古代臓器のジュブナイル

Column

文字の大きさ
上 下
1 / 2

1:魔術の学び舎

しおりを挟む
八つの大国で構成されたスレイン大陸が北北東、バスティア王国中央地、首都ヴィオラ。

年中、温暖な気候で乾いた春風が吹いている。

王国バスティア、その名を轟かせたのには国設立と共に並立された魔術学院の存在が主だろう。

レイクランドル魔術学院、大陸全土の旅人に目的を聞けば誰しもがその名を口にする。

ジャンルは魔導士育成から魔導書グリモワールの研究、調合薬ポーションの生成、錬金術まで幅広く扱っており、その高水準の教育環境から全大陸から魔術士が訪れる。

魔術士であるクロム・エルダインはそんな学院を訪れていた。

辛子色のトレンチコートを羽織り、丁寧に拵えられた牛革のトランクを手に持つ。やさぐれた顔立ちをし肌の白い男、クロムの容姿を言い表すならばそんな感じだろう。


「あぁあぁ~甘ったるいコーヒー共にクッキーが食べた~いなぁ」。

約二十時間のフライトによってコリに凝り固まった肩やら腰やらをバキバキと鳴らす。

クロムがだらしなく嘆きを挙げるのに呼応するかの様に念動話術レクトが繋がる。

「はぁい、こちらクロム・エルダイン、無事ヴィオラに到着しました、今からを回収しに行くよぉ、バレン君」。


「おい、回収任務と言えどたるみ過ぎだぞ、しゃきっとしろしゃきっと」。

「ほんとに人使い荒いよね上のご老輩方々は、いくら僕が? 優秀で? 完璧で? 天才だからって極小支部の僕等に任せるってのはね」。

「おい、口を閉じろクロム愚痴りたいなら後にしろ、てか、組織の番号コードで堂々と老輩の文句を言うな、俺が大目玉くらうんだぞ」。

「かったいなぁバレン君はそんな機械みたいな生き方して肩凝らない?」。


「貴様に生き方云々でとやかく言われたくないわ!! それよりとっとと学院へ向えお前と話してると埒が明かん」。


「はは……あぁそれならついたよ、レイクランドル魔術学院」。

レイクランドル魔術学院、大きな時計塔を主軸とし学科一つに対し一つ棟が与えられている。学科は幾百とある為そこは街の様に大きく広大である。

( はは…こりゃ正直骨が折れそうだ )

目的の人物は精霊古魔術の教授オーフェン・ノーランド、精霊学の第一人者である。

さてどうしたものか、ここまで広いと学科を探すだけでも一日は掛かる、館内マップは風景を、損ねるとか何とかで用意されてないと来た、敢えて人がいない時間を選んだ為人っ子一人見当たらない。全く困ったものだ。

途方に暮れながら渡り廊下を歩いている時だった。

「う、う、うわぁあぁぁ!!」。

廊下の突き当りの所、大量の荷物を抱えた少年とぶつかり……盛大にひっくり返した。

「失敬失敬、余所見していたよ大丈夫かい? 君」。微笑みながら手を差し伸べた。

「は、はい、こちらこそ前方不注意でした、まさかこんな時間に人がいるなんて。」

「このダンボールの中身はなんだい?」


「カエルの目玉と後はネズミの尻尾、後はマンドラコラの根に鷹の爪、そっちは試験管やら資料とかですかね。」

「うへぇそんなもの何に使うんだい? 」。


「さぁ僕も分からないです、何に使うんでしょうか」。と言ってクロムの腕を掴んだ。


クロムは倒れたダンボールを拾い上げた。

「半分持つよ、変わりと言っては何だがオーフェン教授の元まであんなしてくれないかな?」。

「あ、教授のお客さんだったんですね、失礼しました。分かりましたよろしくお願いします」。


「僕はクロム・エルダイン、君の名前は?」


― 日暮、日暮ひぐらし ナギサです。 ―


この出会いが後に大波乱を呼ぶ事をまだ僕達は知らない。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

魔法のせいだからって許せるわけがない

ユウユウ
ファンタジー
 私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。  すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

とある元令嬢の選択

こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。

処理中です...