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技チェック

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 手に入れたのなら試したい、それが人間というもの。
 アレンはすぐにあの野犬に襲われた森の奥へと向かった。
 といっても野犬たちに復讐などする気はない。

 人目につく場所ではこいつらを外に出せないからだ。
 アレンは到着するなりゴンゾウとディアドラを魔晶石から出した。

「中で聞いてたと思うけどこれが俺の新しい武器 『鬼丸』だ。」

 鬼丸を空につき上げ余韻に浸るアレン。
 ゴンゾウもまねして雷切を突き上げる。

「良い刃をしている。」

 ディアドラも感心したのかアレンに近づいたとき不意に違和感に気づく。

「これは……」

 一瞬怪訝な顔を見せるディアドラだが

「そうか……つくづく退屈させぬ主じゃの。」
「何のことだ? ディアドラ?」
「いや、何でもない。じきにわかるよ。」

 ニヤッと口角を吊り上げ牙を見せるディアドラ。
 さすがはウォーウルフ、こういう顔が様になる。

 気味の悪い顔を見せられそれ以上聞くのをやめてしまった。

「まぁいいや。まずはダンジョンアタックの日まで自分に何ができるのかを把握しとかないとな。
 まずは鬼丸を使って何ができるのか。」

 アレンはディアドラの不可解な言葉も早々スルーし興味を鬼丸に移す。
 とはいえゴンゾウのスキル【全武器,防具装備可能】により扱いに関してはすぐに対応できるだろう。

 技術的な感覚はすべてスキルのレベルによって反映される。
 ゴンゾウの【スライム一刀流】のスキルを使えばかなりの腕前で鬼丸も使えるはず。

 そういったスキルの確認も含めて今回はここに来たのである。

【スライム一刀流】にはいくつかの技がある。
 もちろんスライムの体だからこそできるものもあれば技によって感覚を増強させる技もある。
 例えば、

「【スライム一刀流】椿一閃!!」

 アレンは頭に浮かぶイメージでゴンゾウのスキル【スライム一刀流】を使用する。
 技名も使用方法も頭に勝手に思い浮かぶ。

 アレンは鬼丸を鞘に入れたまま低く構え、高速の横一文字で刃を抜く。
 振り切られた刃から数十センチほど先の大木に チュン!! と刃で切りつけた傷が入った。

「これはなかなか。とわいえやっぱステータスが低いとこんなもんなのかね。」

 アレンの横で十数メートル先の大木たちをバターのように両断するゴンゾウをちらりと見やり やれやれ といった顔で鬼丸を見る。

「俺もあんな力があればなぁー。」
「キャピキュピ。」

 気力のそがれる相棒の技につい、いじけた声を出すアレン。

 しかしやはりと言うべきか刀の感触などは初めて使ったとは思えないほど体に馴染む。
【全武器 防具装備可能】のスキルのおかげで特に違和感なく鬼丸を使えている。

 さらにはスキル【スライム一刀流】のおかげで立会いの際のイメージまで湧いてくる。技だけでなく刀を使った戦い方までスキルで補正できるのだからとんでもない。

 とはいえステータスが無いに等しいアレンではこれでも戦力にはなり得ない。

 ディアドラを仲間にする前までは使えた魔法も今では魔力が足りないのか発動さえしなくなっていた。

「なかなか噛み合わないんだよな。俺の力ってのは。」

 はぁ と深いため息をしその場にうなだれてしまう。
 そんな時、不意にどこかほんの近くから声が聞こえた。

「力が欲しい?」

 消え入りそうな少女の声。
 とっさに周囲を確認するが誰もいない。

「何だ今の……? ディアドラ、この周辺に誰かの気配はあるか?」

 アレンの言葉に伏せて前足を枕にし昼寝のポーズをとっていたディアドラは薄目を開けて

「いや、なにも……」

 そう言うと ふぁ~ わふぅ~ とあくびをし、また目を閉じてしまった。
 不思議に思うアレン。周りを確認したがさっきの声はすぐ近くで聞こえた。
 そう、この刀から聞こえたくらい近くで、、、

「気のせいか……」

 さすがにまだダンジョンの疲れが抜けていないのかもしれない。
 今日はあまり遅くならないようにしよう。
 数個の技を確認しその日は早めに宿に帰った。
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