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七(本編完結)
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「さて、そういえばリンナはどうしてほしい?」
二人が絶望しきってうずくまっているのを尻目に、突然アスティルがこちらを振り向き、そんなことを言ってきた。
「え?」
「実際は彼らに何も罰は下されていないだろ?あくまでも、これらは自身の名誉がなくなったり、身内で罰せられているだけなのだから。
其方は公爵令嬢。その名を汚され、謀られた罪はそれなりに大きいぞ?」
「私は……とりあえず彼女たちを二度と見たくありません。だから私の前に二度と姿を見せないようにしてほしいわ。」
しばし考えた後、そう答えると彼は珍しいものを見たかのように目を見開いた。
「ふむ。なるほど。それだけで良いのか?随分と軽く思えるが。」
「ええ。」
本音を言うなら彼らはもう随分と痛い目に遭っていて、スッキリしたからあとは関わりたくないだけなんですけどね。
「それではお前たち。聞いたな。二度とリンナの前に姿を見せるではない。お前たち二人は国外へ追放とする。」
「え?ちょ、やり過ぎでは?」
私、別に国外へ追放したいだなんて言っていませんよね?
「なんだ?そういうことであろう?どちらにしろこの国ではもう彼らは生きてはいけないだろうからな。」
そう言った後、王子は深呼吸をして、唐突に真面目な顔になった。
「そんなことはどうでもいい。さて…最後に一つ。」
どうでもいいって……というか、まだなにかあったかしら?もう粗方予定は終わったはずですけれど…
不可解に思い首を傾げていると、彼は膝をつき、胸に手を当てこちらを真摯な眼差しで見つめてくる。すると、彼の口から想像もしていなかった言葉が紡がれた。
「リンナ。リンナ・タウネシア様。よろしければ私と結婚してはくれませんか?」
えっ……!?な、なんで!?こんなの予定にはなかったですよね?
その言葉が聞こえた瞬間、周りは一瞬大きくざわめいた後一瞬で静まり返り、皆驚きの目でこちらの一挙一動に注目する。
ちなみに私はパニックになり、全くそれに気づいてはいなかった。
「私は貴女のその賢く、気高く、身も心も美しいところに以前から惚れていました。もう婚約が決まっていたのなら仕方ないと諦めていましたが、この度、こんな事件が起こりました。
どうか、どうか私で良ければ、あの愚者共のせいで傷が入ってしまった貴女の名を癒やす任を受けさせていただくことをお許し願います。」
「えっ…」
「……だめ…でしょうか?」
なるほど。よく考えれば私は婚約破棄された身。これから結婚しようとするとなかなかに難しいところはある。だから王子は暗にこの計画に乗ったからには責任は取るってことを言いたいのね。きっと。
昔っから負わなくていい責任まで背負い込もうとするのだから…まったく。こんなの、断れるわけないじゃありませんか。だって断ったら王子まで恥をかいてしまうのですよ?
それではありがたくその温情に乗らせていただこうかしらね。
というか正直、この、顔がこの国一整っているとまで言われる王子にこんな目で見つめられてノーと言える人がいまして!?
「……こんな私でよろしいのでしたら。」
「ありがとうございます。リンナ様」
表面上は冷静に見えるように急いで取り繕い、そう言うと、彼はキラキラっとしたエフェクトが見える笑顔を向け、私の手を取り、そっとその手に口づけを落とした。
口、づ、け、を………えええええ!?ちょ、私、そ、そういうの耐性ないんですけど!?
私が真っ赤になり、口をパクパクさせたのを見た王子は、悪戯が成功したときのような意地悪さのこもったニヤリとした笑みを見せた。
そしてその瞬間、場は先程までの緊迫感が嘘のようにとてつもなく沸いた。
「おめでとうございます!」
「キャアアアアアついにあのアスティル王子が結婚よ!」
「なんてことだ!」
「うおおおおお!」
パチパチパチパチパチパチパチパチ
そう。彼は今までそう言った浮いた噂が無かった人なのだ。だからこそ周りの反応は凄まじいこととなっていた……
呆然としているあの二人を覗いて。
その後彼らはその日のうちに共に国外ヘ追放されたのですが……いつの間にか彼女達の行方は誰にもわからなくなっていたそうです。
私達?私達は無事皆さんに祝福されながら結婚することができましたわ。
「リンナ。」
「アスティル!どうしましたの?」
「少し疲れてな……君に会いに来た。」
「なんですか、それ」
「リンナといると癒やされる。好きだ、リンナ。」
「っっ!…………私もですわよ。」
「「……ふふっ」」
~End~
二人が絶望しきってうずくまっているのを尻目に、突然アスティルがこちらを振り向き、そんなことを言ってきた。
「え?」
「実際は彼らに何も罰は下されていないだろ?あくまでも、これらは自身の名誉がなくなったり、身内で罰せられているだけなのだから。
其方は公爵令嬢。その名を汚され、謀られた罪はそれなりに大きいぞ?」
「私は……とりあえず彼女たちを二度と見たくありません。だから私の前に二度と姿を見せないようにしてほしいわ。」
しばし考えた後、そう答えると彼は珍しいものを見たかのように目を見開いた。
「ふむ。なるほど。それだけで良いのか?随分と軽く思えるが。」
「ええ。」
本音を言うなら彼らはもう随分と痛い目に遭っていて、スッキリしたからあとは関わりたくないだけなんですけどね。
「それではお前たち。聞いたな。二度とリンナの前に姿を見せるではない。お前たち二人は国外へ追放とする。」
「え?ちょ、やり過ぎでは?」
私、別に国外へ追放したいだなんて言っていませんよね?
「なんだ?そういうことであろう?どちらにしろこの国ではもう彼らは生きてはいけないだろうからな。」
そう言った後、王子は深呼吸をして、唐突に真面目な顔になった。
「そんなことはどうでもいい。さて…最後に一つ。」
どうでもいいって……というか、まだなにかあったかしら?もう粗方予定は終わったはずですけれど…
不可解に思い首を傾げていると、彼は膝をつき、胸に手を当てこちらを真摯な眼差しで見つめてくる。すると、彼の口から想像もしていなかった言葉が紡がれた。
「リンナ。リンナ・タウネシア様。よろしければ私と結婚してはくれませんか?」
えっ……!?な、なんで!?こんなの予定にはなかったですよね?
その言葉が聞こえた瞬間、周りは一瞬大きくざわめいた後一瞬で静まり返り、皆驚きの目でこちらの一挙一動に注目する。
ちなみに私はパニックになり、全くそれに気づいてはいなかった。
「私は貴女のその賢く、気高く、身も心も美しいところに以前から惚れていました。もう婚約が決まっていたのなら仕方ないと諦めていましたが、この度、こんな事件が起こりました。
どうか、どうか私で良ければ、あの愚者共のせいで傷が入ってしまった貴女の名を癒やす任を受けさせていただくことをお許し願います。」
「えっ…」
「……だめ…でしょうか?」
なるほど。よく考えれば私は婚約破棄された身。これから結婚しようとするとなかなかに難しいところはある。だから王子は暗にこの計画に乗ったからには責任は取るってことを言いたいのね。きっと。
昔っから負わなくていい責任まで背負い込もうとするのだから…まったく。こんなの、断れるわけないじゃありませんか。だって断ったら王子まで恥をかいてしまうのですよ?
それではありがたくその温情に乗らせていただこうかしらね。
というか正直、この、顔がこの国一整っているとまで言われる王子にこんな目で見つめられてノーと言える人がいまして!?
「……こんな私でよろしいのでしたら。」
「ありがとうございます。リンナ様」
表面上は冷静に見えるように急いで取り繕い、そう言うと、彼はキラキラっとしたエフェクトが見える笑顔を向け、私の手を取り、そっとその手に口づけを落とした。
口、づ、け、を………えええええ!?ちょ、私、そ、そういうの耐性ないんですけど!?
私が真っ赤になり、口をパクパクさせたのを見た王子は、悪戯が成功したときのような意地悪さのこもったニヤリとした笑みを見せた。
そしてその瞬間、場は先程までの緊迫感が嘘のようにとてつもなく沸いた。
「おめでとうございます!」
「キャアアアアアついにあのアスティル王子が結婚よ!」
「なんてことだ!」
「うおおおおお!」
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そう。彼は今までそう言った浮いた噂が無かった人なのだ。だからこそ周りの反応は凄まじいこととなっていた……
呆然としているあの二人を覗いて。
その後彼らはその日のうちに共に国外ヘ追放されたのですが……いつの間にか彼女達の行方は誰にもわからなくなっていたそうです。
私達?私達は無事皆さんに祝福されながら結婚することができましたわ。
「リンナ。」
「アスティル!どうしましたの?」
「少し疲れてな……君に会いに来た。」
「なんですか、それ」
「リンナといると癒やされる。好きだ、リンナ。」
「っっ!…………私もですわよ。」
「「……ふふっ」」
~End~
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