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総力戦
しおりを挟むそれは普通の人が見れば、いくつもの光が繰り出す幻想的な光景だったというのだろうか?
あまりにも早い、早すぎるその攻防の中ではもはや目に映るのは光だけだろう。
だがその光の中、今まさにそれを生み出している者たちにはそんな無粋な感情が入り込む余地などあろうはずはない。
今まさに誰も知られない所で冒険者の勢力図が変わろうとしているのだ。
先に仕掛けたのはディアドラだ。
口の先に魔力を溜め、自身の咆哮とともに打ち出す――
【ダークネス・ディヴァイス】
レーザービームのように黒い光がブルーノを襲う。
ブルーノは両手で四角を描く、自身を包むほどの四角が描けたときそれは、その大きさの鏡のようなものになった。
「カウンターマジック。」
ダークネス・ディヴァイスはそれに当たった瞬間、反射するように向きを変えアレンの方へ襲い掛かった。
アレンはダークネス・ディヴァイスを大きく飛び上がって回避し落下とともにブルーノに斬りかかる。
ブルーノは手のひらをアレンに向け握りつぶすようなしぐさを見せるとアレンの動きが空中で止まり体が急激に締め付けられる感覚に陥る。
だがその時にはゴンゾウが下からブルーノの死角に入っており居合の仕草でスライム一刀流【椿一閃】を繰り出そうと剣を加速させようとした時――
「遅いよ......」
いつの間にかブルーノはその大きすぎる目を見開いてゴンゾウの目の前まで来ておりアレンを握っている逆の手の人差し指で雷切の柄の底を抑えて剣の始動を止めてしまう。
初めて対峙したゴンゾウは心の底から恐怖した。
悪意しかない暴力性を帯びた目を初めて見たからだ。
圧倒的暴力は強さとはまた違う。
この人は人間でもなければモンスターでもない。
悪意そのものだ。
ゴンゾウはそう理解した。
だが恐怖とは理解ができてもなお打ち勝つことは難しい。
それを超えれたのはまさしく――
「どけ!! 相棒!!」
ディアドラが大きな口を開けてゴンゾウの後ろから飛び出しブルーノの頭から胸の下までを
ガブリ!!!!
食いちぎってしまった。
「バリッバリッバキバキ!!! 匂いがヒドイな。喰えたもんじゃない。」
ベッと吐き出した物はもはやモザイク処理になるような状態だ。
上半身を無くしたブルーノだがフラフラとさまようように歩いたと思うと傷口からボコボコボコ!!!と勢いよく肉が噴き出しあっという間に元のブルーノになってしまった。
「きゅぴきゅぴーーー!!??」
「服が治っているなど今はどうでもいいじゃろうが!!」
「ずいぶん余裕ですね。あのくらいで私を倒したつもりですか?」
「貴様こそまだ攻撃は終わってないぞ。」
ディアドラとゴンゾウは共に真上に飛び上がる。
その行動にハッと上を見た時、空から閃光の光が落ちてきた。
「ディヴァインボルトォォォォオオオオオオ!!!!!!!」
超高圧の雷撃がブルーノの脳天から足元へ駆け抜けていった。
真っ黒の炭とかしたブルーノ。
サラサラとどこかから吹く風に乗って体の炭が粉になりブルーノの体が消えていった。
だがその粉が再び意思を持ったように集まりだしそこから肉が生まれ、またブルーノを形成してしまった。
空中でゴンゾウはディアドラの頭に乗り【縮地】で距離を取り着地する。
アレンも【縮地】を使いその隣りへと着地した。
「これちょっとまずいな。ここまで厄介だとは思わなかった。」
アレンは頭を掻きながらどうするよ? と2匹に問う。
「奴の力は依代だ。それをなんとかせねばならん。」
その言葉でアレンは一つの可能性にピンとくる。
「もしかすると何とかなるかもしれない。」
アレンの言葉にゴンゾウとディアドラが 本当か!? という表情でアレンを見た。
「だけどどうなるかわかんねぇ。もしかしたら何にもできないかもだし、俺も無事じゃすまないかも......」
「今はそれにかけるしかないのだな。」
「きゅぴ......」
心配そうにアレンを見る2匹。
「でどの程度時間がいるのだ?」
「さすが!! よくわかってる。でもそれもわからん。とにかくやってみるしか......」
アレンは鬼丸をスッとゴンゾウに差し出す。
「鬼丸! ゴンゾウに力を貸してやってくれ。俺よりうまく使ってくれるよ。」
「あぁ、事情は分かっている。だが一時だけだぞ!! 約束しろ!!」
「わかってるよ。頼んだぞ鬼丸。ゴンゾウ、少し任せていいか?」
「きゅぴきゅぴきゅぴ!!!!」
任せろ!! と言っているのだろう。力強く鬼丸を受け取ったゴンゾウ。
その時、嫌な風がアレン達を通り過ぎた。
「友情ごっこもそこまでですよ。吐き気がしますので。少しあなたたちを見くびっていたのかもしれません。私もなりふり構ってはいられないようです。」
ブルーノはにこりと笑い、常に放っていた嫌な殺気を急に解いた。
「何かする気だな。」
「気にするな。後は我らに任せよ。主よ。」
ディアドラの言葉に静かにうなずき【縮地】を使い後方へ飛びのく。
「任せたぞ。みんな。」
アレンは遠くなるみんなの姿に「すぐに戻ってくる。」と強い意志を目に宿した。
2匹はアレンの方を見ることなく信頼の背中を見せ続けていた。
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