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63話

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ディアス様と一緒に行ったのはやっぱり最上階だった。部屋に入るとディアス様が龍になり私を咥え、定位置に横になると私をそこに下ろした。

「ディアス様、咥えられると驚くので先に言って下さい・・・違う意味でドキドキしましたわ!」

「リリーと早く寛ぎたかったから許して?最近はあまりくっついていなかったからリリー成分が不足してるんだ」

咥えられドキドキしていたのが落ち着き、ディアス様をみると元気が無かった。一緒にいる時間は私は普通だと思うのだけどやっぱりディアス様的には凄く少ないのよね?

それにしてもリリー成分ってどんな成分なのか未だに分からないわ。

「分かりましたわ。暫く二人でくっついてましょうか?」

私がそう言うとディアス様が顔を近づけ頬を鼻先でグリグリした。

「ふふっ、くすぐったいですわ。私も・・・」

龍の愛情表現なのだろうけどくすぐったい。私もお返しにディアス様の頬の辺りにスリスリとした。

グルルル・・・。

「リリー、それ気持ちいい・・・もっとして?」

あら、甘えた鳴き声をするの初めてかも。

「ココ、ですか?」

さっきと同じ場所をスリスリするとふにゃりと私の膝上に頭を置き、甘えてきた。

グルルル・・・スゥー・・・。

そのまま撫でていたら寝てしまった。気持ち良さそうに寝ているわね。

「ディアス様、おやすみなさい」

ふわぁ~・・・。

私も運動の後だから眠くなってきたわ。このまま寝てしまおうかしら・・・。



少し肌寒くなって目が覚めた。膝の上にはディアス様が気持ち良さそうにまだ寝ている。

「んーっ・・・もうこんな時間か、三十分だけの予定がたぶん二時間くらい経ってるわね」

それに陽が傾き始めているからもう夕方ね。誰も起こしに来ないなんて何かあったのかしら・・・あっ!

部屋の扉から先に入れず頑張って結界を解除しているルイスがいた。ディアス様ったらまたルイスに意地悪して・・・。

「ディアス様、そろそろ起きて下さい。夕方ですよー」

私がぽんぽんと叩き声をかけるともぞもぞと動き始めた。

「・・・リリー、おはよ。久しぶりに良く寝れた」

そう言うと、龍から人型に変化し私を膝の上に座らせた。

「ディアス様、おはようございます。良く寝れて良かったですわ。後、ルイスが苦戦しているので結界を解いてあげて下さいな」

ルイスが気づいたのか半泣きでこっちを見ていた。え、半泣き?かなり前から苦戦していたのかしら・・・。

「しょうがない・・・」

パチンッ!

スッと結界が消えルイスが走ってきた。

「やっと消えたーっ!!ご主人、お願いだから結界張らないで!?前回より強力で全然解除出来なかったんだからな!?」

凄い剣幕でディアス様に言っているけど、半泣きから大泣きに変わってズビズビしているから可愛いわね。

「リリー、俺の弟が可愛すぎるんだがどうしたら良いだろうか?」

フッ、と横を見たらクロムがルイスを真顔で見て言っていた。

「クロム、貴方ってブラコンなのね?それと、ここにいるって事は結界を解除して入ったの?」

「いや、ブラコンじゃ無いぞ?それと結界の解除は朝飯前だな。敵情視察で侵入するのに良く使った」

クロムが自慢げに言ったが、だったらルイスを助けてあげれば良かったのに・・・。

「結界を解くのに苦戦してたんだから手伝ってあげれば良かったじゃない?駄目なの?」

「リリー、あの半泣きのルイスが可愛いから俺は頼まれても助けないぞ?」

何を言っているのか分からないわ。クロムの性格歪み過ぎよ?

「クロムって嗜虐性しぎゃくせいがあったのね」

私が言うと少し考え頭を横に振った。

「たぶん俺のコレは、可愛いもの限定だ。俺が可愛いと思ったモノだけ少し虐めたくなる」

「余計にタチが悪いわね!?・・・私は虐められた覚えが無いけどクロムの可愛いに当てはまらないのね?」

何故か悔しい・・・いや、虐められたら倍返しだけど!可愛くないのか・・・。

「・・・リリーは可愛いと思うが俺の可愛いと思う部類が違うな。たまに可愛く見えるモノを虐めたくなる。だからいつも可愛いリリーは対象外だ」

そ、そうなのね。いつも可愛い・・・ふふっ、ディアス様以外に言われるの新鮮ね。

「そんな直球発言されると恥ずかしいわね。・・・あまりルイスを虐めちゃ駄目よ?仕事に支障が出てしまうから」

「ああ、気をつける」

そのまま私に手を振りまだ話してるディアス様とルイスの元に仲裁に入った。

はぁ、ルイスも大変ね。捻くれた兄と手のかかる部下、腹黒のハリス・・・普通の人がいないわ・・・。

そろそろ私もディアス様の所に行きますか。
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