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34〈欲する〉
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先輩の顔は見えているようで、もう見えていなかった。ただ今をどうにかしなくちゃいけないと必死で、しがみついてまた口をつけるのを再開させた。
ネクタイを解いて現れた皮膚にキスマークをつける。もっともっと……触れたい、染めたい。
「んっ、はぁ……っ、先輩……はぁ」
初めは少し強めに頭を押さえつけられていたけど、いつの間にか外れていた。シャツが全て開いて諦めたのかもしれない。それに甘えてお腹の方までキスを落とす。僕はこんな風にもなれるんだ。獣みたいに何も考えず、こんなに……必死に。
「……ふふ、好き……っはぁ」
ズボンの上から摩って顔を近づける。荒い息には感動と興奮が混じっていた。早く見たい。
今の自分は、端からは見るに堪えない状態になっているのかもしれない。でもそんなことはどうでもよかった。布一枚隔てたその先にあるのだと思うと、今まで以上に下半身が張り詰める。
下着をずらして現れたものにそっと指先をつける。軽く全体に触れてから、舌をつけた。
先程よりも大きな音が鳴っている。ぴちゃぴちゃと動かしていくと、硬さが増してきた。
とにかく夢中で舐めて、吸って……少し意識すると先輩の声が聞こえてきた。出さないように堪えてるのか、その間から吐き出される息が愛おしくて、触れたくなった。
そっと指先で唇に触れる。腕で隠している顔が少し現れた。
「……っ」
今していることも忘れて、優しく慎重に口付ける。止めたのか息は感じられなかったけど、離したら少し苦しそうに一度吐き出した。
熱くなっているけど、どこかで冷静になっていた。こんな襲うような真似じゃなくて、もっとちゃんと愛したかったのに。なんとなく悲しくなった中で下を見ると、その部分はまだ反応している。顔を背けて、再びそこに好きを伝えた。
先輩のものを受けた手をじっと見つめていると、わずかに上体を起こした。終わる……そう思ったら堪らなくなって、また抱きついた。
「……先輩っ」
そうだと気がついて左手はまだ背中に回しながら、右手で自分のチャックを下ろした。その中は濡れている。後ろに指を突っ込んだ。
「……っぐ、う……」
それに気がついた先輩が、驚いた目で肩を掴む。
「お、前……っ」
「待って……まだ、できるから……っ」
何を喋っているのか上手く変換できなくて、自分じゃない声で色々言っていた気がする。
何度か練習した場所を広げて、前にあった先輩のものを握った。自分のとくっつけたり、間に挟んだりして、再び起こそうと必死になる。
ぐちゅぐちゅと二人の間から零れてきて、その光景に恍惚とした。フェードアウトしていく日常に頭が白くなり始めて、目の前にあった唇を激しく求める。
そういえばいつの間に眼鏡を取っていたんだろう。そのまままた寝転んで、自分はお腹の辺りに跨った。
当てがってゆっくりと腰を下ろし……それは上手く入らなかった。自分の指を濡らしてみたけど、先輩のものが予想より大きかったのもあって、入りそうにはなかった。
半泣きで萎えないように擦りながら、どうにか動かしている間に、いつの間にか起きていた先輩の手が腕を掴んだ。
「まだ……できっ……!」
「もう、いいから……っ」
「嫌、です……気持ち良く、できるんです……女の子、より……っも」
ぐちゃぐちゃに泣いていたから、相手がどうなっているか分からなかった。でもここで終わったら一生の終わりな気がして、恐ろしくて、まだできると訴えていた。
「待って……まだ……嫌っ」
体が包まれていた。それが暖かかった。知らない程に暖かくて、戸惑いながらも安心が溶け込んできた。
ああ、そっか……これが先輩なのか、貴方は本当に良い人で……ズルい。
「……もう分かったから、な」
顔を拭いて霞む目で前を見た。白い肩、セットしていない少し長くなった髪、そんな先輩の……大好きな手が自分に触れている。夢じゃない。
寂しさや数日のドロドロが流れていった。
「……あの人は、彼女ですか?」
胸元に手を置いて呟く。横になってぴったりと半身をくっつけていた。数秒後に息を飲んだ音がして見上げる。
「ああ……本当に三日前とかなんだけど。友達からでいいからみたいなこと言われて、まぁあっちもアニメとか好きだとか言うし……。あーそういえばこれ……」
先輩は思わず零れたように笑っていた。
「ごめんな、今ならお前の気持ちが分かるわ。何か話してても上の空だし、お前もいちいちこっちの階まで来るもんだから……彼女とか、そういうの考えられなかった」
「……っ、知ってたんですか」
「当たり前だろ……お前は、ちょっとは人からどう見られてるか気にしろ」
「……今それ、見えてるんですか?」
「このぐらいの距離なら、さすがに見えるっつーの」
メガネが無い姿は新鮮だけど、それでも先輩の好きな表情は変わっていない。嬉しくてまたドキドキが体中に巡り始めた。
「お前もうどこの学年でも変人扱いされてるぞ。まぁ今となっちゃそれも都合良いか」
「えっ……?」
こちらを向いた目と合った。頬の上に少し触れてから、指を離す。
「そういえば先輩、なんで図書委員……」
「あ、あれはごめんな。伝えるの忘れてたけど、もう三年は終わりらしい。引き継ぎなんだってさ」
「……寂しかった、ですよ」
「……っ、そうか」
「ふふ、今ちょっと照れました?」
照れてないと頭を掻いて赤くなる姿を眺めてから、さっきよりもくっついた。
「……で、あいつのことはどうすんだ」
「正人ですか? ……正人は、良い子です。最初はちょっと拗らせてたみたいですけど。今は……僕が先輩にしている態度と同じぐらい、僕を好きになってくれている……でもここで僕が先輩に認めてほしいなんて言ったら、そんなの……」
「確かにそっちももう、お前じゃなきゃダメなんだろうな。あーあ、惚れた弱みって奴かー」
「えっ」
「やっぱお前不意打ちに弱いな」
「な、なんですかそれ……」
「はは、弱点発見した。で、少年のことだけど、一回会ってみるか。なんとかなるかもしれないし。だから考えすぎるなよ。またお前が急に襲いに来ないようにしてやるから」
「……っそれは、すいません」
「まーこれも展開的には美味しいんだろうけど、さすがに二回続けてっていうのもな……。学園モノ好きとしては、普通に屋上に行く辺りからフラグ建設始めたかったわ」
「先輩、今日はよく喋りますね」
そう言ったら、あのなぁと頭を押さえてしまった。
「訳分かんなすぎて逆に落ち着いてきてるっつーの。いや落ち着けてねーか……割と必死に隠してんだよ」
「先輩は本当にズルいですね。先輩こそヒロインみたいですよ」
「はぁ?」
「あははっ……じゃあ明日は、屋上行ってくれますか?」
「明日は休みだ。しかもうちの屋上は入れない」
「……知ってますよ」
「嘘つけ。今気づいたって顔だ」
「……そんなこと、ないです」
笑っていた。図書室じゃなくても先輩とこうしていられる場所があるというのが、嬉しかった。
ネクタイを解いて現れた皮膚にキスマークをつける。もっともっと……触れたい、染めたい。
「んっ、はぁ……っ、先輩……はぁ」
初めは少し強めに頭を押さえつけられていたけど、いつの間にか外れていた。シャツが全て開いて諦めたのかもしれない。それに甘えてお腹の方までキスを落とす。僕はこんな風にもなれるんだ。獣みたいに何も考えず、こんなに……必死に。
「……ふふ、好き……っはぁ」
ズボンの上から摩って顔を近づける。荒い息には感動と興奮が混じっていた。早く見たい。
今の自分は、端からは見るに堪えない状態になっているのかもしれない。でもそんなことはどうでもよかった。布一枚隔てたその先にあるのだと思うと、今まで以上に下半身が張り詰める。
下着をずらして現れたものにそっと指先をつける。軽く全体に触れてから、舌をつけた。
先程よりも大きな音が鳴っている。ぴちゃぴちゃと動かしていくと、硬さが増してきた。
とにかく夢中で舐めて、吸って……少し意識すると先輩の声が聞こえてきた。出さないように堪えてるのか、その間から吐き出される息が愛おしくて、触れたくなった。
そっと指先で唇に触れる。腕で隠している顔が少し現れた。
「……っ」
今していることも忘れて、優しく慎重に口付ける。止めたのか息は感じられなかったけど、離したら少し苦しそうに一度吐き出した。
熱くなっているけど、どこかで冷静になっていた。こんな襲うような真似じゃなくて、もっとちゃんと愛したかったのに。なんとなく悲しくなった中で下を見ると、その部分はまだ反応している。顔を背けて、再びそこに好きを伝えた。
先輩のものを受けた手をじっと見つめていると、わずかに上体を起こした。終わる……そう思ったら堪らなくなって、また抱きついた。
「……先輩っ」
そうだと気がついて左手はまだ背中に回しながら、右手で自分のチャックを下ろした。その中は濡れている。後ろに指を突っ込んだ。
「……っぐ、う……」
それに気がついた先輩が、驚いた目で肩を掴む。
「お、前……っ」
「待って……まだ、できるから……っ」
何を喋っているのか上手く変換できなくて、自分じゃない声で色々言っていた気がする。
何度か練習した場所を広げて、前にあった先輩のものを握った。自分のとくっつけたり、間に挟んだりして、再び起こそうと必死になる。
ぐちゅぐちゅと二人の間から零れてきて、その光景に恍惚とした。フェードアウトしていく日常に頭が白くなり始めて、目の前にあった唇を激しく求める。
そういえばいつの間に眼鏡を取っていたんだろう。そのまままた寝転んで、自分はお腹の辺りに跨った。
当てがってゆっくりと腰を下ろし……それは上手く入らなかった。自分の指を濡らしてみたけど、先輩のものが予想より大きかったのもあって、入りそうにはなかった。
半泣きで萎えないように擦りながら、どうにか動かしている間に、いつの間にか起きていた先輩の手が腕を掴んだ。
「まだ……できっ……!」
「もう、いいから……っ」
「嫌、です……気持ち良く、できるんです……女の子、より……っも」
ぐちゃぐちゃに泣いていたから、相手がどうなっているか分からなかった。でもここで終わったら一生の終わりな気がして、恐ろしくて、まだできると訴えていた。
「待って……まだ……嫌っ」
体が包まれていた。それが暖かかった。知らない程に暖かくて、戸惑いながらも安心が溶け込んできた。
ああ、そっか……これが先輩なのか、貴方は本当に良い人で……ズルい。
「……もう分かったから、な」
顔を拭いて霞む目で前を見た。白い肩、セットしていない少し長くなった髪、そんな先輩の……大好きな手が自分に触れている。夢じゃない。
寂しさや数日のドロドロが流れていった。
「……あの人は、彼女ですか?」
胸元に手を置いて呟く。横になってぴったりと半身をくっつけていた。数秒後に息を飲んだ音がして見上げる。
「ああ……本当に三日前とかなんだけど。友達からでいいからみたいなこと言われて、まぁあっちもアニメとか好きだとか言うし……。あーそういえばこれ……」
先輩は思わず零れたように笑っていた。
「ごめんな、今ならお前の気持ちが分かるわ。何か話してても上の空だし、お前もいちいちこっちの階まで来るもんだから……彼女とか、そういうの考えられなかった」
「……っ、知ってたんですか」
「当たり前だろ……お前は、ちょっとは人からどう見られてるか気にしろ」
「……今それ、見えてるんですか?」
「このぐらいの距離なら、さすがに見えるっつーの」
メガネが無い姿は新鮮だけど、それでも先輩の好きな表情は変わっていない。嬉しくてまたドキドキが体中に巡り始めた。
「お前もうどこの学年でも変人扱いされてるぞ。まぁ今となっちゃそれも都合良いか」
「えっ……?」
こちらを向いた目と合った。頬の上に少し触れてから、指を離す。
「そういえば先輩、なんで図書委員……」
「あ、あれはごめんな。伝えるの忘れてたけど、もう三年は終わりらしい。引き継ぎなんだってさ」
「……寂しかった、ですよ」
「……っ、そうか」
「ふふ、今ちょっと照れました?」
照れてないと頭を掻いて赤くなる姿を眺めてから、さっきよりもくっついた。
「……で、あいつのことはどうすんだ」
「正人ですか? ……正人は、良い子です。最初はちょっと拗らせてたみたいですけど。今は……僕が先輩にしている態度と同じぐらい、僕を好きになってくれている……でもここで僕が先輩に認めてほしいなんて言ったら、そんなの……」
「確かにそっちももう、お前じゃなきゃダメなんだろうな。あーあ、惚れた弱みって奴かー」
「えっ」
「やっぱお前不意打ちに弱いな」
「な、なんですかそれ……」
「はは、弱点発見した。で、少年のことだけど、一回会ってみるか。なんとかなるかもしれないし。だから考えすぎるなよ。またお前が急に襲いに来ないようにしてやるから」
「……っそれは、すいません」
「まーこれも展開的には美味しいんだろうけど、さすがに二回続けてっていうのもな……。学園モノ好きとしては、普通に屋上に行く辺りからフラグ建設始めたかったわ」
「先輩、今日はよく喋りますね」
そう言ったら、あのなぁと頭を押さえてしまった。
「訳分かんなすぎて逆に落ち着いてきてるっつーの。いや落ち着けてねーか……割と必死に隠してんだよ」
「先輩は本当にズルいですね。先輩こそヒロインみたいですよ」
「はぁ?」
「あははっ……じゃあ明日は、屋上行ってくれますか?」
「明日は休みだ。しかもうちの屋上は入れない」
「……知ってますよ」
「嘘つけ。今気づいたって顔だ」
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