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53話

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「暑い・・・、相変わらず蒸し暑いですわ」

薄暗く蒸し暑い森を警戒しながら進む。いつ、どこから敵が出てくるか分からない緊張の中かれこれ一時間くらい歩いているだろうか。

「山が近くなって来ましたわね。後、一時間ちょっとで山のふもとかしら?」

ガサガサッ!

モンスター!?茂みが揺れ私は鞭をかまえる。この辺りだと中型のモンスターだけど草木の揺れ方が違うわね・・・。

「キュッ、キュウ?」

「・・・ウサギ?」

茂みから現れたのは白いウサギだった。よくみると可愛い・・・けど、口周りが赤いわ。もしかして、あまり出会わないって聞く首狩りウサギ?

「キュ?」

首狩りウサギが首を傾げ鳴いた。

「クッ、可愛いっ!口周りが血で赤いけど小さいってだけでも可愛いわ!お持ち帰りしたいっ!!しても良いかしら!?」

一蹴りで首を刈るウサギだけどテイムして躾ければ大丈夫かしら?あ、でもディアス様に許可を貰わないと駄目?

とりあえず捕獲しよう。私はウサギと睨み合った。

「ギュッ!・・・キュウ!?」

一瞬の隙をついて私はウサギに突撃して捕まえた!

「やったー!首狩りウサギお持ち帰りですわ!!」

・・・あ、まだ帰らないのに捕まえてしまった!それに山頂に行くまでは帰らないって決めたんでしたわ!



そう、遡ること前日の昼。私がディアス様に相談をして実家に帰らせていただいたのです。正確にはキャンベル領のモンスターの領域にですけどね。

まだまだ人間の壁を越えられ無いと思った私はキャンベル領のモンスターの領域で能力向上をするために山頂を目指して今、歩いている。

出てくる時は大変でしたわ。実家に帰るって言ったら監禁されそうになって一悶着あったし・・・ディアス様が一応、森の入り口まで転移で送ってくれましたけど別れ際の顔が凄く悲しそうで捨て猫みたいでしたわ。

「ディアス様に妥協してもらい、三日だけ許可が降りましたわ。だから早く山頂に行かないと強敵と戦う時間が無くなってしまうわ!本当は五日くらいは欲しかったのにディアス様ったら五日も離れたら俺が死ぬって言うんですもの・・・はぁ、まだお昼にはなって無いからふもとまでは今日中に着いて拠点を作らないと!」

私は捕獲した首狩りウサギ、名前をワイトと名づけた。暴れるワイトを縛り上げ今日の拠点場所を作るために進み始めた。

「ギュッ、ギューッ!!」

「はいはい、煩いと食べちゃいますわよー?」

「キュッ!?・・・キュ、キュー」

ジタバタと暴れているから脅してみると大人しくなった。ちょっと苛めすぎたかしら?

「拠点を作ったら解いてあげるから大人しくしててね?」

「・・・キュ?」

「逃すとは言ってないわよ?」

「・・・キュー」

感情豊かなウサギさんね。それに私の言葉を理解しているし、躾けがいがあるわ!

「よし、この辺で良いかな。岩と木が良い具合に隠れ蓑になるし、拠点を作ろう」

私は近くの木の枝に紐で縛ったワイトを吊るし、拠点作りを始めた。

「ちょっと待っててねー。直ぐ終わらせるから」

「キュ、キュー・・・」

テントは要らないから枝を拾って火を起こして暖を取れるようにして、食べ物は・・・私はチラリとワイトを見た。

「ギュッ!?キュキュウ!!」

「あははっ、食べないから安心して?ちょっと見ただけよ」

食べられると思ったのかワイトが抗議してきた。小動物って可愛いわね、モンスターだけど。

さて、ふざけるのはこれくらいにして食べ物を拾いに行きますか!



だいぶ集まったかしら?木の実や食べられるモンスターが数匹獲れた。

拠点作りがひと段落したし、ワイトの紐を解いてあげよう。

「はい、解けた。あ、逃げないでね?」

「・・・キュ、キュウ?」

私はワイトに自分のテイムモンスターになって欲しいと話した。強制的にテイムも可能だけどやっぱりワイトから許可してもらった方が強い絆で結ばれる。

「キュ・・・キュウ!!」

「ありがとう!これからよろしくね、ワイト!!」

私はテイム魔法を使った。これでワイトが仲間になった!

「よーし、明日から山頂目指して頑張るわよ!オーッ!!」

「キューッ!!」
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