上 下
1 / 11

アサシンギルドのギルド員達1

しおりを挟む
 俺の隣に初老の男が座る。
 そいつは俺との間に一枚の小さな紙を置き、新聞を読み始める。
 ふむ。何時もの依頼か。
 俺はその紙を自然な手つきで掴み取り、その場を後にした。

 ☆★☆★☆

「ヒメ」

 群衆に紛れて歩きながら俺の相方の名を呼ぶ。

「なに?」

 気付けば、俺の隣を甘栗色でミディアムヘアの身長と胸が小さい少女が歩いていた。
 ……相変わらず、俺の気配探知に引っ掛からない。

「王家からの仕事だ。西方の侯爵家に侵入し、侯爵を暗殺する。情報によれば、王家への謀反を企てているそうだ。あと、領民へ異常なまでの重税を課している」
「そう。私が殺る?」
「いいや、今回は俺と二人だ」
「分かった」

 それだけ言うと、霞のように消えてしまう。
 ほんと、どんな隠密だよ。

 ☆★☆★☆

 その夜。
 俺と相方のヒメは西方の領主──つまりは、暗殺対象が住んでいる侯爵家近くの宿屋まで来ていた。

「実行は後日として、侵入方法はどうする?」
「そうだな。いつものように正面突破は避けたい。窓が開いていればそこから侵入するんだが……」

 そう言って、遠見の魔法を起動する。
 ……やはりな。

「どの窓も開いてないな」
「そ。なら、上から侵入する?」
「んー、それよりも、外の連中に合わせた方が良くないか?」

 そう言って、窓から外を見る。
 殺気立っており、今にも暴動が起きそうだ。

「ん。それもそう。やっぱり、暗殺者アサシンは群衆に紛れるのが一番。あと、闇にも」
「魔法阻害的な結界も無さそうだな。不用心な」
「何時何処で暗殺されるか分からないのにね~」

 少し嬉しそうにパタパタと足を動かすヒメ。

「……ところでヒメさんや」
「なに?」
「何故、俺の膝の上に座ってる?」
「私が座りたいから?」

 こてん、と小首を傾げながら答えるヒメ。
 思わず、手を額に置き、天井を見上げる。
 我らが雷姫らいき様は、何故か、俺に甘えたがるのだ。

「マスター・エル──師匠」

 突然、呼び掛けられる。

「貴方に会えて、本当に良かった」
「……昔の事だ」

 俺は後ろから彼女を抱き締める。

「俺もヒメと会えて良かったさ。お前が居なかったら、俺はもっと別の道に進んでいたと思う」
「ん」

 ヒメが少しこちらを向き、顔を近付けてくる。
 俺もそれに合わせて顔を近付けるが──突然、外から爆発音が聞こえた。

「──っ!? なんだ!!」
「魔力の残滓……魔法による爆破攻撃……?」

 何処か不服そうなヒメだが、その右手には錬成した苦無がしっかりと握られている。
 抜け目のない奴だ。
 まぁ、そういう俺も、柄だけの剣──刀身は魔法で補う──に手を掛けているのだが。

「思ったよりも動き出すのが早かったな。予定変更だ。今日、仕留めるぞ」
「分かった。はい、これ」

 そう言って、紺色の外套を渡してくる。
 普段や昼間は、こういうのは不自然だから着ないが、夜中に屋根の上を走っていく場合は違う。
 こっちの方が見つかりにくい。

「さて、行くぞ」
「ん」

 彼らは、まるで始めからそこに居なかったかのように掻き消えてしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...