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六
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私がそういった途端、会場の電気はほぼ全て消え、視界が暗転する。
「きゃあ!」
「なんだ!!」
そんな声が上がる中、バッと近くの壁に何かが映し出された。
「皆さん落ち着いて、そしてあそこを見てください。」
そう言うと、徐々に皆落ち着き始め、疑問が上がるようになる。
「これは…?」
「まあ少し静かにしてよく見てなさい。」
すると、今まで真っ白だったそこに、二人の人物が映し出された。私とアリスだ。
そこは見慣れた教室。二人しかいない状況。
そう、これは、彼女が嘘をついているという紛れもない証拠。
しばらくすると、映像の中の私が動き出す。そして、立ち上がり、アリスの横を通り過ぎていく。その時インク瓶は…動いていない。そして、私が教室から出ていくと、彼女はそのインク瓶を手に取り……自分にかけた。
その後数人の男たちが教室へ入って来て、泣いているアリスに声を掛ける。
そこで場面は代わり、次はアリスが1人教室にいるところだった。彼女の手には、隠され、捨てられていたと騒いでいたハンカチ。彼女は周りを見て、誰もいないことを確認すると…そのハンカチをゴミ箱に捨てた。
そこで映像は消え、パッと会場は元のように明るくなる。
今まで唖然として見ていた貴族たちは、明かりが戻るとともに我にかえり、ざわつく。
「何だこれは!?」
「こんな技術知らないぞ!?」
ここはアスティルに任せましょうか、そう思い振り向くと、彼は頷いて前に出てくる。
「この技術はつい最近発明されたものでな、皆に紹介するのは初となる。これは動画、といってその場の映像を記録に取っておける、というものだ。父上が私の学校での様子も見たいだとか言ったので教室にこっそり置いていたのだが……まさかこんなものが出てくるとは思ってもいなかったぞ。」
「そんな……嘘よ…こんなこと……」
アリスは放心状態に陥っている。
そうだろう。これで彼女はなにも言い逃れができず嘘は決定的となり、さらに王族に汚名を着せようとした罪も加わるのだから。
殿方を侍らせていたこともあって彼女に良い印象を持っていた女性はかなり少なかったのですけれど、この一件で彼女は皆からの信頼は皆無になるでしょうね。
あ~これでスッキリしますわ!
さて、もうあの子はだいぶ追い詰められたでしょうから……次は、私の元、婚約者様ですわね。
「さて、クロム様。」
「ひっ、な、なんだ!?」
これだけ大事になったので、流石の彼も萎縮しているようですわね。王子が出てきたあたりからすっかり発言が減りましたもの。
でも、彼には彼女よりもっときつい目にあって貰いますわ。ずっと彼には苦渋をなめさせられていましたもの。ふふっ
「貴方、私と婚約破棄いたしましたよね?」
「あ、ああ。そうだ。俺はアリスと結婚するんだ!」
この期に及んでまだそんなこと言ってますのね。きっと彼はアリスが致命的なことをしでかしたという意識はかけらもないのでしょう。
まあ、それは置いといて、
「はたしてその願望、叶いますかしら?」
「……どういうことだ?」
「私は、公爵令嬢ですが、候爵家である貴方と婚約することになったのは、貴方の家から頼み込まれたからですのよ?それなのに貴方は自分の都合で勝手に破棄して……貴方の親御さんはなんて言うかしら?」
「ふんっ!お前がなんと言おうと俺はアリスと結婚する。それに変わりはない!」
「ほぅ、なるほど……それではダクセン候爵ご夫妻、交代していただけますか?」
そう言ってダクセンご夫妻がいらっしゃるところへ呼びかける。お二人は、来たるべきときが来たか、といった覚悟を決めた表情で頷き、前に出てくる。
「父上、母上!二人とも、僕達の結婚を認めてくれますよね?」
「……あぁ。認めよう。」
ダクセン候爵は、怒っているとも取れる圧を感じる真顔で頷く。
クロムはそんな候爵の態度にそれ見たことか、といった顔でニヤニヤとこちらを見下してくる。
だが、そんな彼の余裕の態度もここまでだった。
「しかしこの度のお前の愚行には呆れた。私達はタウネシア家と婚姻をすることにより他国への伝手や財政面など、多大な恩恵を受ける筈だった。それがお前の浮気によってすべてがパァになってしまう。お前のしたことのせいで、それらの恩恵がなくなるだけではない。信頼も無くなるのだ。お前は昔から色々とやらかしはしていたが、親の情と言うべきものでこれまでは我慢してきた。その度に注意もしてきた。だが、流石にもう無理だ。お前がこれ以上うちにいると、うちの信頼は、威厳は、地に落ちていく一方だ。
よって、此度の件により、お前は勘当とする。」
クロムは最後の一言を聞いた瞬間、目を見開き、信じられないものを見たかのような表情で自身の親、だったものを見る。
「そんな……嘘ですよね?だって、僕とアリスとの結婚を認めてくれるって言ったではないですか!そうだ母上!母上はどうなんですか?勘当だなんてそんなひどいことしませんよね?」
そう問われたダクセン候爵夫人も諦めろ、といった顔で首を横に振る。
「これはもう前々から決まっていたの。貴方がもし婚約破棄でもしようものなら今度こそ勘当だと。アリスとの結婚は、下町に降りるか、婿養子としてもらってもらうか自分でなんとかしなさい。貴方は私達とはなんの関係もなくなるのだから、結婚は勝手にしていいのよ。自力でなんとかできるのならばね。」
「そんな……」
彼は、アリスの横で同じように絶望を見たかのようにうずくまった。
「きゃあ!」
「なんだ!!」
そんな声が上がる中、バッと近くの壁に何かが映し出された。
「皆さん落ち着いて、そしてあそこを見てください。」
そう言うと、徐々に皆落ち着き始め、疑問が上がるようになる。
「これは…?」
「まあ少し静かにしてよく見てなさい。」
すると、今まで真っ白だったそこに、二人の人物が映し出された。私とアリスだ。
そこは見慣れた教室。二人しかいない状況。
そう、これは、彼女が嘘をついているという紛れもない証拠。
しばらくすると、映像の中の私が動き出す。そして、立ち上がり、アリスの横を通り過ぎていく。その時インク瓶は…動いていない。そして、私が教室から出ていくと、彼女はそのインク瓶を手に取り……自分にかけた。
その後数人の男たちが教室へ入って来て、泣いているアリスに声を掛ける。
そこで場面は代わり、次はアリスが1人教室にいるところだった。彼女の手には、隠され、捨てられていたと騒いでいたハンカチ。彼女は周りを見て、誰もいないことを確認すると…そのハンカチをゴミ箱に捨てた。
そこで映像は消え、パッと会場は元のように明るくなる。
今まで唖然として見ていた貴族たちは、明かりが戻るとともに我にかえり、ざわつく。
「何だこれは!?」
「こんな技術知らないぞ!?」
ここはアスティルに任せましょうか、そう思い振り向くと、彼は頷いて前に出てくる。
「この技術はつい最近発明されたものでな、皆に紹介するのは初となる。これは動画、といってその場の映像を記録に取っておける、というものだ。父上が私の学校での様子も見たいだとか言ったので教室にこっそり置いていたのだが……まさかこんなものが出てくるとは思ってもいなかったぞ。」
「そんな……嘘よ…こんなこと……」
アリスは放心状態に陥っている。
そうだろう。これで彼女はなにも言い逃れができず嘘は決定的となり、さらに王族に汚名を着せようとした罪も加わるのだから。
殿方を侍らせていたこともあって彼女に良い印象を持っていた女性はかなり少なかったのですけれど、この一件で彼女は皆からの信頼は皆無になるでしょうね。
あ~これでスッキリしますわ!
さて、もうあの子はだいぶ追い詰められたでしょうから……次は、私の元、婚約者様ですわね。
「さて、クロム様。」
「ひっ、な、なんだ!?」
これだけ大事になったので、流石の彼も萎縮しているようですわね。王子が出てきたあたりからすっかり発言が減りましたもの。
でも、彼には彼女よりもっときつい目にあって貰いますわ。ずっと彼には苦渋をなめさせられていましたもの。ふふっ
「貴方、私と婚約破棄いたしましたよね?」
「あ、ああ。そうだ。俺はアリスと結婚するんだ!」
この期に及んでまだそんなこと言ってますのね。きっと彼はアリスが致命的なことをしでかしたという意識はかけらもないのでしょう。
まあ、それは置いといて、
「はたしてその願望、叶いますかしら?」
「……どういうことだ?」
「私は、公爵令嬢ですが、候爵家である貴方と婚約することになったのは、貴方の家から頼み込まれたからですのよ?それなのに貴方は自分の都合で勝手に破棄して……貴方の親御さんはなんて言うかしら?」
「ふんっ!お前がなんと言おうと俺はアリスと結婚する。それに変わりはない!」
「ほぅ、なるほど……それではダクセン候爵ご夫妻、交代していただけますか?」
そう言ってダクセンご夫妻がいらっしゃるところへ呼びかける。お二人は、来たるべきときが来たか、といった覚悟を決めた表情で頷き、前に出てくる。
「父上、母上!二人とも、僕達の結婚を認めてくれますよね?」
「……あぁ。認めよう。」
ダクセン候爵は、怒っているとも取れる圧を感じる真顔で頷く。
クロムはそんな候爵の態度にそれ見たことか、といった顔でニヤニヤとこちらを見下してくる。
だが、そんな彼の余裕の態度もここまでだった。
「しかしこの度のお前の愚行には呆れた。私達はタウネシア家と婚姻をすることにより他国への伝手や財政面など、多大な恩恵を受ける筈だった。それがお前の浮気によってすべてがパァになってしまう。お前のしたことのせいで、それらの恩恵がなくなるだけではない。信頼も無くなるのだ。お前は昔から色々とやらかしはしていたが、親の情と言うべきものでこれまでは我慢してきた。その度に注意もしてきた。だが、流石にもう無理だ。お前がこれ以上うちにいると、うちの信頼は、威厳は、地に落ちていく一方だ。
よって、此度の件により、お前は勘当とする。」
クロムは最後の一言を聞いた瞬間、目を見開き、信じられないものを見たかのような表情で自身の親、だったものを見る。
「そんな……嘘ですよね?だって、僕とアリスとの結婚を認めてくれるって言ったではないですか!そうだ母上!母上はどうなんですか?勘当だなんてそんなひどいことしませんよね?」
そう問われたダクセン候爵夫人も諦めろ、といった顔で首を横に振る。
「これはもう前々から決まっていたの。貴方がもし婚約破棄でもしようものなら今度こそ勘当だと。アリスとの結婚は、下町に降りるか、婿養子としてもらってもらうか自分でなんとかしなさい。貴方は私達とはなんの関係もなくなるのだから、結婚は勝手にしていいのよ。自力でなんとかできるのならばね。」
「そんな……」
彼は、アリスの横で同じように絶望を見たかのようにうずくまった。
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