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61話

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私が訓練場に入ると訓練をしていた兵達が集まって来た。

「あっ、リリー様が来たぞ!皆、整列!!」

最近、特に指示も出していないのに最近は整列して待っている。今日は結構いるわね?大体百人くらいかしら?

「毎回、整列しなくても良いのに・・・私はただ訓練しに来ているだけよ?」

「しょうがないですよ。あの件以来、リリー様を尊敬しているんですから。あわよくば稽古をつけてもらいたい奴らばかりなんですよ」

ルイスが別の扉から現れ言った。稽古・・・この人数は面倒ね。

「ルイス、この人数を相手するの大変だと思うのだけれど、どうにかならないかしら?」

ルイスなら何とかしてくれそうな気がして聞いてみた。

「もう既に対策済みです。お前らっ!くじ番号一番から三十番まで残って残りは次回だ!解散!!」

「「「ハイッ!!」」」

ルイスが指示を出したらテキパキと行動し、私の前には三十人集まった。私、何も知らされてないわよ。

「・・・ルイス、説明して?」

「ヒッ?!」

ニッコリと冷ややかな目でルイスをみたら悲鳴をあげられた。まだ何もしてないのに失礼ね!

「あ、えっと・・・リリー様に稽古をつけて貰いたいって奴らが多過ぎて、その人数のまま行くとリリー様が逃げるだろうとハリスが言ったのでくじ引きをして順番を決めました。一組三十人が・・・二十組くらい?あるのでリリー様には一日一組相手して貰えると助かります」

・・・三十人か、面倒ね。二組一辺に相手した方が楽そうだわ。

「んー、もう一組追加!二組一辺に相手するわ。それで私対六十人でやるわよ」

私がそう言うと周りがざわついた。

「流石リリー様っ!」

「ヤバイ、男前過ぎて惚れるわ!」

「リリー様は我が国の秘密兵器だ!」

そうか、私は秘密兵器なのね・・・。それにしても約一名変なのが紛れてるわね!

「リリー様、大丈夫ですか?一応、俺の部下達は強いですよ」

「大丈夫よ、相棒もいるし。おいで、ワイト」

私が呼ぶと、クロムと一緒に来ていたワイトがピョンっと飛び跳ねてきた。

「キュッ!」

「噂の首狩りウサギですか。勢い余って首を刈らないで下さいね?」

ルイスが首の心配をしているけど問題無い。ウチの子は優秀だから首トンで気絶させられるようになっているのよ!

「大丈夫よ。ワイトは相手を気絶させられるようになったから怪我はしないわ」

「キュ?キュッ!」

ワイトも任せろと胸を張った。うん、可愛いわね!モフモフの胸毛にすりすりしたいわ!

「ルイス、あのウサギはただのウサギじゃ無い。脳筋ウサギだ!油断したら瞬殺で気絶させられるぞ」

横からクロムがルイスに言った。そうね、飼い主に似るってよく言うものね・・・。

「兄さん、あの可愛い見た目で脳筋ウサギって冗談でしょ?笑わせないでよ・・・グハッ!?」

ルイスがチラリと見て言った内容にワイトがキレて首トンした。

「ルイスッ!?大丈夫か?だから言ったのに・・・すぐに油断するのは悪い癖だ」

ルイスが倒れる寸前クロムが支え、苦言を言った。見た目に騙されて首トンされるなんてまだまだね。

「クロム、ルイスを頼むわ。直ぐに目を覚ますと思うけど壁際で介抱していて」

「ああ、分かった。リリーもやり過ぎるなよ?」

「それはどうかしら?・・・ふふ、冗談よ」

クロムが呆れて何か言いそうだったから冗談にしたけど、私の訓練が実戦になってしまったんですもの!そりゃ、暴れたくなるわよ!

よし、ルイスを肩に担ぎクロムが移動して行った。

「さぁ、始めるわよ!六十人纏めてかかって来なさい!!」

ヒュッ、スパンッ!

「キュッ!キュッ!」

私は鞭を鳴らし、ワイトはステップを踏み準備する。次の日にギリギリ響かない程度で叩きのめせば大丈夫よね?

そんな事を思いながら私達は兵士達に向かって攻撃を開始した。
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