さぁ、反撃ですわ

啄木鳥

文字の大きさ
上 下
7 / 12

七(本編完結)

しおりを挟む
「さて、そういえばリンナはどうしてほしい?」


二人が絶望しきってうずくまっているのを尻目に、突然アスティルがこちらを振り向き、そんなことを言ってきた。


「え?」


「実際は彼らに何も罰は下されていないだろ?あくまでも、これらは自身の名誉がなくなったり、身内で罰せられているだけなのだから。
 其方は公爵令嬢。その名を汚され、謀られた罪はそれなりに大きいぞ?」

「私は……とりあえず彼女たちを二度と見たくありません。だから私の前に二度と姿を見せないようにしてほしいわ。」


しばし考えた後、そう答えると彼は珍しいものを見たかのように目を見開いた。


「ふむ。なるほど。それだけで良いのか?随分と軽く思えるが。」

「ええ。」


本音を言うなら彼らはもう随分と痛い目に遭っていて、スッキリしたからあとは関わりたくないだけなんですけどね。


「それではお前たち。聞いたな。二度とリンナの前に姿を見せるではない。お前たち二人は国外へ追放とする。」


「え?ちょ、やり過ぎでは?」

私、別に国外へ追放したいだなんて言っていませんよね?


「なんだ?そういうことであろう?どちらにしろこの国ではもう彼らは生きてはいけないだろうからな。」


そう言った後、王子は深呼吸をして、唐突に真面目な顔になった。


「そんなことはどうでもいい。さて…最後に一つ。」


どうでもいいって……というか、まだなにかあったかしら?もう粗方予定は終わったはずですけれど…

不可解に思い首を傾げていると、彼は膝をつき、胸に手を当てこちらを真摯な眼差しで見つめてくる。すると、彼の口から想像もしていなかった言葉が紡がれた。


「リンナ。リンナ・タウネシア様。よろしければ私と結婚してはくれませんか?」


えっ……!?な、なんで!?こんなの予定にはなかったですよね?

その言葉が聞こえた瞬間、周りは一瞬大きくざわめいた後一瞬で静まり返り、皆驚きの目でこちらの一挙一動に注目する。

ちなみに私はパニックになり、全くそれに気づいてはいなかった。


「私は貴女のその賢く、気高く、身も心も美しいところに以前から惚れていました。もう婚約が決まっていたのなら仕方ないと諦めていましたが、この度、こんな事件が起こりました。

 どうか、どうか私で良ければ、あの愚者共のせいで傷が入ってしまった貴女の名を癒やす任を受けさせていただくことをお許し願います。」

「えっ…」

「……だめ…でしょうか?」


なるほど。よく考えれば私は婚約破棄された身。これから結婚しようとするとなかなかに難しいところはある。だから王子は暗にこの計画に乗ったからには責任は取るってことを言いたいのね。きっと。

昔っから負わなくていい責任まで背負い込もうとするのだから…まったく。こんなの、断れるわけないじゃありませんか。だって断ったら王子まで恥をかいてしまうのですよ?
それではありがたくその温情に乗らせていただこうかしらね。

というか正直、この、顔がこの国一整っているとまで言われる王子にこんな目で見つめられてノーと言える人がいまして!?


「……こんな私でよろしいのでしたら。」

「ありがとうございます。リンナ様」 


表面上は冷静に見えるように急いで取り繕い、そう言うと、彼はキラキラっとしたエフェクトが見える笑顔を向け、私の手を取り、そっとその手に口づけを落とした。

口、づ、け、を………えええええ!?ちょ、私、そ、そういうの耐性ないんですけど!?


私が真っ赤になり、口をパクパクさせたのを見た王子は、悪戯が成功したときのような意地悪さのこもったニヤリとした笑みを見せた。


そしてその瞬間、場は先程までの緊迫感が嘘のようにとてつもなく沸いた。

「おめでとうございます!」
「キャアアアアアついにあのアスティル王子が結婚よ!」
「なんてことだ!」
「うおおおおお!」
パチパチパチパチパチパチパチパチ


そう。彼は今までそう言った浮いた噂が無かった人なのだ。だからこそ周りの反応は凄まじいこととなっていた……


呆然としているあの二人を覗いて。










その後彼らはその日のうちに共に国外ヘ追放されたのですが……いつの間にか彼女達の行方は誰にもわからなくなっていたそうです。


私達?私達は無事皆さんに祝福されながら結婚することができましたわ。


「リンナ。」
「アスティル!どうしましたの?」
「少し疲れてな……君に会いに来た。」
「なんですか、それ」
「リンナといると癒やされる。好きだ、リンナ。」
「っっ!…………私もですわよ。」
「「……ふふっ」」








~End~


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】貴方が幼馴染と依存し合っているのでそろそろ婚約破棄をしましょう。

恋愛
「すまないシャロン、エマの元に行かなくてはならない」 いつだって幼馴染を優先する婚約者。二人の関係は共依存にも近いほど泥沼化しておりそれに毎度振り回されていた公爵令嬢のシャロン。そんな二人の関係を黙ってやり過ごしていたが、ついに堪忍袋の尾が切れて婚約破棄を目論む。 伯爵家の次男坊である彼は爵位を持たない、だから何としても公爵家に婿に来ようとしていたのは分かっていたが…… 「流石に付き合い切れないわね、こんな茶番劇」 愛し合う者同士、どうぞ勝手にしてください。

真実は仮面の下に~精霊姫の加護を捨てた愚かな人々~

ともどーも
恋愛
 その昔、精霊女王の加護を賜った少女がプルメリア王国を建国した。 彼女は精霊達と対話し、その力を借りて魔物の来ない《聖域》を作り出した。  人々は『精霊姫』と彼女を尊敬し、崇めたーーーーーーーーーーープルメリア建国物語。  今では誰も信じていないおとぎ話だ。  近代では『精霊』を『見れる人』は居なくなってしまった。  そんなある日、精霊女王から神託が下った。 《エルメリーズ侯爵家の長女を精霊姫とする》  その日エルメリーズ侯爵家に双子が産まれた。  姉アンリーナは精霊姫として厳しく育てられ、妹ローズは溺愛されて育った。  貴族学園の卒業パーティーで、突然アンリーナは婚約者の王太子フレデリックに婚約破棄を言い渡された。  神託の《エルメリーズ侯爵家の長女を精霊姫とする》は《長女》ではなく《少女》だったのでないか。  現にローズに神聖力がある。  本物の精霊姫はローズだったのだとフレデリックは宣言した。  偽物扱いされたアンリーナを自ら国外に出ていこうとした、その時ーーー。  精霊姫を愚かにも追い出した王国の物語です。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初心者のフワフワ設定です。 温かく見守っていただけると嬉しいです。

ご令嬢は一人だけ別ゲーだったようです

バイオベース
恋愛
魔法が有り、魔物がいる。 そんな世界で生きる公爵家のご令嬢エレノアには欠点が一つあった。 それは強さの証である『レベル』が上がらないという事。 そんなある日、エレノアは身に覚えの無い罪で王子との婚約を破棄される。 同じ学院に通う平民の娘が『聖女』であり、王子はそれと結ばれるというのだ。 エレノアは『聖女』を害した悪女として、貴族籍をはく奪されて開拓村へと追いやられたのだった。 しかし当の本人はどこ吹く風。 エレノアは前世の記憶を持つ転生者だった。 そして『ここがゲームの世界』だという記憶の他にも、特別な力を一つ持っている。 それは『こことは違うゲームの世界の力』。 前世で遊び倒した農業系シミュレーションゲームの不思議な力だった。

私のバラ色ではない人生

野村にれ
恋愛
ララシャ・ロアンスラー公爵令嬢は、クロンデール王国の王太子殿下の婚約者だった。 だが、隣国であるピデム王国の第二王子に見初められて、婚約が解消になってしまった。 そして、後任にされたのが妹であるソアリス・ロアンスラーである。 ソアリスは王太子妃になりたくもなければ、王太子妃にも相応しくないと自負していた。 だが、ロアンスラー公爵家としても責任を取らなければならず、 既に高位貴族の令嬢たちは婚約者がいたり、結婚している。 ソアリスは不本意ながらも嫁ぐことになってしまう。

婚約破棄に全力感謝

あーもんど
恋愛
主人公の公爵家長女のルーナ・マルティネスはあるパーティーで婚約者の王太子殿下に婚約破棄と国外追放を言い渡されてしまう。でも、ルーナ自身は全く気にしてない様子....いや、むしろ大喜び! 婚約破棄?国外追放?喜んでお受けします。だって、もうこれで国のために“力”を使わなくて済むもの。 実はルーナは世界最強の魔導師で!? ルーナが居なくなったことにより、国は滅びの一途を辿る! 「滅び行く国を遠目から眺めるのは大変面白いですね」 ※色々な人達の目線から話は進んでいきます。 ※HOT&恋愛&人気ランキング一位ありがとうございます(2019 9/18)

【完結】私を虐げる姉が今の婚約者はいらないと押し付けてきましたが、とても優しい殿方で幸せです 〜それはそれとして、家族に復讐はします〜

ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
侯爵家の令嬢であるシエルは、愛人との間に生まれたせいで、父や義母、異母姉妹から酷い仕打ちをされる生活を送っていた。 そんなシエルには婚約者がいた。まるで本物の兄のように仲良くしていたが、ある日突然彼は亡くなってしまった。 悲しみに暮れるシエル。そこに姉のアイシャがやってきて、とんでもない発言をした。 「ワタクシ、とある殿方と真実の愛に目覚めましたの。だから、今ワタクシが婚約している殿方との結婚を、あなたに代わりに受けさせてあげますわ」 こうしてシエルは、必死の抗議も虚しく、身勝手な理由で、新しい婚約者の元に向かうこととなった……横暴で散々虐げてきた家族に、復讐を誓いながら。 新しい婚約者は、社交界でとても恐れられている相手。うまくやっていけるのかと不安に思っていたが、なぜかとても溺愛されはじめて……!? ⭐︎全三十九話、すでに完結まで予約投稿済みです。11/12 HOTランキング一位ありがとうございます!⭐︎

どうぞ二人の愛を貫いてください。悪役令嬢の私は一抜けしますね。

kana
恋愛
私の目の前でブルブルと震えている、愛らく庇護欲をそそる令嬢の名前を呼んだ瞬間、頭の中でパチパチと火花が散ったかと思えば、突然前世の記憶が流れ込んできた。 前世で読んだ小説の登場人物に転生しちゃっていることに気付いたメイジェーン。 やばい!やばい!やばい! 確かに私の婚約者である王太子と親しすぎる男爵令嬢に物申したところで問題にはならないだろう。 だが!小説の中で悪役令嬢である私はここのままで行くと断罪されてしまう。 前世の記憶を思い出したことで冷静になると、私の努力も認めない、見向きもしない、笑顔も見せない、そして不貞を犯す⋯⋯そんな婚約者なら要らないよね! うんうん! 要らない!要らない! さっさと婚約解消して2人を応援するよ! だから私に遠慮なく愛を貫いてくださいね。 ※気を付けているのですが誤字脱字が多いです。長い目で見守ってください。

旦那様、愛人を作ってもいいですか?

ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。 「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」 これ、旦那様から、初夜での言葉です。 んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと? ’18/10/21…おまけ小話追加

処理中です...