79 / 85
79話
しおりを挟む
私がオルレウス国に来てから初めて年が明けた。新年のお祝いは盛大に催され、連日飲めや歌えやの宴が各地で開かれたらしい。
「あっという間に年が明けましたわね」
「そうだな。待ちに待ったリリーとの結婚式も後一ヶ月後だ」
私達は相変わらずバタバタと行動して忙しくしていたから月日が経つのがあっという間に感じた。
こうしてディアス様と二人っきりの時間にも慣れて、ディアス様から色々と世話をされるのも多少慣れてしまった。
「早いですわね・・・私、しっかりと女王になれるかしら?」
「まだそんな心配をしているのか?大丈夫だ、父上や母上もリリーの事を絶賛していたじゃないか!」
「それは、そうですけど・・・不安にもなるんです」
ディアス様のお義父様とお義母様にお会いしたのは去年の十一月の終わりの頃だった。
あの日は風が強くてしかも冷たい風が吹いていた。私は厚着をして訓練場でいつも通りの訓練をしていたら、訓練場の入り口から綺麗な顔をした男性と女性が入って来た。
「こんにちは、久しぶりに身体を動かしたいので少し手合わせしてもらいたいのだが・・・良いかな?」
角が立派だわ・・・。初めて見る顔だけど何処かで見たことある様な・・・。
「えっと、はい。私で良ければお引き受けいたしますわ」
「ありがとう。では、よろしく頼む」
そう言うとダンディーな紳士は一緒にいた女性を下がらせ、近くにいた兵から切れないようにした剣を受け取り構えた。
「こちらこそ、よろしくお願いしますわ」
私も愛用の鞭を構え、距離をとる。お互いにジリジリと間合いを詰め、先に動いたのはダンディーな紳士だった。
「ハァッ!!」
剣を振り上げ素早く私に打ち込んできた!クッ、ここにいる兵たちよりも速いわ。
私はすかさずバックステップをとり、回避した。
「・・・私、名前をお聞きし忘れていましたわ。私の名前はリリーと申します。ダンディーな紳士様のお名前を教えていただけませんか?」
「おっと、申し遅れたな。私の名前はシュタイン・オルレウスだ。この国の前龍王をしていた」
・・・あ、肖像画の人!!どうりで見たことのある人だと思ったわ。
「あっ、前龍王様とは気づかず申し訳ございません!」
私は地面に跪き頭を下げた。気づかなかったとは言え、礼儀を欠いてしまったのは痛い・・・。
「ハハッ、気にするな。ディアスの婚約者が気になってつい、意地悪をしてしまったな。リリー嬢、面をあげよ。さっきの続きをしようではないか?」
「・・・あ、手合わせの続きですか?」
私、前龍王様と手合わせしても大丈夫なのかしら?ちょっと心配になり周りを見るとルイスが口パクで『気にせず楽しんで手合わせして下さい』と言っていた。
それなら大丈夫?なのよね。
「それしか無いだろう?ほら、私の番いも楽しそうに手を振っている・・・ほら、武器を構えないと怪我をするぞ?」
前龍王様が指を差した方をみると綺麗な女性が手を振っていた。あの方が番いの方なのね・・・私とはまた違ったタイプの女性だわ。なんていうか、ほんわかと暖かそうな日向みたいなイメージね。
そんな事を考えていたら不意を突かれた。
「グッ・・・はぁはぁ、重い一撃ですわね。流石、前龍王様・・・まだまだ現役でも大丈夫なのでは?」
居合で一撃、腕に食らってしまった。折れてはなさそうだけど打撲かしら、痛くて力が入らなそう・・・。利き腕じゃ無くて良かった。
「クハッ、いつまでも私が居座っていてはディアスが甘えてしまうからな!これも試練の内だ。それにしても、今の一撃で気を失わないのは素晴らしい!ディアスは良い番いを見つけて来たな!」
「はぁ、ありがとうございます?」
何だか凄く楽しそうな雰囲気を出して笑っているわね。この方も脳筋・・・?
「ほら、ディアスのお嫁さんが困っていますよ。ごめんなさいね、この人ったら強い人を見ると戦いたくなっちゃうみたいで、貴女の事もディアスから聞いて戦いたくなっちゃったの。怪我を治しちゃいましょうね」
ヒョイッと顔を出して前龍王様の番いの方が来て、怪我を治してくれた。
「怪我を治していただいてありがとうございます」
「良いのよ、気にしないで?そうだわ、自己紹介よね!私はシャルロット・オルレウスよ。気軽にお母様って呼んでいいわよ?」
パチンッとウィンクされてしまった。それに、そんな気軽にお義母様呼びは難しいですわ・・・。
と、まぁそんなこんなで脳筋お義父様とほんわかお義母様との邂逅は終わったのよね。嫌われなくて良かったけど好かれ過ぎも大変なのね・・・。女王の心構えもリリーちゃんなら大丈夫よっ!しか言ってもらえなかったし、お義父様なんか文句がある奴はねじ伏せれば大丈夫だっ!って、あまり参考にならなかった。
結婚式まで残り一ヶ月、悔いのない生活をしましょう!
「あっという間に年が明けましたわね」
「そうだな。待ちに待ったリリーとの結婚式も後一ヶ月後だ」
私達は相変わらずバタバタと行動して忙しくしていたから月日が経つのがあっという間に感じた。
こうしてディアス様と二人っきりの時間にも慣れて、ディアス様から色々と世話をされるのも多少慣れてしまった。
「早いですわね・・・私、しっかりと女王になれるかしら?」
「まだそんな心配をしているのか?大丈夫だ、父上や母上もリリーの事を絶賛していたじゃないか!」
「それは、そうですけど・・・不安にもなるんです」
ディアス様のお義父様とお義母様にお会いしたのは去年の十一月の終わりの頃だった。
あの日は風が強くてしかも冷たい風が吹いていた。私は厚着をして訓練場でいつも通りの訓練をしていたら、訓練場の入り口から綺麗な顔をした男性と女性が入って来た。
「こんにちは、久しぶりに身体を動かしたいので少し手合わせしてもらいたいのだが・・・良いかな?」
角が立派だわ・・・。初めて見る顔だけど何処かで見たことある様な・・・。
「えっと、はい。私で良ければお引き受けいたしますわ」
「ありがとう。では、よろしく頼む」
そう言うとダンディーな紳士は一緒にいた女性を下がらせ、近くにいた兵から切れないようにした剣を受け取り構えた。
「こちらこそ、よろしくお願いしますわ」
私も愛用の鞭を構え、距離をとる。お互いにジリジリと間合いを詰め、先に動いたのはダンディーな紳士だった。
「ハァッ!!」
剣を振り上げ素早く私に打ち込んできた!クッ、ここにいる兵たちよりも速いわ。
私はすかさずバックステップをとり、回避した。
「・・・私、名前をお聞きし忘れていましたわ。私の名前はリリーと申します。ダンディーな紳士様のお名前を教えていただけませんか?」
「おっと、申し遅れたな。私の名前はシュタイン・オルレウスだ。この国の前龍王をしていた」
・・・あ、肖像画の人!!どうりで見たことのある人だと思ったわ。
「あっ、前龍王様とは気づかず申し訳ございません!」
私は地面に跪き頭を下げた。気づかなかったとは言え、礼儀を欠いてしまったのは痛い・・・。
「ハハッ、気にするな。ディアスの婚約者が気になってつい、意地悪をしてしまったな。リリー嬢、面をあげよ。さっきの続きをしようではないか?」
「・・・あ、手合わせの続きですか?」
私、前龍王様と手合わせしても大丈夫なのかしら?ちょっと心配になり周りを見るとルイスが口パクで『気にせず楽しんで手合わせして下さい』と言っていた。
それなら大丈夫?なのよね。
「それしか無いだろう?ほら、私の番いも楽しそうに手を振っている・・・ほら、武器を構えないと怪我をするぞ?」
前龍王様が指を差した方をみると綺麗な女性が手を振っていた。あの方が番いの方なのね・・・私とはまた違ったタイプの女性だわ。なんていうか、ほんわかと暖かそうな日向みたいなイメージね。
そんな事を考えていたら不意を突かれた。
「グッ・・・はぁはぁ、重い一撃ですわね。流石、前龍王様・・・まだまだ現役でも大丈夫なのでは?」
居合で一撃、腕に食らってしまった。折れてはなさそうだけど打撲かしら、痛くて力が入らなそう・・・。利き腕じゃ無くて良かった。
「クハッ、いつまでも私が居座っていてはディアスが甘えてしまうからな!これも試練の内だ。それにしても、今の一撃で気を失わないのは素晴らしい!ディアスは良い番いを見つけて来たな!」
「はぁ、ありがとうございます?」
何だか凄く楽しそうな雰囲気を出して笑っているわね。この方も脳筋・・・?
「ほら、ディアスのお嫁さんが困っていますよ。ごめんなさいね、この人ったら強い人を見ると戦いたくなっちゃうみたいで、貴女の事もディアスから聞いて戦いたくなっちゃったの。怪我を治しちゃいましょうね」
ヒョイッと顔を出して前龍王様の番いの方が来て、怪我を治してくれた。
「怪我を治していただいてありがとうございます」
「良いのよ、気にしないで?そうだわ、自己紹介よね!私はシャルロット・オルレウスよ。気軽にお母様って呼んでいいわよ?」
パチンッとウィンクされてしまった。それに、そんな気軽にお義母様呼びは難しいですわ・・・。
と、まぁそんなこんなで脳筋お義父様とほんわかお義母様との邂逅は終わったのよね。嫌われなくて良かったけど好かれ過ぎも大変なのね・・・。女王の心構えもリリーちゃんなら大丈夫よっ!しか言ってもらえなかったし、お義父様なんか文句がある奴はねじ伏せれば大丈夫だっ!って、あまり参考にならなかった。
結婚式まで残り一ヶ月、悔いのない生活をしましょう!
0
お気に入りに追加
113
あなたにおすすめの小説
番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。
運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
幸せなのでお構いなく!
棗
恋愛
侯爵令嬢ロリーナ=カラーには愛する婚約者グレン=シュタインがいる。だが、彼が愛しているのは天使と呼ばれる儚く美しい王女。
初対面の時からグレンに嫌われているロリーナは、このまま愛の無い結婚をして不幸な生活を送るよりも、最後に思い出を貰って婚約解消をすることにした。
※なろうさんにも公開中
【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです
大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。
「俺は子どもみたいな女は好きではない」
ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。
ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。
ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。
何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!?
貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。
【完結】わたしはお飾りの妻らしい。 〜16歳で継母になりました〜
たろ
恋愛
結婚して半年。
わたしはこの家には必要がない。
政略結婚。
愛は何処にもない。
要らないわたしを家から追い出したくて無理矢理結婚させたお義母様。
お義母様のご機嫌を悪くさせたくなくて、わたしを嫁に出したお父様。
とりあえず「嫁」という立場が欲しかった旦那様。
そうしてわたしは旦那様の「嫁」になった。
旦那様には愛する人がいる。
わたしはお飾りの妻。
せっかくのんびり暮らすのだから、好きなことだけさせてもらいますね。
愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
逃した番は他国に嫁ぐ
基本二度寝
恋愛
「番が現れたら、婚約を解消してほしい」
婚約者との茶会。
和やかな会話が落ち着いた所で、改まって座を正した王太子ヴェロージオは婚約者の公爵令嬢グリシアにそう願った。
獣人の血が交じるこの国で、番というものの存在の大きさは誰しも理解している。
だから、グリシアも頷いた。
「はい。わかりました。お互いどちらかが番と出会えたら円満に婚約解消をしましょう!」
グリシアに答えに満足したはずなのだが、ヴェロージオの心に沸き上がる感情。
こちらの希望を受け入れられたはずのに…、何故か、もやっとした気持ちになった。
王弟殿下の番様は溺れるほどの愛をそそがれ幸せに…
ましろ
恋愛
見つけた!愛しい私の番。ようやく手に入れることができた私の宝玉。これからは私のすべてで愛し、護り、共に生きよう。
王弟であるコンラート公爵が番を見つけた。
それは片田舎の貴族とは名ばかりの貧乏男爵の娘だった。物語のような幸運を得た少女に人々は賞賛に沸き立っていた。
貧しかった少女は番に愛されそして……え?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる