6 / 68
05.可愛い子ちゃんがやってきた(竜帝陛下視点)
しおりを挟む
余はこの世界の帝であり、そして神に等しい存在でもある。
竜神の創造したこの世界にはその血を引く竜人とその他獣人や精霊が暮らしている。竜人は神の血を半分引くため、この国では王侯貴族はみな竜人だ。
その中で、たまに生まれてくる存在が神還りと呼ばれる余のような角を持つ者であり、そのものは神と同等の力を持つとされているため、畏怖されている。
そのせいもあり、余には、民の気持ちがあまりよく分からなかった。ただ、何が国にとって最良かは手に取るようにわかる。
余が心を理解できないせいか番いを認識することも、通常の竜人より遅れてしまい、永遠に失う羽目になってしまったのだろう。もし番いが存在すればもう少し余も他の者の気持ちを理解できたかもしれない。
竜人は番い以外とは子を作ることは出来ない。さらに運が悪いことに神還りは番いとの子が居なければ永遠に死を失う。結果、余はこの国を永久に統べる帝となってしまった。
幾千年が過ぎた段階で感情は完全に消え失せただ、最善だけを国のために尽くすことだけが義務だった。このまま、永遠に感情を無くしたまま伽藍の洞のように生きるはずだった。
『助けてくれ!!誰か!!』
そう救いを求める可愛い子ちゃんの声を聞くまでは……。
まるで運命のように声に導かれた先ではじめて、シヅルと目があった瞬間に胸の奥に湧き立ったソレはいままで感じたことのない感情だった。
(この存在だけは、誰より何より大切にしたい……)
すべてを犠牲にしてもこの子だけは、この可愛い子ちゃんは守らねばと思うような強烈な感覚だった。
それと同時にその可愛い子ちゃんが、暴力を振るわれてあざと傷を負って死にそうになっている事実に失われたはずの怒りが湧き上がった。
感情のままに周りが萎縮することも気にせずに覇気を放ち首謀者のリュカを含めて全員を地下牢に閉じ込めた。
本来、竜人は貴重な存在のため重罪を犯しても貴族牢行きだが、可愛い子ちゃんを傷つけたのだそんな生ぬるい罪で許す気はない。
全員を血祭りにあげたいとすら一瞬思ったが一度理性で押さえた。後ほど、しっかりと余の法に照らし合わせて罪を償わせることにしよう。
しかし、その夜、王妃が余のもとへ息を切らせてやってきた。
プラチナブロンドのサラサラの髪は綺麗に切りそろえられていて肩にかかる程度の長さで揺れている。竜神の証である金色の瞳を儚げなに揺らした美青年である王妃は頬を紅色に染めながら訴えた。
「陛下、流石にやりすぎではありませんか」
普通なら美しいと感じるその姿を見ても余の中では可愛い子ちゃんに抱くような感情はやはり湧かなかった。
王妃は余の番いが事故により失われた件にリュカとふたりで関与している。
その罪滅ぼしとして形式上娶ることになった番いの身内であるが、姿絵で見た本当の番いであったルゼルとは似ても似つかない。
しかし、あくまで契約結婚のため王妃の番いが現れたなら解放するつもりでいる。
「どうかリュカを許して頂けませんか??異世界人を呼び出したのは私の提案によるもの、罪は私にもあるのです」
王妃は、涙を浮かべながらリュカを許してほしいと懇願した。自分より弱いものをいたぶる趣味がないので今まではその願いを叶えていた。
しかし、出会った瞬間から誰よりも大切な存在になった可愛い子ちゃんへの行いを見過ごすつもりは甥っ子に対しても毛頭ない。
『この世界に来ることを望んだ者』以外を無理矢理召喚する』こと自体が大罪だ。
なんせ召喚されたら永遠に帰れないのだから。だから事前に相手に許可をもらい契約をしなければいけない。王妃は『無断召喚』は望んでいなかっただろうが短絡的なリュカはそれを実行してしまったのだろう。
それについては、可愛い子ちゃんの体の傷を丁寧にくまなく完璧に治した際に丹念に確認して『契約印』がないことを確認したので間違いない。『契約印』がないということは無理矢理連れ去られたことが明確だった。
「リュカは無断で相手の同意なしに異世界人を呼び出したのだ。軽い罪ではすますことはない」
明確な意思を伝えると、何かを小さくつぶやいてから、
「なら、せめてリュカと少し話をさせて頂けませんか??」
「わかった。ただし、監視はつける。
内心ですぐにでも可愛い子ちゃんを吸いたい欲求にかられていたのでそう許可を出した。
「ありがとうございます、感謝いたします」
王妃はそう礼だけ言うと立ち去った。
(早く、可愛い子ちゃんに会いたい……)
その会話が終わるなり早足で可愛い子ちゃんの元を訪れるとまだ可愛い子ちゃんは夢の中にいた。
閉じた瞳を覆う長いまつ毛がわずかに震えている。体は華奢で強く抱きしめたら壊してしまいそうなので注意しないといけないなど考えていると可愛い子ちゃんの唇から苦し気な寝言が漏れた。
「ちがう、ちがうやってない、やってない!!」
魘されながら可愛い子ちゃんが、叫んだその言葉に余の中で、見たことのない風景が浮かぶ。それは地下牢に繋がれた誰かの視点で必死に無実を訴えている場面だった。
「これは、一体……」
何かを思い出そうとしたがまだ何かが足りず思い出すことは出来なかった。
竜神の創造したこの世界にはその血を引く竜人とその他獣人や精霊が暮らしている。竜人は神の血を半分引くため、この国では王侯貴族はみな竜人だ。
その中で、たまに生まれてくる存在が神還りと呼ばれる余のような角を持つ者であり、そのものは神と同等の力を持つとされているため、畏怖されている。
そのせいもあり、余には、民の気持ちがあまりよく分からなかった。ただ、何が国にとって最良かは手に取るようにわかる。
余が心を理解できないせいか番いを認識することも、通常の竜人より遅れてしまい、永遠に失う羽目になってしまったのだろう。もし番いが存在すればもう少し余も他の者の気持ちを理解できたかもしれない。
竜人は番い以外とは子を作ることは出来ない。さらに運が悪いことに神還りは番いとの子が居なければ永遠に死を失う。結果、余はこの国を永久に統べる帝となってしまった。
幾千年が過ぎた段階で感情は完全に消え失せただ、最善だけを国のために尽くすことだけが義務だった。このまま、永遠に感情を無くしたまま伽藍の洞のように生きるはずだった。
『助けてくれ!!誰か!!』
そう救いを求める可愛い子ちゃんの声を聞くまでは……。
まるで運命のように声に導かれた先ではじめて、シヅルと目があった瞬間に胸の奥に湧き立ったソレはいままで感じたことのない感情だった。
(この存在だけは、誰より何より大切にしたい……)
すべてを犠牲にしてもこの子だけは、この可愛い子ちゃんは守らねばと思うような強烈な感覚だった。
それと同時にその可愛い子ちゃんが、暴力を振るわれてあざと傷を負って死にそうになっている事実に失われたはずの怒りが湧き上がった。
感情のままに周りが萎縮することも気にせずに覇気を放ち首謀者のリュカを含めて全員を地下牢に閉じ込めた。
本来、竜人は貴重な存在のため重罪を犯しても貴族牢行きだが、可愛い子ちゃんを傷つけたのだそんな生ぬるい罪で許す気はない。
全員を血祭りにあげたいとすら一瞬思ったが一度理性で押さえた。後ほど、しっかりと余の法に照らし合わせて罪を償わせることにしよう。
しかし、その夜、王妃が余のもとへ息を切らせてやってきた。
プラチナブロンドのサラサラの髪は綺麗に切りそろえられていて肩にかかる程度の長さで揺れている。竜神の証である金色の瞳を儚げなに揺らした美青年である王妃は頬を紅色に染めながら訴えた。
「陛下、流石にやりすぎではありませんか」
普通なら美しいと感じるその姿を見ても余の中では可愛い子ちゃんに抱くような感情はやはり湧かなかった。
王妃は余の番いが事故により失われた件にリュカとふたりで関与している。
その罪滅ぼしとして形式上娶ることになった番いの身内であるが、姿絵で見た本当の番いであったルゼルとは似ても似つかない。
しかし、あくまで契約結婚のため王妃の番いが現れたなら解放するつもりでいる。
「どうかリュカを許して頂けませんか??異世界人を呼び出したのは私の提案によるもの、罪は私にもあるのです」
王妃は、涙を浮かべながらリュカを許してほしいと懇願した。自分より弱いものをいたぶる趣味がないので今まではその願いを叶えていた。
しかし、出会った瞬間から誰よりも大切な存在になった可愛い子ちゃんへの行いを見過ごすつもりは甥っ子に対しても毛頭ない。
『この世界に来ることを望んだ者』以外を無理矢理召喚する』こと自体が大罪だ。
なんせ召喚されたら永遠に帰れないのだから。だから事前に相手に許可をもらい契約をしなければいけない。王妃は『無断召喚』は望んでいなかっただろうが短絡的なリュカはそれを実行してしまったのだろう。
それについては、可愛い子ちゃんの体の傷を丁寧にくまなく完璧に治した際に丹念に確認して『契約印』がないことを確認したので間違いない。『契約印』がないということは無理矢理連れ去られたことが明確だった。
「リュカは無断で相手の同意なしに異世界人を呼び出したのだ。軽い罪ではすますことはない」
明確な意思を伝えると、何かを小さくつぶやいてから、
「なら、せめてリュカと少し話をさせて頂けませんか??」
「わかった。ただし、監視はつける。
内心ですぐにでも可愛い子ちゃんを吸いたい欲求にかられていたのでそう許可を出した。
「ありがとうございます、感謝いたします」
王妃はそう礼だけ言うと立ち去った。
(早く、可愛い子ちゃんに会いたい……)
その会話が終わるなり早足で可愛い子ちゃんの元を訪れるとまだ可愛い子ちゃんは夢の中にいた。
閉じた瞳を覆う長いまつ毛がわずかに震えている。体は華奢で強く抱きしめたら壊してしまいそうなので注意しないといけないなど考えていると可愛い子ちゃんの唇から苦し気な寝言が漏れた。
「ちがう、ちがうやってない、やってない!!」
魘されながら可愛い子ちゃんが、叫んだその言葉に余の中で、見たことのない風景が浮かぶ。それは地下牢に繋がれた誰かの視点で必死に無実を訴えている場面だった。
「これは、一体……」
何かを思い出そうとしたがまだ何かが足りず思い出すことは出来なかった。
85
お気に入りに追加
583
あなたにおすすめの小説
童貞処女が闇オークションで公開絶頂したあと石油王に買われて初ハメ☆
はに丸
BL
闇の人身売買オークションで、ノゾムくんは競りにかけられることになった。
ノゾムくん18才は家族と海外旅行中にテロにあい、そのまま誘拐されて離れ離れ。転売の末子供を性商品として売る奴隷商人に買われ、あげくにオークション出品される。
そんなノゾムくんを買ったのは、イケメン石油王だった。
エネマグラ+尿道プラグの強制絶頂
ところてん
挿入中出し
ていどです。
闇BL企画さん参加作品。私の闇は、ぬるい。オークションと石油王、初めて書きました。
ケツで抱くタイプのバブみのある騎士団長様がなぜか僕だけ犯そうとします
ひよこ麺
BL
女性の数が極端に少ない異世界でモテるのをいいことに女性に手を出しまくり、結果、男しかいない辺境地の騎士団に飛ばされた侯爵家の次男ルベルス・フィッセルには物凄く不安なことがあった。
その辺境の騎士団長でムキムキ寡黙な辺境伯子息であるギーレン・ファンデンベルクには有名な裏のふたつ名があった。
『慈しみのケツを持つ魔性の男』
なんでも、かの団長は騎士団員全員をケツで抱いているらしく、さらにその全員を虜にしているらしい。
実際、辺境騎士団は団ケツもとい団結が強く、過去幾度となく国を防衛している。
生粋の女好きで、その容姿と家柄から希少な女性との関係も不自由したことがないルベルスからしたらそんなに恐ろしい世界はない。
「男といちゃつくなんて、ましてやどう見ても筋肉ムキムキで色々デカくてかたそうな団長が姫扱いされているようなヤバイ場所で生きていける訳がない!!」
そう思って初日から逃げ出そうとしたが、さっそく捕まり団長との二者面談という名のふたりきりハッテンタイムになってしまったルベルス。
ベッドにおしおきで押し倒された時、思わず叫んでしまった。
「団長を抱くなんて絶対にいやだ!!」
と……。その言葉にショックを受けるかとおもったが何故か微笑む団長、そして……。
「そうか、つまりお前は俺に抱いてほしいんだな」
あまりの言葉に理解できないルベルス。そこで今まで抱かれる側に回っていた魔性のケツを持つ団長の意外な真実が明らかになって……。
※ショートショート⇒短編へ変更いたしました。
皇帝陛下の精子検査
雲丹はち
BL
弱冠25歳にして帝国全土の統一を果たした若き皇帝マクシミリアン。
しかし彼は政務に追われ、いまだ妃すら迎えられていなかった。
このままでは世継ぎが産まれるかどうかも分からない。
焦れた官僚たちに迫られ、マクシミリアンは世にも屈辱的な『検査』を受けさせられることに――!?
潜入捜査でマフィアのドンの愛人になったのに、正体バレて溺愛監禁された話
あかさたな!
BL
潜入捜査官のユウジは
マフィアのボスの愛人まで潜入していた。
だがある日、それがボスにバレて、
執着監禁されちゃって、
幸せになっちゃう話
少し歪んだ愛だが、ルカという歳下に
メロメロに溺愛されちゃう。
そんなハッピー寄りなティーストです!
▶︎潜入捜査とかスパイとか設定がかなりゆるふわですが、
雰囲気だけ楽しんでいただけると幸いです!
_____
▶︎タイトルそのうち変えます
2022/05/16変更!
拘束(仮題名)→ 潜入捜査でマフィアのドンの愛人になったのに、正体バレて溺愛監禁された話
▶︎毎日18時更新頑張ります!一万字前後のお話に収める予定です
2022/05/24の更新は1日お休みします。すみません。
▶︎▶︎r18表現が含まれます※ ◀︎◀︎
_____
凶悪犯がお気に入り刑事を逆に捕まえて、ふわとろま●こになるまで調教する話
ハヤイもち
BL
連続殺人鬼「赤い道化師」が自分の事件を担当する刑事「桐井」に一目惚れして、
監禁して調教していく話になります。
攻め:赤い道化師(連続殺人鬼)19歳。180センチくらい。美形。プライドが高い。サイコパス。
人を楽しませるのが好き。
受け:刑事:名前 桐井 30過ぎから半ば。170ちょいくらい。仕事一筋で妻に逃げられ、酒におぼれている。顔は普通。目つきは鋭い。
※●人描写ありますので、苦手な方は閲覧注意になります。
タイトルで嫌な予感した方はブラウザバック。
※無理やり描写あります。
※読了後の苦情などは一切受け付けません。ご自衛ください。
新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~
焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。
美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。
スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。
これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語…
※DLsite様でCG集販売の予定あり
兄上の五番目の花嫁に選ばれたので尻を差し出します
月歌(ツキウタ)
BL
今日は魔王である兄上が、花嫁たちを選ぶ日。魔樹の華鏡に次々と美しい女性が映し出される。選ばれたのは五人。だけど、そのなかに僕の姿があるのだけれど・・何事?
☆表紙絵
AIピカソとAIイラストメーカーで作成しました。
マッサージはお好きですか?
浅上秀
BL
マッサージ師×サラリーマン ※R18
仕事に疲れたサラリーマンの佐藤が同僚の女性社員におすすめされ癒しを求めて訪れたマッサージ店。
そこでマッサージ師の渡辺に出会い、気持ちよくさせられてしまうお話。
本編 四話
番外編 更新中
完結済み
…
短編 BL
なお作者には専門知識等はございません。全てフィクションです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる