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所作や振る舞いは見馴れたもので、地位の高さが窺える。
商人という可能性も捨てきれないけれど、少なくとも金に困っているようには見えなかった。
身代金目的の誘拐じゃない?
それは、困る。
お金目的じゃなければ、一気に危険度が増すからだ。
「どうした? 立場もわきまえず、要求を訊いてきたのはきみだろう?」
僕は一度、仮面の男の機嫌を損ねた。
今は逆らわないほうがいいだろうか。
靴を前にして、口を開く。
けれど自分が思っている以上に、体が竦んで上手く動かせない。
いつの間にか口が渇いて、喉が張り付いていた。
仮面の男は、僕の一挙一動を見つめている。
震えながら、やっとのことで開いた口から舌を出す。
舌先が靴に触れそうになった、そのとき。
「何だ!?」
テディが縛られた足を上げ、仮面の男を蹴った。
反動で、テディの体が転がる。
傍にいたもう一人の男が、慌ててテディの動きを封じる。
「貴様っ、何を見ていた!」
「すいやせん、今まで大人しかったもんで……」
仮面の男はテディの蹴りで体勢を崩したものの、すぐに立て直した。
室内で僕たちを見張っていた男は、まさか縛られた状態の子どもが攻撃してくるとは思わなかったらしい。
今は下手に動けないようテディを座らせ、上から押さえ込んでいる。
仮面の男は、激情した様子でテディと向き合った。
テディは対面した仮面の男を睨みつける。
まさか。
僕から、仮面の男の気をそらしてくれた?
「ーーー!」
「威勢のいい坊やだ」
だけど、これではテディが危険だ。
何で、どうして、と僕はテディを見るけど、テディは仮面の男から視線を外さない。
僕がテディを守らなきゃいけないのに!
靴を舐めるぐらい、どうってことなかったんだ。
テディが庇ってくれるほどのことじゃない。
僕がもっと早く行動していれば……!
「お仕置きが必要だな」
「待ってくれ!」
乾いた口で、何とか声を張り上げる。
制止する僕にテディが首を横に振るけど、それには応えられない。
「貴方の、目的は、僕だっ」
だからテディには構うな。
僕の訴えに、ようやく仮面の男は振り返った。
仮面越しでもわかる、ぞっとするような笑みをのせて。
「そうだ。わたしの目的はきみだ。安心するといい、きみの命までは取らない」
殺してしまうとウッドワード卿がうるさいからな、と仮面の男は続ける。
「けど下僕の彼が死んだところで、誰も困らない」
「やめろ!」
「そう、きみ以外は」
あはは、と笑い声を立てながら、仮面の男はもう一人から短剣を受け取った。
僕から奪った、あの短剣だ。
「まさか! きみが! 下僕なんぞを大切にするとは、思ってもみなかったよ!」
商人という可能性も捨てきれないけれど、少なくとも金に困っているようには見えなかった。
身代金目的の誘拐じゃない?
それは、困る。
お金目的じゃなければ、一気に危険度が増すからだ。
「どうした? 立場もわきまえず、要求を訊いてきたのはきみだろう?」
僕は一度、仮面の男の機嫌を損ねた。
今は逆らわないほうがいいだろうか。
靴を前にして、口を開く。
けれど自分が思っている以上に、体が竦んで上手く動かせない。
いつの間にか口が渇いて、喉が張り付いていた。
仮面の男は、僕の一挙一動を見つめている。
震えながら、やっとのことで開いた口から舌を出す。
舌先が靴に触れそうになった、そのとき。
「何だ!?」
テディが縛られた足を上げ、仮面の男を蹴った。
反動で、テディの体が転がる。
傍にいたもう一人の男が、慌ててテディの動きを封じる。
「貴様っ、何を見ていた!」
「すいやせん、今まで大人しかったもんで……」
仮面の男はテディの蹴りで体勢を崩したものの、すぐに立て直した。
室内で僕たちを見張っていた男は、まさか縛られた状態の子どもが攻撃してくるとは思わなかったらしい。
今は下手に動けないようテディを座らせ、上から押さえ込んでいる。
仮面の男は、激情した様子でテディと向き合った。
テディは対面した仮面の男を睨みつける。
まさか。
僕から、仮面の男の気をそらしてくれた?
「ーーー!」
「威勢のいい坊やだ」
だけど、これではテディが危険だ。
何で、どうして、と僕はテディを見るけど、テディは仮面の男から視線を外さない。
僕がテディを守らなきゃいけないのに!
靴を舐めるぐらい、どうってことなかったんだ。
テディが庇ってくれるほどのことじゃない。
僕がもっと早く行動していれば……!
「お仕置きが必要だな」
「待ってくれ!」
乾いた口で、何とか声を張り上げる。
制止する僕にテディが首を横に振るけど、それには応えられない。
「貴方の、目的は、僕だっ」
だからテディには構うな。
僕の訴えに、ようやく仮面の男は振り返った。
仮面越しでもわかる、ぞっとするような笑みをのせて。
「そうだ。わたしの目的はきみだ。安心するといい、きみの命までは取らない」
殺してしまうとウッドワード卿がうるさいからな、と仮面の男は続ける。
「けど下僕の彼が死んだところで、誰も困らない」
「やめろ!」
「そう、きみ以外は」
あはは、と笑い声を立てながら、仮面の男はもう一人から短剣を受け取った。
僕から奪った、あの短剣だ。
「まさか! きみが! 下僕なんぞを大切にするとは、思ってもみなかったよ!」
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