上 下
20 / 58

お風呂

しおりを挟む
 3階層から地上までモンスターに会うこともなくすんなり地上に戻ることができた。
 それだけディアドラがここらの階層に出現したのは異常事態だったのだ。

 朝に出発したアレンたちは昼になる前にダンジョンを脱出していた。

「なんだか久しぶりに外に出た気がする。ダンジョンも明るいけどやっぱり外の光はまた違うねぇ~。」
「あんた本当に呑気ね。昨日は命がけの戦いをしたとは思えないわ。」

 しみじみ語る二人だが街へ戻るとその異様な雰囲気に気づく。

「なに?なんかざわついてる、、、何かあったのかな?」

 不安そうなニアをよそにアレンは道行く男を呼び止め何があったか聞いていた。

「はぁ?おめぇ知らねぇのか?あぁ、、ダンジョン帰りのルーキーか。なら知らねぇのも無理はねぇ。」

 男は興奮した様子で話し始める。

「なんでもよ。70階層のヌシ、ウォーウルフが遂に討伐されたって電報が来て街は祭りの準備をしてたんだよ。
 それがよ、昨日の夜ごろ傷だらけの冒険者がダンジョンから戻ってきて、、、なんと5階層で討伐したはずのウォーウルフが息を吹き返して魔晶石ぶち破って出てきたんだとよ。
 たちまち周りのやつらはやられちまって。ウォーウルフを討伐したはずの剣聖様のパーティーも70階層を突破するや否やそのまま奥の階層に行っちまってその場にはいなかったらしいんだよ。
 まだ討伐されてないらしくて5階層をうろついてる可能性もあるんだとよ。」

 正直驚いたがよく考えると当たり前の話だった。
 長年、冒険者の進行を妨げていたモンスターが浅い階層で解き放たれたのだ。
 モンスターはよほどのことがないかぎりダンジョンから出ることはないがそれでも浅い階層のモンスターが地上で確認されることも少なくない。
 それがディアドラのような危険度超級モンスターとあらば街も穏やかではいられないはずだ。

「お前ら気をつけろよ。とはいってもダンジョンは高ランクパーティー以外はしばらく封鎖されるって話だがな。」
「えっ!!じゃあダンジョンに入れないって事かよ!しばらくってどのぐらいなんだ?」
「さぁな。とりあえず安全が確保されるまでじゃないか?もしかすると王国軍の出兵の可能性もあるって言ってたからな。」
「そんな~、、、高ランクってどのぐらいのランクなんだ?」
「詳しいことはギルドに聞いた方がいいだろうよ。だがウォーウルフ相手となっちゃーな。少なくとも【シンカー】以上の冒険者でないとダメなんじゃねぇーかな?」

 冒険者には功績や実力などを考慮しランク分けが施されている。
 ダンジョンへのアタックは冒険者個人による権利となるが、高難度クエストなどはギルドからランク規制することが多く
 その間はダンジョンへのアタックが禁止されることも多い。
 したがって冒険者は更なる名誉のため上位ランクを目指すことを目標に冒険するという者も多い。


「【シンカー】って上級冒険者じゃない!!そんな人じゃないとダンジョンに入れなくなるの?!」
「だから俺にはわからねぇって、、ギルドで聞いてくれよ、、とはいっても今お前らみたいな冒険者でごった返しててとても聞ける様子じゃなかったけどな。」

 男はニアの勢いに押され何も悪いことはしていないのに逃げるようにその場を後にした。
 むーと顔をしかめて難しい顔をするニア。

「まだ規制は張られてないみたいだしギルドも今聞けるような状況じゃないみたいね。
 私たちも今戻ったところだしアイテムの換金もしたいけど魔石はギルドでしか買取はしてないのよね。とりあえず先にお婆ちゃんに診断してもらうのが先ね。
 今なら職業診断所だわ。でもさすがにそこでゴンちゃんとディアちゃんを出すわけにもいかないし私の家に来なさいよ。どうせ宿も取ってないんでしょ。家でお婆ちゃんを待ちましょ。」
「えっ……ニアの家……」

 突然のニアの誘いに一瞬頭が真っ白になるアレン。
 たしかに1度来たことはあるのだが、こう真正面から誘われると……
 もじもじとニアの顔を見るアレン。

「なに?あたしの顔になんかついてる?」
「へっ!いや……なにも……それじゃあお言葉に甘えて。」
「へんなの?あーほんとに疲れた。早くお風呂に入りたーい。体べとべと。」
「べとべと……」

 疲れたーと、腕を伸ばし大きく伸びをするニア。
 細く引き締まった体のライン弓なりに反り形のいいふくらみを前に押し出すような姿勢をとる。。
 ニアは体は細いのだが出るところはしっかり出ており年齢よりもずっと大人っぽく見えアレンと同じ年には見えない雰囲気がある。
 さっきまで真っ白だった頭の中はすでにまっピンクに染まっていた。

「アレン、ゴンちゃんとディアちゃんも一緒にお風呂に入れるから魔晶石から出して。」

 当たり前のように言うニアにアレンは「一緒に!!」と声を荒げる。

「なによ? ダンジョンで汚れてるだろうから体を洗ってあげようってだけじゃない。早くしてよ。」

 タオルなどを用意しながらニアはいそいそとお風呂の支度をしている。
 アレンはニアの言うとうりに2匹を魔晶石から出す。

「私はあまり水浴びの習慣などないので気は進まんが……」
「ダメよ! ディアちゃん! 体もドロドロだしちゃんときれいにしないと!!」
「むぅ~ワフ……」

 ニアの強い口調に仕方ないと犬のように鳴くディアドラ。
 なぜ嫌がる? 俺と変わってくれ。アレンはディアドラを横目でにらむ。
 ゴンゾウは相変わらず何がうれしいのか部屋を飛び跳ねている。

 そのままトボトボとニアの後ろをついていくディアドラ。
 アレンはしれっとディアドラの後ろについていきお風呂場の脱衣所の扉の前までついてきたところでニアに バタン!!  と強めに扉を閉められてしまった。

 なんだか自分が恥ずかしくなったアレンだった。

 じきにお風呂場でキャッキャという声が聞こえてきた。
 もちろんアレンは急いで外に出て家の裏手に回った。
 アレンは知っていた。
 風呂場に小窓があることを。

 ニアの家の裏は丘になっていて傾斜があり木や草も生い茂っている。
 逆にその環境が覗きという行為を隠してくれる効果がある。
 アレンは草を分け 木を潜り 手入れのされていない裏庭を進んでいく。

 あった!!

 小窓は家の屋根の下の位置についており手を伸ばしても届かないくらい。
 アレンは家から持ってきた椅子を全くの無表情で小窓の下に置きその上に乗る。

「はぁはぁ これが本当の はぁはぁ なのか。ん? 俺は今何を言っているんだ。」

 興奮でわけがわからなくなっているアレンだが目の前に餌をつられりゃ誰だって。

 小窓からはモアモアと白い湯気が出てきている。

「あの湯気はニアが通り過ぎた湯気!!」

 くんかくんか と鼻をピクピクさせながら湯気をありがたく吸い込むアレン。
 もちろんこれで満足するわけではない。

「前菜は終わりだ。メインディシュは早めにいただくタイプなんだぜ俺は。」

 全くもって意味のわからない言葉を発しながらアレンは風呂場の小窓を覗くのだった。

 お湯から出る湯気によって視界は悪かったがある程度見えなくもない。

 うっすらと湯気の隙間からディアドラの体を洗っているニアの姿が見えてきた。

 おぉぉぉぉ!!!

 危なく声に出しそうになった心の声をかみ殺す。
 白く透き通った滑らかな肌が確認できる。
 ニアは石鹸でワシャワシャとディアドラの体毛を泡立てておりその泡に隠れて腕を動かすたび揺れる程よく大きな二つのふくらみがあった。

「くそ、ディアドラじゃまだ。湯気でよく見えない。」

 アレンはそのまんまスケベな顔で小窓に食い込むほど顔を押し付けている。もはや窓になっている。

 異変に気付いたのはディアドラだった。すぐにゴンゾウも気づき現状を理解した。

「やれやれ、困った主だ。」

 はぁ~とため息を吐きながらげんなりするディアドラ。

「なに? どうしたの?」

 ニアの不思議そうな顔をよそにディアドラはやれやれという顔で

「女よ。すまんな。主の願いとあらば断れん。」

 ディアドラはそういうとゴロンと床に仰向けに寝転び体をクネクネさせた。

「ちょっとディアちゃん?何してるの!まだ洗い終わってないわよ!」

 ? な顔をするニア。
 アレンは「もうちょっとなのに!」とニアの体を見るのに必死で中のやりとりなど聞こえていない。

 仰向けになったディアドラは大きく息をすきこみその息をそっと吐き出した。
 ディアドラ自身は そっと はいたのだがそれは強烈な風を巻き起こし風呂場の中を駆け回る。

「きゃぁぁ!! なんなのいったい?!」

 泡と湯気が入交る空気は強烈な風からの逃げ場を求めてアレンの覗いている小窓から一気に噴き出した。

「おぶぶぶおぶぶぶぶ……」

 湯気と泡を同時に浴びながら怯むアレン。
 再び覗き込むと風が収まり次第に湯気が晴れていっている。

 さっぱりと湯気が晴れきったその先にはディアドラが仰向けになり股を開き渋い声でアレンに

「主よ。これが見たかったのだろう。」
「なわけあるか!!! てめぇオスだろうが!!!!」

 激しい突込みが風呂場にこだました。

「あっ……」

 アレンの方を見てあっけにとられるニア。
 あまりにも驚いたニアは自分の体を隠そうともせずただただポカーンとしている。
 その一糸まとわぬ姿にアレンは目玉が飛び出て舌がグルグルにねじれて飛び出た。

 それにしても何とも美しい体だ。
 水をピチピチにはじいている健康的な肌。
 スレンダーだがさすが冒険者というべき鍛えられた身体。
 重力をものともしない斜め45度に持ち上がったお尻。
 そしてその豊かで寄せなくても自然と谷間ができる文化遺産に登録すべき丘が二つあった。

 もっと小窓に張り付いて覗き込みたいのだがアレンの股間がズボン越しに壁に突き刺さりこれ以上近づくことが出来なくなっていた。
 バキバキのギンギンなそれは今にも壁を突き破りそうだ。

 アレンは満足した笑顔でにっこりとニアに会釈をしてそのまま小窓から消えていった。

「ねぇ、今そこの窓に誰かいた,,,,?」

 誰に尋ねるでもなく独り言のようにつぶやくニア。
 股を広げ鼻の先に泡をつけたディアドラが渋く答えた。

「いや、なにも……」

 風呂場から出たニアが一直線にアレンをボコボコにしたのは言うまでもない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

前略、旦那様……幼馴染と幸せにお過ごし下さい【完結】

迷い人
恋愛
私、シア・エムリスは英知の塔で知識を蓄えた、賢者。 ある日、賢者の天敵に襲われたところを、人獣族のランディに救われ一目惚れ。 自らの有能さを盾に婚姻をしたのだけど……夫であるはずのランディは、私よりも幼馴染が大切らしい。 「だから、王様!! この婚姻無効にしてください!!」 「My天使の願いなら仕方ないなぁ~(*´ω`*)」  ※表現には実際と違う場合があります。  そうして、私は婚姻が完全に成立する前に、離婚を成立させたのだったのだけど……。  私を可愛がる国王夫婦は、私を妻に迎えた者に国を譲ると言い出すのだった。  ※AIイラスト、キャラ紹介、裏設定を『作品のオマケ』で掲載しています。  ※私の我儘で、イチャイチャどまりのR18→R15への変更になりました。 ごめんなさい。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

旦那様、どうやら御子がお出来になられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉

Hinaki
ファンタジー
「初めまして、私あなたの旦那様の子供を身籠りました」  華奢で可憐な若い女性が共もつけずに一人で訪れた。  彼女の名はサブリーナ。  エアルドレッド帝国四公の一角でもある由緒正しいプレイステッド公爵夫人ヴィヴィアンは余りの事に瞠目してしまうのと同時に彼女の心の奥底で何時かは……と覚悟をしていたのだ。  そうヴィヴィアンの愛する夫は艶やかな漆黒の髪に皇族だけが持つ緋色の瞳をした帝国内でも上位に入るイケメンである。  然もである。  公爵は28歳で青年と大人の色香を併せ持つ何とも微妙なお年頃。    一方妻のヴィヴィアンは取り立てて美人でもなく寧ろ家庭的でぽっちゃりさんな12歳年上の姉さん女房。  趣味は社交ではなく高位貴族にはあるまじき的なお料理だったりする。  そして十人が十人共に声を大にして言うだろう。 「まだまだ若き公爵に相応しいのは結婚をして早五年ともなるのに子も授からぬ年増な妻よりも、若くて可憐で華奢な、何より公爵の子を身籠っているサブリーナこそが相応しい」と。  ある夜遅くに帰ってきた夫の――――と言うよりも最近の夫婦だからこそわかる彼を纏う空気の変化と首筋にある赤の刻印に気づいた妻は、暫くして決意の上行動を起こすのだった。  拗らせ妻と+ヤンデレストーカー気質の夫とのあるお話です。    

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

処理中です...