上 下
36 / 85

36話

しおりを挟む
「クロム、その髪の色・・・」

しゅるりと取った布から現れたのは月の光に照らされ綺麗に輝く白髪だった。

ルイスの髪は赤茶色をしていたけどクロムは白髪なのね。

「綺麗な白色ね?両親のどちらかが白髪だったの?」

私が聞くとクロムは目を丸くした。私、何かおかしな事を聞いたかしら?

「おまえ、この髪色のこと知らないのか?」

「え?何も知らないわよ。それに綺麗な白色じゃない!瞳も良く見たら紅くて綺麗だし、何が駄目なの?」

クロムは頭をガシガシと掻き溜息をついた。

「はぁー・・・そうかお前の国は俺たち龍人のことをよく知らないもんな。俺は、忌子なんだ」

「龍人族は双子を滅多に産まない、そして産まれたとしても俺みたいな白髪で瞳の紅い赤ん坊が産まれる。だから俺みたいな見た目の奴が気味が悪いって事で忌子になる」

クロムが苦々しい顔で言ったが私には理解出来なかった。双子で産まれただけなのに?見た目が違うから駄目なの?ただ見た目が違うだけで忌子にならなきゃいけないなんて・・・。

「そんなのおかしいわ!!双子で産まれただけなのに!ただ見た目が違うだけで忌子にするなんて間違ってるわ!?」

私は龍人について何も知らない。だけど誰かが悲しむしきたりなんか要らない!私はクロムの目を真っ直ぐみて言った。

「私が変える!そんなしきたり壊して悲しむ人を無くすわ!それにディアス様と一緒なら何でも出来る気がするの!」

私が言い切るとクロムが震えながら笑い出した。

「くっ、あははっ!・・・お前は面白いこと言うな。俺みたいな忌子を無くすのを楽しみに待ってるぜ?」

「お前?って、他に誰かが言ったの?」

「くくっ、ディアスが初めて俺と会った時に言ったんだ。忌子を無くして双子が産まれても悲しまない国にするってな・・・。だからお前が二人目だ。まさか同じような事を言う奴がいるなんてな?流石ディアスの番い様だぜ」

少し嬉しそうな感じでクロムが言った。そっか、ディアス様も同じ事言ったのね・・・。

私はふと、気になった事をクロムに聞いてみた。

「ねぇ、クロムは忌子ってバレないように髪を隠していたの?」

「ああ、そうだ。こんな見た目だし要らぬ噂を流されたら面倒だしな?それに諜報部隊だから顔を隠してる方がバレにくくて都合が良い」

「なるほどね。ねぇ、今度また私と話す時があったら顔を出して話さない?やっぱり隠したままだと話し辛いのよ、私が」

「次があったらな・・・」

なんだか素っ気なく言われてしまった。あと、さっきから私のことお前とかしか呼ばれて無い・・・。

「クロム、私の名前はリリーよ!お前じゃ無いわ!ちゃんと名前で呼んでよね?」

私が少し不貞腐れて言うとクロムがボソリと言った。

「・・・リリー。ほら、言ったぞ?これで良いだろ」

「・・・なんか投げやり感があるわよ?まぁ、ちゃんと呼んでくれたし良いか。ふふっ、こっちに来て私、知り合いがいないから話し相手が増えるのは嬉しいわね!」

「俺は諜報部隊だから滅多に会うことは無いと思うがな。ほら、もう寝ろ・・・ディアスも始末を終えて戻って来るだろう」

クロムが布を頭に巻きながら言った。いつか、髪を隠さないで済む世の中にしたいな。

「わかった。おやすみなさい、クロム」

私はクロムに挨拶をしてベッドへ戻った。

「良い子だ、おやすみリリー・・・」

クロムは言い終わるとサッと消えた。

去り際に見たクロムは、口が隠れていたが微笑んでいた気がした。

「・・・また会えると良いな。明日ルイスに聞いてみよっと!」



私は明日の予定を考えながら眠りについた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

×一夜の過ち→◎毎晩大正解!

名乃坂
恋愛
一夜の過ちを犯した相手が不幸にもたまたまヤンデレストーカー男だったヒロインのお話です。

【ヤンデレ鬼ごっこ実況中】

階段
恋愛
ヤンデレ彼氏の鬼ごっこしながら、 屋敷(監禁場所)から脱出しようとする話 _________________________________ 【登場人物】 ・アオイ 昨日初彼氏ができた。 初デートの後、そのまま監禁される。 面食い。 ・ヒナタ アオイの彼氏。 お金持ちでイケメン。 アオイを自身の屋敷に監禁する。 ・カイト 泥棒。 ヒナタの屋敷に盗みに入るが脱出できなくなる。 アオイに協力する。 _________________________________ 【あらすじ】 彼氏との初デートを楽しんだアオイ。 彼氏に家まで送ってもらっていると急に眠気に襲われる。 目覚めると知らないベッドに横たわっており、手足を縛られていた。 色々あってヒタナに監禁された事を知り、隙を見て拘束を解いて部屋の外へ出ることに成功する。 だがそこは人里離れた大きな屋敷の最上階だった。 ヒタナから逃げ切るためには、まずこの屋敷から脱出しなければならない。 果たしてアオイはヤンデレから逃げ切ることができるのか!? _________________________________ 7話くらいで終わらせます。 短いです。 途中でR15くらいになるかもしれませんがわからないです。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

【完結】帰れると聞いたのに……

ウミ
恋愛
 聖女の役割が終わり、いざ帰ろうとしていた主人公がまさかの聖獣にパクリと食べられて帰り損ねたお話し。 ※登場人物※ ・ゆかり:黒目黒髪の和風美人 ・ラグ:聖獣。ヒト化すると銀髪金眼の細マッチョ

私が美女??美醜逆転世界に転移した私

恋愛
私の名前は如月美夕。 27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。 私は都内で独り暮らし。 風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。 転移した世界は美醜逆転?? こんな地味な丸顔が絶世の美女。 私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。 このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。 ※ゆるゆるな設定です ※ご都合主義 ※感想欄はほとんど公開してます。

軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら

夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。  それは極度の面食いということ。  そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。 「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ! だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」  朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい? 「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」  あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?  それをわたしにつける??  じょ、冗談ですよね──!?!?

明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄
恋愛
 あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。  奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。  ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。  *BL描写あり  毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

処理中です...