終わりの街の村人A

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1: 木漏れ日と男

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謎の光に包まれた僕等は不可思議な場所にいた。

真っ暗で壁を探すと人に当たる。

暗がりに慣れかろうじて見えたのは口で言い表せないくらいの大きな扉。

自分が何故ここに居るのかを考えれば考えるほど記憶という名の水は手からこぼれ落ちていく、まるで夢の様に。

この世界が現実で世界は幻だったのかも知れない。

誰かが言った「扉を開けるぞ」と…。

戸を押す、漏れ出す木漏れ日。日を閉ざすその大きな扉の向こうには美しき群青色の世界が広がっていた。


    ― 1 ―

「さて、皆入ってくれたかな」。

木造りでノスタルジックな雰囲気の店に集められる。皆が自身の置かれている状態に全くの理解がいかず呆然としている様な状況。

「どうなってるんだよ」メガネを付けた茶髪が話した。「ここは何処よ」。量産型ビッチは錯乱する。「誰か助けてくれぇ」。へなちょこイケメンは阿鼻叫喚した。それに呼応する様に騒ぎは広がり喚きが大きくなる。店内は異様な空気感を放っていた。

「僕の名前はキルカ、取り敢えず一つ君達に言いたい事がある。おつかれそしておめでとう」。

そこで皆を集めた大柄な男は不思議な物言いで話始めた。皆は男を見る。腰にナイフを付けているというのも理由に含まれるかもしれないがその男からは言葉では言い表せないものの皆を黙らせる程の謎の凄みがあった。

徐ろに手紙を取り出し「んーと……ようこそ子供達よ我がシトリアへ……だってさ、んー……まぁそゆこと」。と述べた。

さっきから言っている事がこれっぽっちも理解の範疇にない。

「ま、まさか…これが俗に言う…異世界転生と言う奴でゴザルか?」手を上げキモい系ヲタがキルカに質問をした。

「異世界…転生……あぁ!!それそれ、それだよ」。

キルカは取ってつけたように言った。これ以上話をしたくなさそうな気怠さが見てとれる。

そんな事には見向きもせずキモい系ヲタはガッツポーズをとる。周囲の刺さる様な視線に自分まで恥ずかしさを覚えた。

「ここは君達がいた世界とは異なる世界、そう、異世界さ」。

異世界転生、創作物(主にラノベ)でよく使われる造語。
現実と幻想が混濁した様な風景、建物、どうやら唯の拉致監禁では無いようだ。

ヒロはツバを飲み込んだ。

「なぁ、一つ質問良いか?俺達はここで何をすれば良い、なぜ呼ばれた」。

アレンが話す。普段は無口なイメージだがこの時のアレンは、あのキルカとかいう男と同種の威厳を感じた。

「獣を狩れ、僕が言えるのはそれだけだ、この世界には幾千と君達と同じ境遇の奴がいる」。

「獣?」

「あぁ獣さ、まぁ君等の世界で言ったらモンスターに近いだろうね、醜鬼から牛首、竜までいる」。

「ちょ、ちょっと待ってくれ、そんな奴等と何も持たない俺達がどう戦えばいいんだ?」。

レイトが口を挟む。


「君達がここを出るに際して渡される物がある。生きていく為の少量の金、そして銅製の剣、ロングソード1本か短剣二本かはこ自由に、そして最後、君達の身体の中に〈幻想の才能イマジナリースキル〉が宿る」。


「特典キター」

うるさいな、いや、もうホントに

鼻息を荒げるキモい系ヲタをキルカは腹を抱えて笑った。

「あはははは、君面白いね、でもこれには当たり外れあるからさ、そう喜んでも居られないかもよ。僕は『火を出す』って単純な能力だったよ。」

そう言いながら指をパチンッと鳴らすと右手から激しく燃焼する炎が生み出た。

一同が騒然とし唖然とした。空いた口が塞がらない、これが今の状況を言い表す言葉に最も適しているだろう。

「君等がどんな能力を秘めているかは僕にも分からない、もしかしたら『未来の大英雄』なんてことになるかも知れない。君達を呼んだのは僕じゃない世界の思し召し、つまり上の奴等だ、まぁ生きたければ上手くやってくれ、以上。」

キルカは蝋燭の炎が消える様にその姿を消した。

残された者達が混乱の渦に巻き込まれる中、初めて動きを見せたのはアレンだった、少数人を連れて店の外へ向かう。

「レイト、俺は一足先にここを出る、こいつ等の事はお前に任せた」。

「………あぁ、分かった、死ぬなよ、アレン」。

ロングソードと小袋をポケットに入れた。配給用のボロボロなマントを羽織り街に消えた。





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