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白星
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「セカイ、右斜め後ろ、北の方角、弓ゴブ一匹回避して!!」。
深い森、ジメジメとしていて滑りやすい。小さな丘を挟んで一匹の緑のゴブリンと対峙する。
セカイが振り向くとほぼ同時に放たれた緑ゴブリンの矢は風に煽られてすぐ横の足元にグサリと刺さる。
「あっぶね!!」
「やーい、へっへぇ!!外してやんの!!」。
凄い速度で展開される命のやり取り、死線の中おちゃらけているヨウタに腹を立てる。
「おい、ヨウタ!!無駄口叩いている暇があるなら攻撃するんだ、前衛職はこのパーティに君しかいないんだぞ!!」。
「かっかっすんなってマジメ君、この聖騎士ヨウタ様が醜い鬼を薙ぎ倒すッ!!」
「お前まで剣士だろ」。
「細ぇ事は気にしねぇのが俺のポリシーッだ──あれッ」。
滑りやすい石場に足をとられたヨウタの振り下ろした剣はゴブリンとは明後日の方向に通り過ぎる。
「GAAAARRRRRYY ‼」
キモチの悪い雄叫びを上げて、体制を崩したヨウタに向けてボロボロのナイフを振り下ろした。
「う、うわァァァァ!!」。
「───守城大壁!!」。
ボクトの大盾がゴブリンの刃から陽太を守る。
「は……はっはっは、中々やるじゃねぇかボクト」。
「ヨウタ、攻撃!!」。
「分かってんよォ!!」。
大きな盾に怯むゴブリンを拾った剣で盾の影から一直線に突き刺した。
藻掻き苦しむゴブリン。黒く淀んだ血液がドバドバと溢れ出し獣の様な断末魔を挙げる。
小心者のボクトは目を反らし強情なヨウタも流石に引いている。
バタリと動かなくなったゴブリン、森には気色の悪い声は無く風が木々を掠める音だけが聞こえた。
「いっよっしゃぁぁ俺の勝ちだ──」。
────ヨウタ危ない!!!」。
桐原レイトが叫ぶ。
後ろのゴブリンが残ったほんの少しの余力でヨウタに向けて弓を引いている。絶命したかと思われたゴブリンは生きていた、殺された人間達に一矢でも報いる為に。
「───ヨウタしゃがめ!!」。
次の瞬間、ゴブリンの矢とセイラの放った矢とがお互いを掠める。咄嗟の声にしゃがんだヨウタ、しゃがんだと言うよりはコケた。
ヨウタのすぐ頭上をセイラの放った矢が通過し、矢はゴブリンの頭を吸い込まれる様に射抜いた。
脳天を貫かれたゴブリンは脳漿と血液を勢い良く吹き出しながら絶命しその場に倒れる。
「はぁはぁはぁ………やっと当たった」。
こうして、俺達は探索者訓練施設を出ておよそ八日、初めての白星を上げた。
深い森、ジメジメとしていて滑りやすい。小さな丘を挟んで一匹の緑のゴブリンと対峙する。
セカイが振り向くとほぼ同時に放たれた緑ゴブリンの矢は風に煽られてすぐ横の足元にグサリと刺さる。
「あっぶね!!」
「やーい、へっへぇ!!外してやんの!!」。
凄い速度で展開される命のやり取り、死線の中おちゃらけているヨウタに腹を立てる。
「おい、ヨウタ!!無駄口叩いている暇があるなら攻撃するんだ、前衛職はこのパーティに君しかいないんだぞ!!」。
「かっかっすんなってマジメ君、この聖騎士ヨウタ様が醜い鬼を薙ぎ倒すッ!!」
「お前まで剣士だろ」。
「細ぇ事は気にしねぇのが俺のポリシーッだ──あれッ」。
滑りやすい石場に足をとられたヨウタの振り下ろした剣はゴブリンとは明後日の方向に通り過ぎる。
「GAAAARRRRRYY ‼」
キモチの悪い雄叫びを上げて、体制を崩したヨウタに向けてボロボロのナイフを振り下ろした。
「う、うわァァァァ!!」。
「───守城大壁!!」。
ボクトの大盾がゴブリンの刃から陽太を守る。
「は……はっはっは、中々やるじゃねぇかボクト」。
「ヨウタ、攻撃!!」。
「分かってんよォ!!」。
大きな盾に怯むゴブリンを拾った剣で盾の影から一直線に突き刺した。
藻掻き苦しむゴブリン。黒く淀んだ血液がドバドバと溢れ出し獣の様な断末魔を挙げる。
小心者のボクトは目を反らし強情なヨウタも流石に引いている。
バタリと動かなくなったゴブリン、森には気色の悪い声は無く風が木々を掠める音だけが聞こえた。
「いっよっしゃぁぁ俺の勝ちだ──」。
────ヨウタ危ない!!!」。
桐原レイトが叫ぶ。
後ろのゴブリンが残ったほんの少しの余力でヨウタに向けて弓を引いている。絶命したかと思われたゴブリンは生きていた、殺された人間達に一矢でも報いる為に。
「───ヨウタしゃがめ!!」。
次の瞬間、ゴブリンの矢とセイラの放った矢とがお互いを掠める。咄嗟の声にしゃがんだヨウタ、しゃがんだと言うよりはコケた。
ヨウタのすぐ頭上をセイラの放った矢が通過し、矢はゴブリンの頭を吸い込まれる様に射抜いた。
脳天を貫かれたゴブリンは脳漿と血液を勢い良く吹き出しながら絶命しその場に倒れる。
「はぁはぁはぁ………やっと当たった」。
こうして、俺達は探索者訓練施設を出ておよそ八日、初めての白星を上げた。
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