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翌日、ぼくはガルの村へと向かった。
そ、その……成人して、ガルと繋がれたから、改めて村長でもあるガルのお父さんに、付き合ってるのを報告したいと思ったんだ。
ガルに抱き上げられ、いつもの格好で運ばれる。
「アミーコのことも忘れるなよ」
「あ、そうだった」
エルフの言い付けを破り、なおかつガルを襲おうとした罪は重い。
アミーコはいったん村に帰されることになって、縄で縛られてガルに連行されていた。
縄の端を握るガルが、ちらりと後ろを歩くアミーコを振り返る。
「あいつも、とことん報われねぇな」
「だからってガルを襲うのは許せないよ」
むう、とするぼくの頬をガルがつつく。
「力では俺に勝てないからな。苦肉の策だったんだろ。リゼは筋肉も、俺のが一番好きだって?」
「聞いたの? うん、ガルの筋肉はゴツゴツしてるだけじゃなくて、しなやかさもあるから好きだよ」
「そうかそうか」
ガルは満面の笑みだ。
いつにない笑顔に、ぼくも笑った。筋肉にこだわりがあるのは、ガルも他のオーガと同じだよね。
「いい加減、アミーコも諦めりゃいいのに」
「アミーコはいつからガルのことが好きなの?」
ぼくがガルと出会った頃にはもう睨まれてた気がするから、その前から?
首を傾げるぼくを、ガルがぽかんとした表情で見返す。
珍しく気の抜けた顔に、目を瞬かせた。
「ど、どうしたの?」
「リゼは、アミーコが俺のことを好きだと思ってたのか?」
「えっ、だってそうでしょ?」
「あいつが好きなのはお前だぞ」
「え?」
え?
アミーコを見る。
歩みを止めたアミーコは、膝から崩れて地面に手をついた。
「ぼく凄く睨まれてたけど!?」
「お前じゃなくて俺を睨んでたんだよ」
「ガルに熱い視線を送ってたよ!? それに今回のことだって……」
「熱い視線はお前に送ってたんだ。逆にとってたのか? 花畑でのことはあれだ、俺にお前を襲わせて、幻滅させたかったんだと」
今までのは全部、ぼくの勘違いだったの!?
「ガルに襲われても幻滅しないけど?」
「……だとよ。前提から間違ってんじゃねぇか」
男泣きするアミーコに、ガルが視線をやる。
ぼくを好きなら、ちゃんと言って欲しかった。
「ガルがアミーコを軽くいなしてたのは?」
「あいつ、お前と付き合えるなら二番目でもいいから、俺に口利きしろってさ。頷けるわけねぇだろうが。好きならテメェで告れって話だ」
「あはは……そうだね」
アミーコの残念さが浮き彫りになり、天を仰ぐ。
「しかし他の村人からもアピールされてるってのに、気付かなかったのか?」
「アピール?」
「もしかして、それも気付いてないのか? 誰が気のない奴に、自分の筋肉見せるよ?」
「人に見せるのが好きなんだと思ってた」
「そうか……」
頷いたガルが、ぼくと目を合わせる。
光を受けるグレーの瞳は、青みがかって見えた。
「お前はもっとモテてる自覚を持て」
「いや、モテないでしょ」
「どこからくる自信だよ!?」
「だってみんなガルみたいに男らしい人が好きじゃない。ママだってよく見惚れてるよ」
「それはリゼのママだからだろうが!」
「でもぼくって見るからに弱そうだし」
魔族は種族に関係なく、強い相手を好む。
見てよこの細い腕を、とぼくは筋肉のついていない様をガルに見せ付けた。
「細いのはエルフだからだろ。あぁ、こら、こんなところで太ももまで見せようとするな!」
「見たほうが納得できると思って。大丈夫、大事なところは隠れてるよ」
「そういう問題じゃねぇよ! オーガが忍耐力弱いことを思いだしてくれ! あと一番大事な要素を忘れてるからな!」
何か忘れてるっけ?
「魔力! 抑えてても一緒にいれば、お前の魔力量が凄いのはわかるぞ」
「言われてみれば人より多いんだった」
「その程度の認識かよ!? 花畑でも、アミーコが白目剥いてただろうが」
「あれは花粉のせいでしょ?」
「リゼの魔力にあてられたんだよ……俺も正直、ビビったからな」
「えっ、怖かった!?」
ビクッとするぼくに、ガルが額をぐりぐり押し付けてくる。
「お前だけは怒らせないでおこうと思っただけで、悪い意味じゃねぇよ」
角が当たってちょっと痛いけど、加減してくれているのはわかった。
よかった、ガルに引かれたら立ち直れない。
「中に出されたときは、マジでヤバかった。花粉どころの騒ぎじゃねぇよ」
「あ、それはぼくもわかるかも……ガルの飲んだとき、クラクラしたもん」
「……村に着いたら、俺の部屋直行な」
「う、うん」
昨日のことが頭を過ぎって、早くも体が火照ってくる。
ガルの熱のこもった目を見返しながら頷いた。
「これが……オレへの罰か……」
「おう、村に着くまで見せ付けてやるから覚悟しろ」
「うううっ」
いちゃつくぼくたちを見て、更にアミーコが項垂れる。
悪いことをしたのに変わりはないから、しっかり反省してね。
そ、その……成人して、ガルと繋がれたから、改めて村長でもあるガルのお父さんに、付き合ってるのを報告したいと思ったんだ。
ガルに抱き上げられ、いつもの格好で運ばれる。
「アミーコのことも忘れるなよ」
「あ、そうだった」
エルフの言い付けを破り、なおかつガルを襲おうとした罪は重い。
アミーコはいったん村に帰されることになって、縄で縛られてガルに連行されていた。
縄の端を握るガルが、ちらりと後ろを歩くアミーコを振り返る。
「あいつも、とことん報われねぇな」
「だからってガルを襲うのは許せないよ」
むう、とするぼくの頬をガルがつつく。
「力では俺に勝てないからな。苦肉の策だったんだろ。リゼは筋肉も、俺のが一番好きだって?」
「聞いたの? うん、ガルの筋肉はゴツゴツしてるだけじゃなくて、しなやかさもあるから好きだよ」
「そうかそうか」
ガルは満面の笑みだ。
いつにない笑顔に、ぼくも笑った。筋肉にこだわりがあるのは、ガルも他のオーガと同じだよね。
「いい加減、アミーコも諦めりゃいいのに」
「アミーコはいつからガルのことが好きなの?」
ぼくがガルと出会った頃にはもう睨まれてた気がするから、その前から?
首を傾げるぼくを、ガルがぽかんとした表情で見返す。
珍しく気の抜けた顔に、目を瞬かせた。
「ど、どうしたの?」
「リゼは、アミーコが俺のことを好きだと思ってたのか?」
「えっ、だってそうでしょ?」
「あいつが好きなのはお前だぞ」
「え?」
え?
アミーコを見る。
歩みを止めたアミーコは、膝から崩れて地面に手をついた。
「ぼく凄く睨まれてたけど!?」
「お前じゃなくて俺を睨んでたんだよ」
「ガルに熱い視線を送ってたよ!? それに今回のことだって……」
「熱い視線はお前に送ってたんだ。逆にとってたのか? 花畑でのことはあれだ、俺にお前を襲わせて、幻滅させたかったんだと」
今までのは全部、ぼくの勘違いだったの!?
「ガルに襲われても幻滅しないけど?」
「……だとよ。前提から間違ってんじゃねぇか」
男泣きするアミーコに、ガルが視線をやる。
ぼくを好きなら、ちゃんと言って欲しかった。
「ガルがアミーコを軽くいなしてたのは?」
「あいつ、お前と付き合えるなら二番目でもいいから、俺に口利きしろってさ。頷けるわけねぇだろうが。好きならテメェで告れって話だ」
「あはは……そうだね」
アミーコの残念さが浮き彫りになり、天を仰ぐ。
「しかし他の村人からもアピールされてるってのに、気付かなかったのか?」
「アピール?」
「もしかして、それも気付いてないのか? 誰が気のない奴に、自分の筋肉見せるよ?」
「人に見せるのが好きなんだと思ってた」
「そうか……」
頷いたガルが、ぼくと目を合わせる。
光を受けるグレーの瞳は、青みがかって見えた。
「お前はもっとモテてる自覚を持て」
「いや、モテないでしょ」
「どこからくる自信だよ!?」
「だってみんなガルみたいに男らしい人が好きじゃない。ママだってよく見惚れてるよ」
「それはリゼのママだからだろうが!」
「でもぼくって見るからに弱そうだし」
魔族は種族に関係なく、強い相手を好む。
見てよこの細い腕を、とぼくは筋肉のついていない様をガルに見せ付けた。
「細いのはエルフだからだろ。あぁ、こら、こんなところで太ももまで見せようとするな!」
「見たほうが納得できると思って。大丈夫、大事なところは隠れてるよ」
「そういう問題じゃねぇよ! オーガが忍耐力弱いことを思いだしてくれ! あと一番大事な要素を忘れてるからな!」
何か忘れてるっけ?
「魔力! 抑えてても一緒にいれば、お前の魔力量が凄いのはわかるぞ」
「言われてみれば人より多いんだった」
「その程度の認識かよ!? 花畑でも、アミーコが白目剥いてただろうが」
「あれは花粉のせいでしょ?」
「リゼの魔力にあてられたんだよ……俺も正直、ビビったからな」
「えっ、怖かった!?」
ビクッとするぼくに、ガルが額をぐりぐり押し付けてくる。
「お前だけは怒らせないでおこうと思っただけで、悪い意味じゃねぇよ」
角が当たってちょっと痛いけど、加減してくれているのはわかった。
よかった、ガルに引かれたら立ち直れない。
「中に出されたときは、マジでヤバかった。花粉どころの騒ぎじゃねぇよ」
「あ、それはぼくもわかるかも……ガルの飲んだとき、クラクラしたもん」
「……村に着いたら、俺の部屋直行な」
「う、うん」
昨日のことが頭を過ぎって、早くも体が火照ってくる。
ガルの熱のこもった目を見返しながら頷いた。
「これが……オレへの罰か……」
「おう、村に着くまで見せ付けてやるから覚悟しろ」
「うううっ」
いちゃつくぼくたちを見て、更にアミーコが項垂れる。
悪いことをしたのに変わりはないから、しっかり反省してね。
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