートの日。

新大陸が、どんな所かワクワクしながらアップロードされるのを待っていると。

一瞬、グラと揺れた。

そして、急に座っている椅子ごと足元が光りだしたと思ったら、アニメやゲームで良く見る魔法陣のような物が現れていた。

「え?」

そして、次の瞬間には、真黒な空間に、椅子に座ったままの格好で僕は宙に浮いていた。

ただし。座ってたはずの椅子は無い。

「意外に、落ち着ておるのう。」

目の前に、白い霧が現れて、人型の姿になる。

目鼻口や、髪などは分からない。

聞こえた声は、年老いた男性の声に似ている。

「いえ、十分に驚いています。 驚き過ぎて、僕の驚愕メーターは3周くらい回っているかもです。」

「そうか。で、遠山とおやま彰人あきと・・・・。」

「お断りします。」

「・・・まだ何も言ってないのじゃが?」

「何も言ってないと言うのは間違いですね。 僕の名前を言ってましたので。」

「でじゃ。 おぬし・・・」

「お断ります。」

「・・・・。」

「どうせ、異世界転生か異世界転移でもして、勇者か、勇者の仲間。 もしくは、それに近い物になって。

魔王を倒せとか、世界を救えとか言うのでしょう?

丁重に、お断りさせていただきます。 と、言う訳なので。 僕を地球に返してください。」

あの魔方陣的な物を見て、ラノベやアニメを見ていれば、おのずと答えは出てくる。

あいにく、僕は異世界で、ヒャッハァー! などしたくは無い! ゲームの中で、ヒャッハァー!をしたい派なんです!

「話を聞いてもくれんのか?」

「はい。聞く気は無いです。 

これが、先に何かしらのアクションでもあって、僕に知らせてくれていたなら別ですが。

何のアクションも無しに、こんな場所に連れてこられて、勇者とか、それに類似するものに為れと言われても納得できませんので。

だから、即刻! 僕を地球の自分の部屋に戻してください。

僕は、ULTIMATEアルティメットSKILLスキルONLINEオンラインをプレイしたいのです!

今日から、アップデートで、新大陸が追加されるので楽しみにしていたんです。

訳の分からない事に巻き込こまないでくれますか?」

「・・・辞めて置いた方が良いぞ。」

「は?」

「だから、お主を地球に戻す事は出来ん事は無いのだが、戻らない方が良いぞ?」

「なんで?」

「それはの・・・・。」

この神様カルドラの話では。

なんでも、僕をこの空間に転移させた時に、僕の居た場所。

つまり、地球の僕の住んでいた地方に地震が起こって。

それに慌てた僕が椅子の脚に、足の小指をぶつけて痛がっていた所に、本棚が倒れてきて僕は死亡する予定だったとの事。

そこを、地球側の神様と相談して、僕が死ぬタイミングで、僕をカルドラ様が転移させる許可をもらったとの事。

で、話の内容は。やっぱりと言うか。 魔王を倒してくれって事だった。

「話は理解できました。」

「理解してくれたか。」

「ええ。 仮にですが、僕が地球に戻った場合はどうなりますか?」

「まぁ、普通に棚に押しつぶされ死亡している状態になるな。」

「つまり、僕に選択肢は無いと言う訳ですね。」

「死ぬのが嫌なら、無いと言う事に成るの。」

「一つ聞いても?」

「なんじゃ?」

「今の僕は、まだ生きている状態なんですよね?」

話では理解しているが、一応確認の為。

「そうじゃ。 死ぬ前に転移させたからの。」

「選択肢が在る様で無いのは、選択ではなく脅迫と言いますよ。カルドラ様。」

「で。二社一択なのだが、どうするのかの?」

実際に戻って確認すると、死亡扱いとかは嫌なので、もはや選択肢は決まっている。

「判りました。行きます。それしか、選択肢は無いので。」

「ほほっ。すまんのう。 代わりと言っては何だが。 お主には、向こうの星での全ての種族の言語理解能力と読み書きの能力。

基本的身体能力の上昇。 それと、全魔法属性への適応能力を付けておこう。」

「ちなみに、その星の名前は?」

「フォーリア。 惑星フォーリアと、儂は呼んでいる。」

「呼んでいる?」

「向こう側の星の住人たちは、星の名前も知らんよ。」

「なぜ?」

「そこまで、科学的な文明が発達していないからじゃ。」

「あぁ~、先ほど言ってた、全魔法属性ってのに関係してたりしてます?」

「うむ。 フォーリアでは、科学文化ではなく、魔法文化が発達している。」

「フォーリアと言う星での文明レベルを地球で言えば?」

「そうじゃぁのぅ。 中世ヨーロッパや、日本で言う所の江戸時代の中頃~末期手前と言った所かの?」

「あぁ~、何となくわかります。 魔法で何でもできちゃうから。科学が発展しないってことですね。」

「そういう事じゃ。」

まぁ、どこのラノベやアニメでも、不思議能力でできてしまうと、科学なんて発展してないし。

下手すると、天動説が普通だったり、星が丸いと言う事も知らない可能性も。

大体にして、地球が地球と呼ばれるようになったも、1500年から1600年くらいからだと、歴史好きの歴史の先生が話していたなぁ~。

「それと、お主には、勇者専用の武器と防具を用意しよう。」

そう言うと、僕の方に向かって、白い霧の人型のカルドラ様が右手をかざす。

一瞬、光ったかと思うと直ぐに収まった。

自分の身体を見たり、周囲を見渡すが、武器や防具らしきものは何もない。

「装着。と言ってみよ。」

「装着。」

僕が言うと共に、僕の身体を光がまとい。一瞬で収まった後には、右手に剣を持ち。

タイツみたいな、ピッチリした感じの薄い布地?みたいな物に直接金属が張り付いたような鎧に身を包まれていた。

頭には、サークレット。所謂いわゆるオープンクラウンと呼ばれる王冠みたいなものが。

胸部、腕部、脚部も、関節部分は動きやすいように、表側だけ金属のような物で覆われていて。

けれど、人の身体の急所的な部分はシッカリと金属で守られている。

見た目金属のそれなのに、触ってみると柔らかくも感じつつ金属感もある。

これ、なんて不思議金属?って感じだよ!

なんで、自分の姿が解かるのかって?

目の前に姿見が立っているからだよっ!

ってか! 何この?何とか戦隊的な変身の仕方はっ! もっとファンタジー感をだしてよっ!

サークレットの代わりに、鉄のヘルメット被ったら、まんまソッチだからねっ!

「あの・・・盾は無いんですか?」

心の中で突っ込み疲れても、言いたいことは言っておく。

「その鎧自体が、盾の役目も果たしておるから心配はいらんよ。」

カルドラ様の話では、腕、脚の部分で、普通に相手の攻撃を受けて弾けるらしいし、魔法攻撃とかで面の攻撃も防いでくれるので、丸出しの顔の部分もガードできるとか。

「だったら、何で顔は丸出しなのでしょうか?」

「それは、その鎧を造った神。 ウィンディアの趣味じゃろ?」

趣味で勇者の鎧とか作るのね・・・。

「それでは、遠山とおやま彰人あきと。 フォーリアに向かってくれ。」

そう言うと、僕の目の前に、白いドアが現れていた。

ドアノブに手を伸ばして中を伺うも、中は真っ白空間が広がっていた。

カルドラ様が、右手を上げて振っている。

「はぁ・・・。」

溜め息をついて、歩を進める。

と、同時に。 僕は落下していた。

最後の最後で! くっそ下らない悪戯をしやがって!

今度会ったら、絶対に1発! いや10発は殴ってやる!

「うわあああぁぁぁぁぁぁああああぁあぁ。」

そして、僕は川に背中を打ち付けて、川の中に沈んでいくのだった。
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